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企業情報ニュースリリース

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2020年3月4日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
株式会社日立製作所

南アフリカで省エネ・低環境負荷型海水淡水化システムの実証運転を開始

30%以上の省エネと海洋環境負荷低減、日量6,250トンの安定造水実現をめざす

[画像](左)ダーバン市中部の下水処理場実証サイト(2019年11月末時点状況)、(右)海水淡水化・水再利用統合システム(RO膜)

  国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(理事長:石塚 博昭/以下、NEDO)と株式会社日立製作所(執行役社長兼CEO:東原 敏昭/以下、日立)は、南アフリカ共和国(以下、南アフリカ)ダーバン市で海水淡水化・水再利用統合システムの実証事業に取り組んでおり、今般、同市中部の下水処理場実証サイトで、本システムの実証運転を開始しました。
  本実証事業では、NEDOの国内実証事業で確立した本システムをもとに、海水と排水から日量6,250トン*1の飲料水を生産できる実証設備を構築し、従来の海水淡水化システム*2に比べ30%以上の省電力化*3と周辺海洋環境への負荷低減をめざします。将来的には、深刻な水不足に直面している南アフリカをはじめ、水不足が深刻な地域への本技術の普及を含めた水インフラ整備や産業発展への貢献につなげます。

【概要】

  南アフリカでは、大規模な干ばつなどの影響による深刻な水不足が問題となっていること加え、しばしば計画停電が実施されているなど電力不足も発生しています。
  このような背景のもと、NEDOは、同国における水不足問題の解決と省エネ型の造水技術の導入促進に向け、NEDOの国内実証事業において確立した省エネルギー型の海水淡水化・水再利用統合システムを実証すべく、2016年11月17日に同国のダーバン市と基本協定書(MOU)を締結*4しました。また、本事業の委託先である日立が、実証サイトの下水処理場を所有する同市との間で協定付属書(ID)を締結しました。
  そして今般、NEDOと日立は、実証サイトの土木建築工事・機器据え付け・試運転を完了し、本システムの実証運転を開始しました。
  本実証事業では、NEDOの国内実証事業で確立した本システム「RemixWater*5」をもとに、排水(下水を再生処理する過程で排出される水)を用いて海水を希釈し塩分濃度を下げることで、従来の海水淡水化システムで必要だった高圧ポンプ(6〜7MPa)を中圧ポンプ(3〜4MPa)に置き換え、日量6,250トンの飲料水を生産可能な実証設備を構築し、従来比30%以上の消費電力削減をめざします。また、海水淡水化においては、塩分濃度が高い濃縮海水の排出による周辺海洋環境への影響が問題となっていますが、本事業にて実証するシステムでは希釈した海水を淡水化することにより排水の塩分濃度を海水と同程度とし、海洋環境への負荷低減につなげます。

*1
日量6,250トン: 給水人口約2.5万人分に相当。
*2
従来の海水淡水化システム: 海水のみを逆浸透膜(RO膜)でろ過することで淡水を得るシステム。海水をRO膜でろ過する際、高い圧力での送水が必要となるため、省エネルギー化が課題となっている。
*3
30%以上の省電力化: 海水塩分濃度3.5%で10万m3/日に換算した場合の「RemixWater」での日立試算値。
*4
2016年11月17日に同国のダーバン市と基本協定書(MOU)を締結
参照ニュースリリース:「南アフリカ共和国で省エネ型海水淡水化技術の実証事業を開始へ」(2016年11月18日)
「南アフリカ共和国における海水淡水化・水再利用統合システム「RemixWater」の実証事業開始について」(2016年11月18日)
*5
RemixWater: 本システムは、NEDOの「省水型・環境調和型水循環プロジェクト」で、海外水循環ソリューション技術研究組合(GWSTA)が「ウォータープラザ北九州」(福岡県北九州市)で実証研究を行い、システムを開発、2011年4月から約3年間、一日あたり1,400m3を安定して造水。その後、GWSTAで開発した本システムをもとに日立が工業用水や生活用水向け(飲料水レベル)の新しい省エネ・低環境負荷型の造水システム「RemixWater」を開発。(「RemixWater」は日立製作所の日本における登録商標)

実施体制

[画像]実施体制

システム概略構成

[画像]システム概略構成

【実証運転の詳細】

(1)省エネルギー

  従来の海水淡水化システムでは、RO膜(逆浸透膜)による脱塩処理において、高圧ポンプ(6〜7MPa)の電力消費が大きいことが課題でした。本システムは、下水を再生処理する過程で排出される水を用いて海水を希釈し、塩分濃度を下げることで中圧ポンプ(3〜4MPa)での処理を実現するため、30%以上の消費電力削減が可能です。
  実証運転では、造水量1トン当たりに必要な消費電力が、従来法に比べ30%以上少なくなることを確認します。

(2)海洋環境負荷低減

  従来の海水淡水化システムでは、海水処理後の塩分濃度が高い水を周辺の海洋に排出しなければならず、海洋環境への影響が懸念されていました。本事業にて実証するシステムは、下水を再生処理する過程で排出される水を用いて海水をあらかじめ希釈してから淡水化するため、排水の塩分濃度は海水と同程度であり、海洋環境への影響を最小限に抑えることが可能です。
  実証運転では、本システムからの排水の塩分濃度が海水と同程度であることを確認します。

(3)安定造水

  実証運転では、計画水量(日量6,250トン)の安定的な造水とともに、生産水の水質が南アフリカの飲用基準を達成することを確認します。

【今後の予定】

  NEDOは、アフリカで初めての本実証事業を足掛かりに、南アフリカをはじめ水不足が深刻な地域に広く日本の技術を普及させ、同地域の水インフラ整備や産業発展に貢献することをめざします。
  日立は、本実証事業を契機として、水資源が不足する国・地域に対して本システムをはじめとする先進の水環境ソリューションの提案を進め、引き続き水インフラの整備や課題解決に取り組んでいきます。また、日立は、こうした取り組みにより、持続可能な世界を実現するための国際目標として国連で定められたSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の達成に寄与していきます。

日立製作所について

  日立は、OT(Operational Technology)、IT(Information Technology)およびプロダクトを組み合わせた社会イノベーション事業に注力しています。2018年度の連結売上収益は9兆4,806億円、2019年3月末時点の連結従業員数は約296,000人でした。日立は、モビリティ、ライフ、インダストリー、エネルギー、ITの5分野でLumadaを活用したデジタルソリューションを提供することにより、お客さまの社会価値、環境価値、経済価値の3つの価値向上に貢献します。

お問い合わせ先

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構

環境部 [担当:佐藤、中村、鈴木]
電話 : 044-520-5249

株式会社日立製作所

水・環境ビジネスユニット 水事業部 国際ビジネス推進室 [担当:大倉]
〒170-8466 東京都豊島区東池袋四丁目5番2号
電話 : 03-5928-8616(直通)

以上

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