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2008年7月7日
国立遺伝学研究所
株式会社日立製作所

医薬品開発への応用が期待できる
タンパク質の相互作用に関するデータを公開

各種の疾患に関与するヒト転写調節因子のネットワークデータとしては
世界最大規模のデータ量

  国立遺伝学研究所(所長:小原 雄治/以下、遺伝研)と株式会社日立製作所(執行役社長:古川 一夫/以下、日立)は、遺伝子の発現を調節するタンパク質(転写調節因子)に関する日立の解析データ「ヒト転写調節に関わるタンパク質間相互作用データ」を、遺伝研が運営するゲノムネットワークプラットフォーム*1(http://genomenetwork.nig.ac.jp/)を通じて一般公開しました。本日までにゲノムネットワークプラットフォームで公開した日立の解析データは1,414件に達しており、実験によって得られたヒト転写調節因子に関するネットワークデータとしては、世界最大規模の公開データとなります。
  転写調節因子群は、遺伝子の発現を調節することにより生命機能調節の中心的役割を果たす タンパク質群で、各種疾患にも関係しているとされています。今回公開した日立の解析データには、タンパク質の相互作用に関する情報だけでなく、タンパク質が相互作用している領域に関する情報も含まれていることが特長で、この情報をもとに、タンパク質の相互作用を阻害または促進する機能を持つ医薬品の開発が可能です。特に今回の解析データには、乳がんや前立腺がんに関わる性ホルモンの信号伝達を担う核内受容体ネットワークについての情報が豊富に含まれており、これらの疾患に対応する医薬品開発への応用が期待されます。また遺伝研では、今回公開した日立の解析データと、すでに公開されている他のタンパク質の相互作用データを統合させたデータベースの構築も行っており、ゲノムネットワークプラットフォームは、転写調節因子だけでなく一般のヒトタンパク質の相互作用に関するデータベースとしても世界最大規模となっています。
  今回公開した日立の解析データは、独立行政法人理化学研究所や遺伝研を中核機関として、文部科学省が推進している「ゲノムネットワークプロジェクト」の一環で行った取り組みの成果です。

*1
ゲノムネットワークプラットフォームは、ゲノムネットワークプロジェクトの参加研究機関による成果を統合しデータベース化した情報プラットフォーム。遺伝研は、プロジェクト参加研究機関が解析した独自のデータを既存の公共データと統合し、広範な情報ツールとして、ゲノムネットワークプラットフォームを構築・運営している。

  ゲノムプロジェクトにより、2003年にヒトの全遺伝子情報の解読が完了し、ゲノム研究は機能解析の時代へと移行しています。このゲノム機能情報を活用し、新しい薬や効果が高くかつ副作用の少ない薬を、論理的・効率的に開発するゲノム創薬も同時に発展してきました。2004年度からは、 文部科学省がゲノムネットワークプロジェクトを開始し、ゲノム機能の網羅的解析データをベースに生命活動を担うゲノムネットワークの全体像を明らかにする研究が進められています。

  ゲノムネットワークプロジェクトでは、ゲノム機能調節の中心的役割を果たす転写調節機構の解明が重点的な研究テーマとなっています。日立は、2004年度より転写調節因子の相互作用ネットワークの解析を開始し、転写調節機能を持つタンパク質群と相互作用する種々のタンパク質群を、高効率な酵母ツーハイブリッドシステム*2を用いて短期間でかつ大量に解析しました。そして、得られたデータをゲノムネットワークコンソーシアムの参加メンバーに提供し、個別生命機能の解明にも貢献して来ました。

*2
酵母ツーハイブリッドシステムは、酵母を用いてタンパク質間の相互作用を検出するシステム。2つの融合(ハイブリッド)タンパク質を発現(コード)する遺伝子を酵母に導入し、酵母が生育するかどうか、または、発色するかどうかなどの簡便な方法により、タンパク質間の相互作用を検出することができる。

  遺伝研のゲノムネットワークプラットフォームを通じて、本日までに一般公開した日立の解析データ数は、1,414件に達しました。ここで得られるタンパク質の相互作用に関する情報は、各種疾患発症の原因となるプロセスの解明につながります。そして、このプロセスを特定することにより、副作用が少ないが効果がある薬のような、理想的な新薬の開発や診断方法の発見が可能になり、創薬・医療分野の発展に貢献すると考えています。
  今回、データを公開した遺伝研のゲノムネットワークプラットフォームは、ゲノムネットワークプロジェクトで解析された新規のデータと、既に公開されているデータを関連付けて掲載されており、本プロジェクトのベースとなる情報基盤となっています。このプラットフォームはプロジェクト参加機関だけでなく、広く一般にも公開されていることから、今回の情報公開は、日本のライフサイエンスの発展に貢献するものであると考えています。

お問い合わせ先

国立遺伝学研究所 生命情報・DDBJ研究センター 遺伝情報分析研究室 [担当:五條堀、池尾]
〒411-8540 静岡県三島市谷田1111
TEL : 055-981-6847 または 6851 (直通)

株式会社日立製作所 中央研究所 企画室 [担当:木下]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ケ窪一丁目280番地
TEL : 042-327-7777 (直通)

以上

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