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2012年3月12日
国立大学法人長崎大学
株式会社日立製作所

長崎大学熱帯医学研究所がケニア共和国で進める
「健康と人口の動態追跡調査システム」の研究において、
「指静脈認証」を活用するための実証実験を日立と共同で実施

  国立大学法人長崎大学(学長 : 片峰 茂/以下、本学)の熱帯医学研究所(所長 : 竹内 勤/以下、熱研)は、ケニア共和国(以下、ケニア)にある本学の海外教育研究拠点「長崎大学アフリカ教育研究拠点」(以下、アフリカ拠点)が中心となって進めている「健康と人口の動態追跡調査システム」(以下、HDSS : Health and Demographic Surveillance System)の研究において、住民情報の本人特定の精度を将来的に向上させるため、株式会社日立製作所(執行役社長 : 中西 宏明/以下、日立)と共同で2012年3月13日から24日まで、ケニア南端のコースト州クワレ県において、生体認証である「指静脈認証」を活用するための実証実験を行います。

  本学はアフリカ拠点において、感染症病原体に関する研究のほか、感染症対策や母子保健など、公衆衛生上重要な調査・研究を、HDSSを展開する地域において行っています。HDSSとは、住民登録や人口の動態(婚姻、出生、死亡、移動)を把握する仕組みのない「地域」において、その「地域」に居住するすべての住民を登録し、その動向を系統的かつ継続的に行う取り組みのことで、「ある限られた地域」を丸ごと観察し、疫学調査や介入研究を行い、その結果を広く一般に還元するものです。現在では、アフリカをはじめとした途上国の健康・保健情報を安定して提供するための情報源としての価値が高まっています。これまで、ケニア西部のビクトリア湖畔のニャンザ州スバ県、インド洋側のコースト州クワレ県において、あわせて10万人規模で調査を継続して来ました。しかし、居住地が複数あることや同じ人が複数登録されていることがたびたび起こっていることから、今回、重複を防ぎ、動向調査の精度を高めることを目的に、日立の開発した「指静脈認証」技術を活用し、まず600人規模でHDSSの動向調査の精度向上に向けた実証実験を行います。「指静脈認証」を活用することで、本人特定の精度を飛躍的に高められることが期待されています。
  なお、今回の実証実験で得た指静脈の情報は、実証実験後に、これまでHDSSで集めた住民情報とマッチングさせ、3ヶ月後の健康調査時の本人同定に用いる予定です。
  さらに本学では、今回の実証実験の成果をふまえ、今後、ケニアにおけるHDSSの動向調査に「指静脈認証」を適用しながら、ワクチン接種記録やマラリア予防のための蚊帳の提供、加えて、病院情報との連結といったさまざまな履歴情報とも組み合わせ、住民情報の充実を図って行くことを検討していきます。

本学のケニア共和国におけるこれまでの取り組みについて

  本学は、熱帯感染症や新興感染症・再興感染症の研究レベルを向上することを目的に、日本の国立大学としては、初めてとなる海外研究拠点をケニアに構築しました。また、国際協力機構(JICA : Japan International Cooperation Agency)との連携により開発援助の側面からも、研究成果を現地に還元してきました。
  その歴史をたどると、1960年代初めから1975年まで、本学(熱研と医学部)は、ケニア中央部リフトバレー州のナクール総合病院において、JICAの前身である海外技術協力事業団(OTCA)により開始された医療協力事業により、医師や看護師、検査技師をはじめとした医療団の派遣を行っていました。当時のケニアは医学部がなく、自国の医師は海外で教育を受けた少数の者だけという頃でした。本学が派遣した医療団はケニアの医師と一体になり、毎日、押し寄せる患者の治療にあたっていましたが、ケニアの人々が抱える主な病気であるマラリア、下痢、肺炎、結核といった感染症の患者は減ることはありませんでした。そこで、病気の原因を断たなくてはどうにもならないということから、本学とJICA、そして当時、組織されたばかりのケニア中央医学研究所(KEMRI : Kenya Medical Research Institute)による共同プロジェクト「伝染病対策研究プロジェクト」が開始され、以後、ウイルス、細菌、原虫、そして寄生虫といった感染症の病原体の研究とその対策をJICA並びにケニア政府と共に2006年まで継続しました。
  本学のアフリカ拠点は、このような40年以上におよぶ熱帯医学研究所のケニアにおける研究活動の延長線上にあるもので、ケニアの首都ナイロビに拠点の本部を置き、ビクトリア湖畔のスバ地区、インド洋側にあるクワレ地区に、フィールドを持つ研究拠点を2005年に構築しました。
  アフリカ拠点の本部は、ナイロビのKEMRI構内に設けた事務所と研究用の施設で、ここにはバイオセーフティレベル(BSL)3レベルのラボシステムも設置し、病原体の解析作業をはじめとした調査研究を進める一方、ケニア内の公的機関との連携なども進めています。
  スバ地区は、ビクトリア湖畔にある漁村で、ケニアでも貧しい地域の一つとして知られ、マラリアの流行地域です。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)や後天性免疫不全症候群(AIDS)、コレラも大きな問題となっています。ここでは、現地スタッフとともに、HDSSによる調査を展開しています。
  また、サバンナに囲まれたクワレ地区は、スバ地区に比べ人口密度が低く、イスラム教を中心とした信徒の多い地域です。ここでも現地スタッフとともに、HDSSによる調査を行っています。

[画像](左)アフリカ拠点 位置図 (右)クワレ地区のフィールドにおける乳幼児栄養調査の風景

国立大学法人長崎大学について

  国立大学法人長崎大学は、オランダ軍医ポンペ・ファン・メールデルフォールトがオランダ語による医学講義を開始した医学伝習所の設置(1857年11月12日)を創基とします。教育学部、薬学部、経済学部も、その創始から100年を数え、その後、時代のニーズに合わせて水産学部や工学部、歯学部、環境科学部など、学びの領域を広げてきました。現在、8学部、6研究科となり、実学主義、現場主義に基づいて実習や実験を多く取り入れた教育・研究を進めています。高度専門職業人として社会に貢献できる人材を育て、地域や世界と協調しながら、恒久的な平和構築をめざした教育と研究の高度化を図っています。

長崎大学 熱帯医学研究所について

  長崎大学熱帯医学研究所は1942年に長崎大学に設置された東亜風土病研究所を前身とします。1967年に熱帯医学研究所と改称され、アジア、アフリカなど、その研究活動を途上国へと拡大してきました。熱帯地域では、その複雑多様な自然・社会環境が、熱帯病をはじめとする錯綜した健康問題を引き起こし続けています。このような認識に基づき、熱帯病の中でも最も重要な領域を占める感染症を主とした疾病と、これに随伴する健康に関する諸問題を克服することを目指し、関連機関と協力して、熱帯医学及び国際保健における先導的研究と、その研究成果の応用による熱帯病の防圧ならびに健康増進への国際貢献、さらにこうした問題に関わる研究者と専門家の育成を進めています。

「指静脈認証技術」について

  指静脈認証技術は、日立が開発した生体認証技術で、指の静脈パターンで個人を認証するものです。近赤外線を指に透過させて得られる指の静脈パターンの画像から静脈の存在する部分を構造パターンとして検出し、あらかじめ登録した静脈の構造パターンと照合させて個人認証を行う技術です。指静脈は体内にある情報であるため、偽造や成りすましが極めて困難であり高いセキュリティレベルを実現します。日立では、2002年に指静脈認証装置を製品化して以来、ATMの本人認証やPCログイン、入退室管理など、さまざまな分野での適用を広げてきました。

[画像]日立指静脈認証装置

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お問い合わせ先

国立大学法人長崎大学

熱帯医学研究所生態疫学分野 [担当 : 金子、中山]
〒852-8523 長崎県長崎市坂本1-12-4
TEL : 095-819-7866(ダイヤルイン)

株式会社日立製作所

情報・通信システム社 公共システム営業統括本部
カスタマ・リレーションズセンタ [担当 : 米山、佐々木]
〒136-8632 東京都江東区新砂一丁目6番27号 新砂プラザ

以上

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