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Hitachi

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2008年10月27日

親指サイズで測定感度40ピコメートルの小型変位センサを開発

光干渉計にフォトニック結晶を導入し、小型化と高感度化に成功

  株式会社日立製作所(執行役社長:古川 一夫/以下、日立)は、このたび、親指サイズで、40ピコメートル(1ピコは1兆分の1)という、原子の大きさ(約100〜300ピコメートル)より一桁小さな測定感度*1で、微小な変位を測定する、小型変位センサを開発しました。開発した小型変位センサは、光の干渉現象を利用する光干渉計を応用し、光学部品にはじめてフォトニック結晶*2を導入することで、従来の光干渉計では両立が困難だった、親指サイズの小型化と、測定感度40ピコメートルという高感度化を実現させたものです。
  本センサは大きさが親指サイズと小さいため、今までスペースが限られ、高感度な変位センサの組み込みが困難であった、半導体デバイスなどのナノ構造素子を加工する超精密加工機などに搭載することができ、原子レベルの精度による工具、試料の位置決めや、加工の微細化に大きく貢献します。
  また、開発した小型変位センサを、微細加工された素子や材料の凹凸を原子レベルで観察する、既存の原子間力顕微鏡(以下、AFM:Atomic Force Microscope)や、走査トンネル顕微鏡(以下、STM:Scanning Tunneling Microscope)をはじめとする走査プローブ顕微鏡(以下、SPM:Scanning Probe Microscope)に組み込むことにより、従来ナノメートル(1ナノは10億分の1)オーダの精度であったプローブ(探針)の位置制御を、ピコメートルオーダの精度に高めることができます。これにより、原子一個一個の凹凸を高精度に観察する、次世代のナノ構造測定手段の実現にも貢献します。

  半導体デバイスやハードディスク装置の磁気ヘッド素子など、ナノメートルスケールの微細構造からなるナノ構造素子は、各種情報機器・端末の基本構成要素としてその性能を左右します。これらナノ構造素子の開発・製造には、ナノレベルでの加工が可能な半導体製造装置や超精密加工機が用いられています。また、微細加工された素子や材料の観察・検査には原子レベルで凸凹を測定するAFMやSTMに代表されるSPMが用いられています。今後、産業技術の進展とともに情報機器・端末の大容量化と高機能化が求められており、これを実現するにはナノ構造素子のさらなる微細化が必要です。このため、超精密加工機や測定装置への組み込みが可能な、小型で高感度な新たな変位センサの実現が求められていました。
  こうした要求に応える変位センサとして光干渉計が挙げられますが、光干渉計は寸法が大きい上に、空気の揺らぎや機械振動などの影響を受けやすいため、組込みには十分なスペースが必要で、温度や湿度が厳しく管理された特殊な環境に使用が限定されるという課題がありました。

  今回日立では、この光干渉計を応用し、光学部品にはじめてフォトニック結晶を導入することでこれらの課題を解決し、小型化と高感度化を両立させた新しい小型変位センサを開発しました。この小型変位センサは、50mm(縦)×20mm(横)×14mm(高さ)という親指サイズながら、40ピコメートルという高感度な変位測定を実現しています。この小型変位センサを、半導体製造装置や超精密加工機、さらにはSPMに搭載することにより、原子レベルの精度による工具、試料の位置決めや、加工の微細化、さらには次世代のナノ構造測定手段の実現に大きく貢献します。

  なお、本技術は、2008年11月4日から6日まで茨城県つくば市のつくば国際会議場で開催される「Optics & Photonics Japan 2008(日本光学会年次学術講演会)」にて発表する予定です。

開発技術の詳細

(1). 高感度化技術

  光干渉計では、レーザ光を2つの光路に分離し、一方を参照ミラーと呼ばれる反射鏡に照射し(参照光)、他方を測定対象に照射し(測定光)、両者の反射光を干渉させ、その干渉光の強度から測定対象の変位を求めます。今回、この参照ミラーに、はじめて積層型フォトニック結晶偏光子*3を用いて、参照光と測定光を同一の光路上で偏光状態の違いで分離する、新しい偏光分離形共通光路光干渉技術を開発しました。これにより、空気の揺らぎや機械振動などの影響を低減すると共に、参照ミラー・測定対象間で生じていた繰り返し反射や光量低下を抑えることができました。さらに、フォトニック結晶偏光子透過直後の測定光の偏光状態を制御し、測定光をフォトニック結晶偏光子と測定対象の間を正確に2往復させることにより、変位量を2倍に拡大して検出することに成功しました。この結果、測定感度40ピコメートルという高感度測定を実現しました。

(2). 小型化技術

  干渉光の強度から測定対象の変位量を求める際には、参照光と測定光の間にπ/2ずつ位相差を与え、これにより得られた4つの干渉信号から変位量を求める位相シフト法*4を用いていました。今回、結晶軸の方向が異なる4つの積層形フォトニック結晶偏光子を用いて、これらを1枚の基板上にアレイ状に形成することにより、4つの位相シフト干渉信号を並列に生成する小型の位相シフタを開発しました。上記の高感度化技術と開発した小型の位相シフタを組み合わせることにより、50mm(縦)×20mm(横)×14mm(高さ)の親指サイズの小型変位センサを実現しました。

*1
測定感度:ここでは、測定対象のどれだけ微小な変位まで測定可能であるかを示す尺度。電気系のAD(アナログ・ディジタル)変換部の分解能や表示部の分解能とは異なる。
*2
フォトニック結晶:光の波長程度の周期で屈折率の異なる材料を2次元あるいは3次元的に配列した光学材料。
*3
積層型フォトニック結晶偏光子:フォトニック結晶の一種。光の波長の数分の1の周期の凹凸格子を透明基板上に形成し、屈折率の異なる2種類の薄膜を積層して作る。格子構造を調節することにより、入射偏光によって反射・透過特性が異なる偏光子として働く。
*4
位相シフト法:参照光と測定光の間にπ/2ずつ位相差を与えて、4つの干渉信号Iq (q = 0〜3)

位相シフト法1

を得て、次式から変位量Dを得る。ここで、Ir、Imは参照光、測定光の強度、λは光の波長、nは空気の屈折率でn = 1。

位相シフト法2

今回開発した小型変位センサ

今回開発した小型変位センサ

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 生産技術研究所 企画室 [担当:鈴木、神田]
〒244-0817 神奈川県横浜市戸塚区吉田町292番地
TEL : 045-860-1678 (直通)

以上

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