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Hitachi

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2012年9月5日

重電分野や航空宇宙分野、自動車分野の生産コスト削減に寄与する
3次元樹脂含浸成形シミュレーション技術を開発

  株式会社日立製作所(執行役社長 : 中西 宏明/以下、日立)は、このたび、重電分野や航空宇宙分野、自動車分野などで使用される高強度軽量材料や絶縁構造物など産業用材料の製造方式の一種である樹脂含浸プロセスを3次元でシミュレーションする技術を開発しました。本技術により、基材に対する樹脂の最適な加圧力や温度などの成形条件を事前に選定でき、成形時間の短縮による生産コストの低減が可能になります。

  樹脂含浸方式は、炭素の繊維や粉砕した鉱物などを層にした基材の隙間に樹脂を流し込み、硬化させる方法で、高い電気絶縁性や強度、軽量性が得られます。この特長から、樹脂含浸方式を用いた素材は、発電用コイルの絶縁構造物や航空機・ロケットの胴体、自動車の車体部分に使用される高強度軽量材料(FRP*1)をはじめとして、幅広い分野で用いられています。
  しかし、材料の製造過程における樹脂への加圧力、温度などの成形条件や樹脂の充填時間などは、経験則や試作の繰り返しなどによって決定されていました。また、用途の拡大に伴って、樹脂含浸の対象となる基材の素材や大きさが多様化しており、最適な成形条件を個別に選定することは多大な試作時間とコストを要するため現実的ではありませんでした。そのため、含浸不足による強度や電気絶縁性の低下を防ぐためには、樹脂の充填時間を予想しうる最大値に設定しなければならず、開発期間の長期化や、製造コストの増大につながっていました。

  そこで日立は、樹脂含浸成形シミュレーション技術を開発し、成形時間の短縮による製造コスト低減を可能にしました。本技術には、基材内の隙間を流れる樹脂の圧力変化に伴う流動速度の変化に着目した含浸解析モデルと、樹脂が固まるまでの温度の変化に伴う粘度変化モデルを適用しています。この2つのモデルを適用することで、時間の経過に伴う樹脂含浸の進行状況を把握することができます。さらに、基材に樹脂を注入した際の樹脂の流動領域を把握できる巨視的流動可視化装置と、上記の含浸解析モデルを3次元流体解析ソフトに組み込んだことにより、基材の大型化や素材の多様化にも対応できる樹脂含浸成形シミュレーション技術を実現しました。本技術を活用することで、樹脂含浸時間を最大約50%*2短縮可能であることが確認できました。

  今回開発した技術の特長は、以下の通りです。

(1) 3次元流体解析ソフトFLOW-3D®*3への含浸解析モデル・粘度変化モデルの組み込み
  測定した流動距離や流動面積、流動抵抗値を反映した含浸解析モデルと、樹脂の温度反応に伴う粘度変化モデルを3次元流体解析ソフトFLOW-3D®に組み込み、計算させることにより、製品全体の樹脂含浸の経時変化を把握できるようになりました。この新規のモデルを組込んだソフトにより、樹脂が基材の隙間を流れる向きや速さが計算可能となり、炭素繊維や鉱物など密度の異なる基材にも幅広く対応することができるようになりました。
(2) 巨視的流動可視化装置の開発
  多様な基材に対するシミュレーションを実現するためには、樹脂が基材内の隙間を流動する際の流動距離や流動面積、流動抵抗値の測定が必要となります。そこで、基材に樹脂を含浸した際の樹脂の流動領域を把握できる可視化装置を開発しました。

  今後、日立は、社会インフラを支える重電分野の生産リードタイム短縮を進めて収益体質の強化を図るとともに、需要の増加が見込まれるFRP市場にも本技術をグローバルに展開していきます。

  なお、本技術は9月9日から開催される「日本機械学会 2012年度年次大会」で発表予定です。

[図]発電機固定子コイル絶縁層の樹脂含浸

*1
FRP (Fiber Reinforced Plastic) : 繊維強化プラスチック。
*2
全長約10メートルの発電機固定子コイル絶縁層の樹脂含浸成形に適用したところ、絶縁層内の樹脂流動パターンを時系列に把握できるとともに、これまで困難であった複数コイルの樹脂充填時間のばらつき予測が可能となり、含浸時間を最大約50%短縮できる見込みを得ました。本技術は発電機固定子コイル絶縁層に限らず、今後需要の増加が見込まれる大型FRP成形への適用も可能です。
*3
3次元流体解析ソフトFLOW-3D® : Flow Science社の登録商標。

照会先

株式会社日立製作所 横浜研究所 企画室 [担当 : 塚越]
〒244-0817 神奈川県横浜市戸塚区吉田町292番地
電話 045-860-3092(直通)

以上

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