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Hitachi

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2013年2月20日

社会インフラ向けM2Mをクラウドシステムで実現するための
高速応答ネットワーク技術を開発

川崎市と仙台市間のデータ処理実験で10ミリ秒以下の応答性能を確認

  株式会社日立製作所(執行役社長 : 中西 宏明/以下、日立)は、このたび、電力、交通、都市開発などの社会インフラシステム分野でのM2M*1(Machine-to-Machine、機器制御のための機器間通信)を、クラウドコンピューティングシステム(以下、クラウドシステム)で実現するための、高速応答ネットワーク技術を開発しました。
  本技術は、制御対象となる機器に取り付けたセンサから取得したデータを、ネットワーク上に分散配置した情報処理ノード*2で処理するものです。センサデータをデータセンタに設置したサーバまで送信して処理する従来の方法に比べ、通信遅延の影響をほぼ受けることなく、即時性の高い制御を実現することが可能です。今回、独立行政法人情報通信機構が運営する試験ネットワーク「JGN-X*3」を介して接続した神奈川県川崎市および宮城県仙台市の2地点を利用し、約1,000個のセンサを模擬したデータを処理する実験を行ったところ、高い即時性が要求される制御システムで必要な応答時間10ミリ秒以下の性能が得られることを確認しました。

  インターネット経由でデータやソフトウェアなどを利用するクラウドシステムは、システム構築の初期コストを抑制できることなどから、今後、企業や自治体の基幹業務をはじめ、交通インフラやスマートグリッド、プラント設備やビル・建物などの監視システムといった社会インフラの制御システムでの利用が期待されています。これらの制御システムは、ネットワークに繋がった大量のセンサから測定データを収集・処理し、ネットワークを介して機器の制御を自動的に実行するものです。センサデータから異常を検知した場合には即座に機器を停止させるなど、制御システムには高い信頼性と即時性が求められます。
  クラウドシステムを使用する場合、データセンタに設置するサーバを二重化することで、システム障害に対する信頼性を確保することができます。しかしこの場合、センサデータをサーバまで送信してデータ処理と機器制御を実行するため、センサや制御対象となる機器とサーバまでの通信距離が長くなると大きな通信遅延が発生します。例えば、関東から東北や関西のデータセンタを用いた場合、通信回線の種類によるものの、応答時間のうち通信遅延だけで12ミリ秒から30ミリ秒かかり、制御システムに必要な即時性が損なわれてしまうという課題がありました。

  このような課題に対し、日立は、即時性が求められる社会インフラ向けの制御システムとしてクラウドシステムの利用を可能にする、ネットワーク技術を新たに開発し、その効果を検証しました。

(1) 開発技術の概要
  今回開発したネットワーク技術では、ネットワーク上に分散配置した100台から1,000台規模の情報処理ノードを用いて、センサデータの処理および機器の制御を行います。具体的には、センサや制御対象機器をシステムに登録する際に、処理能力に余裕があり、通信遅延がサービスの利用に必要な値以下となる情報処理ノードを自動探索し、当該ノードがデータを送受信するよう設定します。
  センサデータをデータセンタなどに設置したサーバに送信して処理する場合に比べ、通信距離に起因する通信遅延を低減することができるため、センサデータを送信してから機器制御を実行するまでの応答時間を短縮することが可能です。
(2) 実証実験による効果検証
  今回、川崎市および仙台市の2地点に設置したサーバを情報処理ノードとする模擬クラウドシステムを使用し、開発技術の効果を検証しました。具体的には、川崎市に設置したセンサ・制御対象機器が1,000個相当のセンサデータを送信してから、サーバでのセンサデータ処理結果がセンサ・制御対象機器に到達するまでの時間を計測しました。その結果、川崎市に設置した情報処理ノードに相当するサーバが自動選択され、データセンタまでセンサデータを送信する場合に比べ通信遅延が1/10以下となり、M2Mで必要とされる10ミリ秒以下の応答性能が得られることを確認しました。

  本成果の一部は、2013年2月20日に東京都の秋葉原UDXで開催されるシンポジウム「クラウドネットワークシンポジウム2013」(主催: 総務省「広域災害対応型クラウド基盤構築に向けた研究開発」受託機関、協力 : グローバルクラウド基盤連携技術フォーラム(GICTF))にて展示発表する予定です。

  なお、本研究の一部は、総務省委託研究「セキュアクラウドネットワーキング技術の研究開発(インテリジェント分散処理技術)」および「広域災害対応型クラウド基盤構築に向けた研究開発(高信頼クラウドサービス制御基盤技術)」による成果です。

*1
M2M(Machine-to-Machine) : ネットワークに接続した機械同士が情報を交換して自動的にさまざまな制御を行う技術。
*2
ノード : ネットワークを構成するひとつひとつの要素。コンピュータやスイッチ、ルータなどの1台1台の通信装置。
*3
JGN-X : 独立行政法人情報通信研究機構が推進する新世代ネットワークの研究開発を支えるテストベッド。
[画像]JGN-X

開発技術の概要図

[画像]開発技術の概要図

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 中央研究所 情報企画部 [担当 : 木下、石川]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪1丁目280番地
電話 042-327-7777(直通)

以上

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