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2012年8月29日
学校法人東京女子医科大学
株式会社日立製作所

角膜ならびに食道の再生医療に向けたヒト細胞シートの自動培養に成功

無菌性に優れた完全閉鎖系の小型細胞自動培養装置を試作

  学校法人東京女子医科大学先端生命医科学研究所(所長 : 岡野 光夫/以下、東京女子医大)と株式会社日立製作所(執行役社長 : 中西 宏明/以下、日立)は、このたび、ヒト由来細胞から再生医療に用いるシート状組織(以下、ヒト細胞シート*1)を自動で培養可能な、完全閉鎖系の小型自動培養装置の試作に成功しました。本装置を用いることで、外部からの汚染を低減し無菌性に優れた環境で、ヒト細胞シートの自動培養が可能となります。今回試作した装置は、容量900ℓ、設置面積0.6m2、医薬品や医療用具などの製造における安全性や品質を定めた基準(GMP*2)に準拠して設計したものです。本装置を用いて、実験用に市販されているヒト細胞から角膜ならびに食道の再生医療に向けたヒト細胞シートの培養試験を行ったところ、従来の手作業による培養と同品質のヒト細胞シートを培養できることを確認しました。

  近年、障がいや欠損を起こした組織や臓器を根本的に治療する次世代の革新的な医療として、細胞を用いて組織や臓器を再構築し、病変部へ移植する再生医療が注目されています。東京女子医大は、培養したシート状組織(細胞シート)を損傷なく回収する独自技術*3を確立し、角膜、心筋、食道、肺、歯周、軟骨や肝臓などの疾患への適用をめざした基礎研究、臨床研究に取り組んでいます。従来、細胞シートの培養では、細胞播種(種まき)や培養に必要な栄養を含んだ培地の交換などを、細胞培養技術者が手作業で行ってきました。しかし今後、再生医療が普及するにつれて人材不足や、低コスト化が課題になると予想されることから、培養工程の自動化による細胞シート製造の効率化が求められています。また、細胞シートの培養には、厚生労働省の指針に沿った培養環境の空調管理や清浄性保持、作業記録等の厳密な管理が求められることから、無菌性に優れた環境で細胞シートを培養できる閉鎖系の自動培養装置の開発が望まれています。

  このような背景のもと、東京女子医大と日立は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の「組織再生移植に向けたナノバイオインターフェイス技術の開発」に参画し、2006年に準閉鎖系の自動培養装置を試作*4して、移植可能な品質の動物細胞シートの自動培養に初めて成功しました。さらに、2009年からは、文部科学省の先端融合領域イノベーション創出拠点形成プログラム「再生医療本格化のための最先端技術融合拠点」に参画し、再生医療用のヒト細胞シートの培養に適した自動培養装置の開発に取組んできました。
  今回、複数枚のヒト細胞シートを同時に自動で培養可能な閉鎖系の小型自動培養装置を試作すると共に、本装置を用いたヒト細胞シートの培養試験を行い、装置の有用性を検証しました。

試作した装置と培養試験の概要は以下の通りです。

(1) モジュール型の細胞培養空間を用いた小型閉鎖系自動培養装置
  自動培養装置では、細胞の播種、培養中の培地交換など、細胞の状態に合わせた様々な処理を細胞培養空間内で行います。培養空間は、細胞培養容器と、培養容器へ培養液を送るための流路部から構成されていますが、今回、流路の切換弁やポンプ等の処理機構を細胞培養空間外に設置することで、培養中に外部から汚染されることのない完全閉鎖系構造を実現しました。また、細胞培養空間を装置から丸ごと着脱可能なモジュール構造としたことで、患者ごとに単回で使用でき、患者間の交差汚染の回避が可能です。
(2) 角膜ならびに食道の再生医療向けヒト細胞シートの培養実験
  試作した装置を用いて、実験用に市販されているヒト細胞から、角膜ならびに食道の再生医療用のヒト細胞シートの自動培養実験を行いました。培養した細胞シートを評価したところ、従来の手作業により製造された細胞シートと同品質であることを確認し、試作装置の有用性を実証しました。

  東京女子医大と日立では、今回開発した自動培養装置の試作をもとに、臨床研究用自動培養装置の開発を推進し、再生医療の普及を加速していきます。

*1
細胞シート : 生体組織に近いシート状の培養細胞。
*2
Good Manufacturing Practiceの略。アメリカ食品医薬品局が、1938年に連邦食品・医薬品・化粧品法に基づいて定めた医薬品等の製造品質管理基準。各国がこれに準ずる基準を設けており、日本においては、薬事法に基づいて厚生労働大臣が定めた、医薬品等の品質管理基準をいう。
*3
東京女子医大では、ある温度を境に、水に対する溶けやすさが変化する「温度応答性高分子」を用いた細胞培養皿の技術を開発。細胞シートの培養プロセスでは、細胞培養皿の温度を制御することによって細胞シートがはがれやすくなり、損傷なく回収することが可能。
*4
従来の準閉鎖系培養装置は、培養容器と流路が分離された構造を採用。

[画像](左)図1. 試作した完全閉鎖系の小型細胞自動培養装置 (右)図2. 試作装置を用いて培養したヒト培養シート

お問い合わせ先

学校法人東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 [教授 : 大和 雅之]
〒162-8666 東京都新宿区河田町8番1号
電話 03-5367-9945 ext.6211

株式会社日立製作所 中央研究所 企画室 [担当 : 木下]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪1丁目280番地
電話 042-327-7777(直通)

以上

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