高速MRP計算でSCM改革を支援するSCPLAN
製品ライフサイクルの短縮化や多品種小ロット化が進行する製造業の現場では、収益力と顧客サービスのさらなる向上をめざすため、よりスピーディで柔軟な生産計画の立案が求められています。そこで、ホッチキスや釘打機などで国内シェアNO.1*を誇るマックス株式会社では、日立の製造業向けサプライ・チェーン・プランニングパッケージSCPLANを導入。MRP計算の高速化により、生産計画に基づいた部品調達計画を週次から日次へと迅速化し、SCM業務改革と連動した製造リードタイムの大幅な短縮を実現しました。
システム統括部長
樋口浩一氏
オフィスワークに欠かせないアイテムとして、日々多くの人々に愛用されているホッチキス。1952年に国産第1号の10号タイプホッチキスを発売して以来、マックス株式会社(以下、マックス)は3億台を超えるホッチキスを世に送り出し、緑の小箱・マックス針とともに、そのシェアは国内No.1を維持し続けています。
また、建設現場で使われるネイラ(釘打機)でも国内シェアNo.1、複写機内蔵用オートステープラでは世界トップシェアという活躍ぶり。近年は、住環境を快適にする24時間換気システムでも業績を拡大しています。
こうした独自技術に培われた高付加価値商品を生み出すマックスの、『使う人が満足するモノづくり』にこだわる企業姿勢は、さまざまな現場のプロたちから常に高い評価を受けています。
同社では数年前から、需要の変化に連動してタイムリーに商品を供給するSCM(Supply Chain Management)の構築を推進。創業の地・群馬県にある玉村工場でも、独自エンジニアリングによるNC自動化設備や工業用ロボットによる自動加工などを駆使しながら、セル生産方式による高品質・高効率のフレキシブル生産を展開し、組み立てはウィークリーロットからデイリーロットに改善し、部品展開を日単位でのスケジューリングとしてリードタイムを短くすることで市場の変化に柔軟に対応できる生産体制の確立をめざしてきました。
「一連のSCM改革を推進する過程で、販売計画と連動した生産計画は、月から週への数量決定へと変化し、直近の販売実績と需要を反映した、より迅速な生産準備のできる体制が必要とされてきました。そのため、生産部門では製造リードタイムの短縮が急務の課題となり、組み立てだけでなく前工程の加工あるいは外注も含めてデイリーベースで展開するための部品調達計画が必要とされていたのです。
しかし、フロントエンドの販売/生産計画システムのダウンサイジング化とスピード化が進む一方で、メインフレームを基盤とした生産管理システムは週バケット(資材所要量計算における時間単位)のMRP計算しか行えず、現場との乖離が進んできました。そこで、この基幹システムのダウンサイジングを図りつつ、デイリーベースでのMRP計算を早急に実現するために導入したのが高速MRP計算エンジンを備えたSCPLANだったのです」(システム統括部長樋口浩一氏)
SCPLANは、メモリー展開による高速なMRP計算とネットチェンジ(部分再計算)もしくはリジェネレーション(一括 全部計算)機能により、計画変更時のシミュレーションと実行可能な調達・生産計画をスピーディに立案するサプライ・チェーン・プランニング・パッケージです。
マックスでは、これまでホストで行っていたMRP計算の新エンジンにSCPLANを適用することで、オーダ生成のタイムバケットを週から日の所要量で行えるように変更。SCPLANならではの数々のアラーム機能を活用して、負荷オーバーや部品不足発生などの現象を再展開して修正後、再びホストの基幹データに反映できる環境を整備しました。
システム統括部
開発2課係長
小林 正武 氏
MRP計算エンジンの高速化によって、今までホストで1時間40分かかっていた展開計算〜オーダー生成のうち、展開計算部分が、わずか10分で終了するようになり、生産部の皆さんはSCPLANのアビリティを高く評価します。
「ひんぱんに起こる計画変更に対し、スピーディかつ柔軟に対処するためには、ネック工程や問題となる部品が、どの親部品から引き当てられるかを迅速に把握しなければなりません。こうしたフルペギング*のデータは従来のホストでは取得できず、確定オーダーに対して後付で、何らかの手当てをするしかありませんでした。しかしSCPLANの導入によってこうしたデータが取得可能となったうえ、展開結果の問題点を製品別・計画ロット別・部品別・工程別など、さまざまな観点から迅速かつ明確にとらえることができるようになりました」(システム統括部開発2課係長小林正武氏)
システム統括部のオフィス風景
SCPLAN画面例1:オープニング画面:全体的な部品不足状況を確認。グラフの赤い部分の品目に関して、調査・手当てを行っていく。
これにより、急な増減産時にも事前に最適な処置が行えるようになり、生産関連部門での戦略的な意思決定にも情報を生かせる基盤が整ったということです。
さらに、「SCPLANに決めたもう1つの大きな要件が、MPSの工完日ベースでの設計変更機能があるかどうかでした。当社にとって外せないこの機能を持っていたのは、競合製品の中ではSCPLANだけでした」と樋口氏。
当初、ホストの生産計画データをSCPLAN用に変換(インタフェースファイルの生成)するための仕組み作りには大いに苦労したということですが、日立のモデリング設計コンサルティングサービスの適用によって程なくクリア。約52分かかるという部品構成表の変換処理はJP1ジョブ管理で自動化し、出社後すぐに第1回目のシミュレーションが行えるように工夫されています。
マックスシステム構成図
システム統括部
開発2課
白井 啓一 氏
展開前に必要とされる要件(マスタのチェック、在庫数調査、追加オーダーなど)に関しては、チェック用の画面や帳票を用意する一方で、SCPLANとのインタフェースファイルを「全ファイル入れ替え用」と「生産計画のみの入れ替え用」の2通り用意し、生産計画なら10分単位で何度でもMRP計算できるのが大きなポイントです。
そして、SCPLANならではのビジュアルなインタフェースもエンドユーザーには好評と評価するのが、システム統括部開発2課の白井啓一氏。
「SCPLANの画面はカスタマイズしていませんが、視認性が高いため直感的に利用できます。担当者はクライアント画面のアラートだけに注意し、問題の生じた計画のみを見直せばいい形にしています。それ以外にもSCPLANが出した結果を当社なりに加工して、現場の指示レベルで“納期遅れになる”“部品不足になる”という情報を提供していますから、作業は非常にスムーズです。現在はSCPLANとホストとの連携を統合システム運用管理JP1ジョブ管理で自動化していますが、日中シミュレーションの回数をさらに増やせるよう、データ連携のチューニングを一段と高速化していきたいと思います」
SCPLAN画面例2:日別部品計画画面:消費させる在庫数、発注予定数、オーダー残への引
当数を時系列に確認できる。赤いマスの場合は、日程展開上部品不足を起こしている。
SCPLAN画面例3:月別部品調達状況画面:部品在庫消費予定数を、週別・月別に累積し、発注予定が出る時期と数量を確認できる。在庫過剰の判断にも使用。
マックスではSCPLANを適用した計画系業務のスピードアップを図る一方で、2004年3月から、SynPLAを活用した工程内へのスケジューリングとICタグでの実績収集の運用テストを行う予定です。この運用テストはSCPLANの展開結果を生産計画システム「SynPLA※」(株式会社日立東日本ソリューションズ提供)に渡し、そこで出力された詳細工程スケジューリングをもとにICタグを発行。各担当者がライン上で手持ちのPDA(日立製:NPD-20WL)をICタグにかざすことで、実績情報が収集できるというものです。
この際、実績収集サーバにも自動的に情報が送られ、スケジューリングシステムにフィードバックされるため、従来は正確に把握できなかった工程ごとの作業時間のリアルな実績収集が実現。スケジューリング精度の向上や生産改善への反映はもちろん、直接原価の把握にも大いに役立つと期待されています。
「今後は消耗品を生産する藤岡工場においてもSCPLANの適用を進めながら、購買先への発注も含め、全工程において日別指示が出せる形に進化させていきたいと考えています」(樋口氏)
さまざまなビジネスシーンで活用される魅力ある製品づくりと、SCM改革によるコスト削減、顧客サービスの向上をめざすマックス。同社の積極果敢な経営戦略を、日立はこれからも強力にサポートしてまいります。 ※SynPLA:株式会社日立東日本ソリューションズが提供する生産計画システム。ERP/SCMが作成した生産計画を作業指示としてMESに橋渡しすることで、効率的なサプライチェーンの構築を実現する。
マックス基幹システムの一翼を支えるHITACHI9000Vサーバ
USER PROFILE
マックス株式会社
[本社] 東京都中央区日本橋箱崎町6-6
[玉村工場] 群馬県佐波郡玉村町川井1848
[創業] 昭和17年11月
[資本金] 123億6千7百万円(2004年2月現在)
[売上高] 459億円(2003年3月期)