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タイムリーで付加価値の高いディスクロージャーを実現する
「XBRL財務情報提供サービス」

財務情報の発信や伝達・活用をインターネット上で効率的に行えるXBRL*。その真価が発揮されるのは、やはり情報伝達のスピードとデータ加工のしやすさである。そこで株式会社日立ハイテクノロジーズでは、日立のXBRLソリューションを活用し、国内の株式公開全企業の財務諸表や決算短信を、公開翌日までにXBRL形式でインターネット配信する「XBRL財務情報提供サービス」を開始した。ユーザーの立場からディスクロージャーを迅速かつ自在に活用することができる世界初のXBRLサービスの登場である。

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XBRL:eXtensible Business Reporting Language

財務情報公開のスピード化が進展

多田 信資氏の写真
株式会社
日立ハイテクノロジーズ
情報・生産事業統轄本部
ビジネスソリューション部
金融情報プロジェクト
グループ係長
多田 信資 氏

ナノテクノロジーなどの最先端技術を駆使した設計・製造機能と、グローバルな最先端ソリューションを提供する商社機能を複合した「ハイテク創造企業」として知られる日立ハイテクノロジーズ(以下、日立ハイテク)。同社の情報・生産事業統轄本部金融情報プロジェクトグループでは1994年より、投資家はもちろん、経営分析や企業調査のプロフェッショナルたちを対象に、有価証券報告書と財務諸表データをインターネット経由で送信するサービス「有報革命」を提供していた。

しかしこの間、日本でも積極的なディスクロージャーの気運が高まり、決算短信や四半期財務情報の開示要求など、財務情報公開のスピード化が進展。アナリストや情報ベンダーなどの間では、企業間の比較分析や評価を独自の手法で行いたいというニーズから、加工しやすいデータ形式を求める声も高まっていた。そこで日立ハイテクは2003年、こうしたユーザーニーズに対応しながら、より付加価値の高いコンテンツの創造をめざし、新たなサービス・システムの構築を決意した。

「当社では『有報革命』をはじめとする財務情報のコンテンツ配信サービスで、有価証券報告書などの情報をPDFファイルとして提供してきました。しかし、毎日のように公表される決算短信をメインとした財務諸表を、タイムリーかつ再利用できる形で入手したいというお客さまの要求には、従来型のスタイルでは対応できません。また、取引先の大手情報ベンダーからも、整理された決算短信のデータを即日入手できるサービスが欲しいという緊急の引き合いがありました。そこで日立製作所に相談したところ、XBRLを活用したデータ変換システムの構築を勧められたのです」(情報・生産事業統轄本部金融情報プロジェクトグループ係長・多田信資氏)

50,000もの勘定科目を2,000科目に自動集約

宮尾 祐輔氏の写真
日製ソフトウェア株式会社
エンジニアリング
サポート部
宮尾 祐輔 氏

日本でXBRL適用システムの導入事例が極めて少なかった当時、取引先からの要求である半年間という限られた期間内に、新しいコンテンツ・サービスを作り上げるのは至難の業と思われた。だが日立には、XBRLに関する長年の実績とノウハウに加え、アプリケーション開発の短期化と低コスト化が図れる「XBRLソリューション」があった。同ソリューションでは、日立製作所が提供する「Cosminexus Business Reporting Processor」と、株式会社日立システムアンドサービスが提供する「XiRUTEシリーズXBRLツールセット」によって、XBRLに関わる基盤とアプリケーション連携部分をスピーディに構築できるため、ユーザーは上部のアプリケーション開発だけに専念することができる。

一方、財務情報に関する日立ハイテクのノウハウも強力な武器となった。財務情報をXBRL形式で処理する際にいちばんの問題となるのは、個々の企業あるいは業種で表現される勘定項目の表現が一様でないことにある。例えば「現金」と「預金」といった項目の表現も、「現金」と「預金」に分けて記載する企業、「現金・預金」と記載する企業、「現金および預金」と記載する企業などさまざまである。「当期純利益」と「当期純利益損失」という表現の違いがある場合も、数字に矛盾がないよう調整しなくてはならない。こうして、本来なら約50,000科目にものぼる勘定科目を、XBRL Japanが公開したタクソノミー*に記載の2,000科目に集約するのは、同社の力なしではかなわなかった作業である。

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タクソノミーとは、財務情報を電子的に表現するための勘定科目名や親子関係などを定義したXMLファイルである。XBRL Japanのタクソノミーは2004年2月から国税電子申告・納税システム(e-Tax)で利用されている

「私たちにはXBRLに関する知識がほとんどありませんでしたが、基盤や連携部分はXBRLツールによって迅速に整えることができましたし、元データを2000科目にマッピングする作業、データが正しいかどうかを検査・配信するための仕組み作りといった各段階でも、日立さんから強力な支援をいただくことができました。そのおかげで、予定通りにサービス提供を始めることができたのです」――そう語るのは、日立ハイテクのシステム構築を担う日製ソフトウェア株式会社エンジニアリングサポート部の宮尾祐輔氏である。

公開企業約4,500社の決算短信を翌日までにインターネット配信

2003年11月から日立ハイテクが開始した「XBRL財務情報提供サービス」では、国内の株式公開全企業約4,500社の財務情報が、企業が公開した当日もしくは翌日までにインターネットからXBRL形式で提供される。対象となるのは四半期決算短信(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書など)や有価証券報告書、半期報告書など。全公開企業の財務情報がXBRL形式で提供されるサービスは、もちろん世界初だ。

同時に開始された「XBRLデータ受信環境構築サービス」(提供・日立製作所)と組み合わせれば、XBRL形式で入手した財務情報を既存の社内システムと連携させ、用途に応じた任意の科目で取り込みながら、データの分析・加工がスピーディに行える。これにより、金融機関や機関投資家、一般企業の取引先審査部門などにおける他社比較・経年比較・財務体質などの分析・評価業務が飛躍的に効率化されるのは言うまでもない。

一方、このコンテンツを利用した独自の情報提供サービスを開始した大手情報ベンダーからの評価も高いと、多田氏は笑顔を見せる。

「企業の発表から5分ほどで届くこともあると、情報提供のすばやさを何よりも喜んでいただいています。XBRL財務情報提供サービスは標準機能として、科目表記を英語にしたり、企業が発表した原文書を参照することなどもできますが、ベンダーさまのご希望により、同社サイトからの提供科目は4000科目に増やしています。こうしたカスタマイズにも柔軟に対応でき、システム全体の保守性が高いのがXBRLの大きなメリットです」

XBRL財務情報提供サービス全体の図

Web上で財務情報を分析・加工できる新サービスも提供

高橋 宗一郎氏の写真
株式会社
日立ハイテクノロジーズ
情報・生産事業統轄本部
ビジネスソリューション部
金融情報プロジェクトグループ
高橋 宗一郎 氏

さらに、「2004年4月から、XBRL財務情報提供サービスのコンテンツを一般ユーザーにもWebからご覧いただけるサービスを開始します」と語るのは、情報・生産事業統轄本部金融情報プロジェクトグループの高橋宗一郎氏。今回、日立ハイテクでは、“情報をXBRL化する”システムだけでなく、その情報をエンドユーザーがWeb上で簡単にグラフ化したり他社比較が行える“情報を自在に活用できるシステム”についても開発を終えている。このサービスの登場によって、一般投資家でも自宅で機関投資家と同様の分析・評価環境を手に入れることが可能となる。加えて、「与信管理ソフトにも決算短信のデータを適用することで、よりスピーディな信用リスク分析を可能にしたい」と、高橋氏は新たなサービス戦略の構想を披露する。

今後、日立ハイテクの生み出した新コンテンツの付加価値がリアルタイムなディスクロージャーを促進し、日本の金融・証券市場を活性化する原動力となることは間違いない。その新たな展開を、今後も日立のXBRLソリューションは力強く支えていく。

USER PROFILE

株式会社日立ハイテクノロジーズ

[本社] 東京都港区西新橋1丁目24番14号
[資本金] 7,938,480,525円(2003年9月30日現在)
[売上高] 778,229,000,000円(連結、2002年度)

1947年、日立製作所直系の商社として誕生した「日製産業株式会社」と、日立製作所の「計測器グループ」「半導体製造装置グループ」が2001年10月に統合された新会社。従来の商社機能に加え、半導体製造装置やバイオ関連製品などナノテクノロジー事業の開発から製造・販売・サービスをトータルに運営している。

特記事項

  • この記事は、「Open Middleware Report Vol.26(2004年4月)」に掲載されたものです。
  • XBRLソリューションの詳細については,ホームページをご覧ください。
  • 記載の会社名、製品名は、各社の商標もしくは登録商標です。
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