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2009年6月5日

ATM内において複数の紙幣の動きを再現する
三次元シミュレーション技術を開発

紙幣のさまざまな動きを再現し、最適な機構設計に反映

  株式会社日立製作所(執行役会長兼執行役社長:川村 隆/以下、日立)は、このたび、現金自動取引装置(以下、ATM)内で紙幣の出し入れおよび保管を行う紙幣繰出機構や集積機構において、積み重なった多数の紙幣を1枚ずつ分離して繰り出す、または、連続して紙幣を1枚ずつ積み重ねるといった際の紙幣と機構の動きを再現する三次元シミュレーション技術を開発しました。本技術では、多数積み重なった紙幣と紙幣の間の摩擦状態や、紙幣と機構部品の接触状態も再現することが可能です。従来のシミュレーションでは困難であった、複数の紙幣の同時繰り出しや紙幣同士の衝突など、紙幣に関するさまざまな動きを再現できるため、試作機やテスト用紙幣を使用せずに、紙幣繰出機構や集積機構の性能評価を行うことができます。本技術は、ATMの開発期間の短縮や、より信頼性の高いATMの開発に寄与するものです。

  ATMでは、出金時には紙幣を1枚ずつ繰り出して識別し、入金時には所定の集積機構へ搬送して収納することが基本的な処理動作となっています。そのため、紙幣の繰出機構や集積機構の性能は、ATMの性能に大きく影響します。従来、これらの機構の開発にあたっては、試作機を製造し、新札や折れ曲がったものなど、さまざまな状態の紙幣を用いて動作確認を繰り返し行うことによって不具合を検出し、改良を行っていました。しかし、これらの機構の信頼性を本質的に高めるためには、紙幣の挙動メカニズムを的確に把握する必要があり、また、開発コスト削減のため、試作回数の低減や開発期間の短縮も課題となっていました。
  これらの課題に対して、日立は、これまでに、1枚の紙幣を対象とした挙動シミュレーション技術を開発し、搬送機構の設計に適用してきました。一方、複数の紙幣を対象とした従来の解析では、実際は変動する積み重なった紙幣間の摩擦や、紙幣の表面に対して垂直方向にかかる圧力などを、変動しない定数とみなしていました。そこで、今回、紙幣間の摩擦や紙幣の厚さ方向の圧力を正確に算出し、複数の紙幣の挙動解析が可能な三次元シミュレーション技術を開発しました。開発した技術の特長は、以下のとおりです。

1. 紙幣繰り出しシミュレーション技術

  ATMの繰出機構では、複数のゴムローラによる摩擦力を用いて、積み重ねられた紙幣を1枚ずつ繰り出していきます。ローラの形状設計や摩擦係数の設定が不十分である場合、複数の紙幣が同時に繰り出される現象(重送)や、紙幣が1枚も繰り出されない現象(不送)が発生します。これらの現象を正確にシミュレーションするためには、繰り出される紙幣とゴムローラ間の挙動解析だけではなく、積み重ねられた状態の2枚目や3枚目以降の紙幣についても、紙幣間に働く摩擦力を同時に解析し、考慮する必要があります。
  一般に、紙幣の挙動解析を行う場合、有限要素法*1が用いられ、この際、計算時間の短縮を図るため、節点数が少なく、解析の負荷を軽減することが可能なシェル要素*2が特に多く用いられています。しかし、複数の紙幣の挙動解析を同時に行うためには、紙幣間の摩擦力を正確に算出することが不可欠であり、紙幣の厚さにかかる剛性を考慮しないシェル要素のみの解析では、紙幣間に働く摩擦力を、実際の状態と同等に再現することが困難でした。
  そこで、今回、複数の紙幣が積み重ねられ、紙幣の厚さに対して弾性が働く状態において、紙幣間の接触面積が実際の状態と同等になるようにモデル化する手法を考案し、紙幣間に作用する摩擦力を正確に推定する技術を開発しました。これにより、積み重ねられた状態から、紙幣が連続して1枚ずつ取り出される挙動のほか、重送や不送の現象をシミュレーションで再現することが可能となりました。

*1
有限要素法 : 実際には、複雑な形状・性質を持つ物体を、単純な形状・性質の小部分(要素)に分割し、その一つひとつの要素の特性を、数学的な方程式を用いて近似的に表現する。この単純な方程式を組み合わせ、すべての方程式が成立する解を求めることにより、全体の挙動を予測する方法。
*2
シェル要素 : 有限要素法を行うために、解析の対象である部品を分割する際の要素のひとつ。板理論に従い、厚さのある部品の中立面に節点を設けて解析を行うため、計算負荷を軽くすることが可能。薄板構造体の解析によく使用される。

2. 紙幣集積シミュレーション技術

  ATMの集積機構では、細長いプラスチックシートを放射状に取り付けたシートローラとゴムローラによって、紙幣を所定の集積部へ積み重ね、収納します。集積機構では、先に集積された紙幣の端に、続いて集積される紙幣の先端が衝突することによって発生する集積不良を防ぐため、先に集積された紙幣の後端を押さえるとともに、集積する紙幣の先端部が垂れ下がらないようにするシートローラが用いられています。この集積時における紙幣の挙動を正確にシミュレーションするためには、集積された紙幣や集積される紙幣の挙動解析だけでなく、紙幣と接触しながら回転するプラスチックシートの挙動を同時に解析することが必須です。特に、集積される紙幣と、変形しながら回転するプラスチックシートの接触変形状態や摩擦力を、実状態と同等に再現することが重要です。
  これまで、紙幣とプラスチックシートの接触部分におけるモデル化は、計算精度を確保するため、有限要素法において、細かくメッシュ分割*3を行っていました。しかし、シミュレーション技術を設計に適用するためには、計算精度の確保とともに、計算時間の短縮化が不可欠であり、紙幣とプラスチックシートのメッシュ分割の適正化が課題となっていました。
  そこで、今回、紙幣とプラスチックシートの接触部分における要素分割を最適化する技術を開発し、プラスチックシートと紙幣の間の接触変形状態や摩擦力を忠実に再現するとともに、計算時間の短縮を実現しました。これにより、折れ曲がった紙幣の集積不良の現象など、さまざまな状態の紙幣を連続して1枚ずつ積み重ねていく場合の挙動における、三次元シミュレーションを再現することが可能となりました。

*3
メッシュ分割 : 有限要素法を行うための要素分割のこと。要素の分割を表す線が網の目状になることから、このように呼ばれる。

  本技術を用いることにより、さまざまな条件における紙幣の挙動、さらには、繰出機構や集積機構の性能を、シミュレーションによって評価することが可能となります。これにより、試作機を用いずに、機構の最適な設計を行うことが可能です。なお、本技術を用いて開発されたATMや紙幣処理機構は、今後、ATMの製造・販売を行うグループ会社である、日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社より出荷される予定です。また、ATM以外の製品への応用等も、検討していきます。

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 機械研究所 企画室 [担当:秋葉]
〒312-0034 茨城県ひたちなか市堀口832番地2
TEL : 029-353-3214 (直通)

以上

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