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2008年6月19日

シリコン・トランジスタ型水素センサの長寿命・高感度化技術を開発

白金とチタンの薄膜積層構造をセンサ部に用いて長寿命化を実現

  株式会社日立製作所(執行役社長:古川 一夫/以下、日立)は、このたび、トランジスタの一種であるSi-MOSFET(シリコン(Si)をベースとする金属−酸化物−半導体電界効果型トランジスタ)の特性を利用した水素センサのセンサ部分(ゲート)に、白金(Pt)とチタン(Ti)の薄膜積層構造を用いた、新しい小型水素センサを開発しました。開発した水素センサは、濃度1000ppm以上の水素を約1秒で検知可能なほか、熱や湿度にも強いという特長があります。また、試作した水素センサを用いた寿命加速試験の結果、3年以上使用できる見通しも得ました。この水素センサは半導体をベースとしていることから、現在普及している半導体製造装置で製造できるなど、量産性にも優れています。
  本技術は、発電の際に二酸化炭素を排出しない、地球に優しいエネルギーとして注目されている水素を、安全に利用するためのキーデバイスになると期待しています。なお、本技術は、独立行政法人新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)の委託を受けて研究開発した成果です。

  石炭や石油などの化石燃料の大量消費に伴う地球温暖化や大気汚染が、地球規模での環境問題となっており、その化石燃料に変わるクリーンなエネルギー源として、水素が注目されています。国内では、2020年に燃料電池自動車が500万台、水素を供給する水素ステーションが3,000ヶ所に達すると、水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術研究開発(World Energy Network)が予測するなど、今後、水素が重要なエネルギー源になることが予想されます。そして、水素エネルギーの普及に伴い、水素ステーションを市街地に建設したり、ガソリンスタンドに併設することが予想されてますが、可燃性の高い水素ガスを安全に利用・管理するための安全対策が必要になります。
  日立は、NEDOの委託を受け、複数のセンサを無線でつなぎ、対象物の計測情報を遠隔地から確認できる「センサネット」を使った水素ガス検知システムを開発してきました。その一環で、水素に反応する性質を持つ「パラジウム(Pd)」を用いたSi-MOSFET型の水素ガスセンサを試作しました。しかしながら、この水素センサは、濃度10%という高濃度の水素を検知するのに60秒程度かかるほか、高濃度の水素に触れると、パラジウムがはがれてしまうなど、実用化に当たっての課題がありました。
  そこで日立は、パラジウムに代わる素材として白金に着目し、Si-MOSFETのゲートに白金とチタンの薄膜積層構造を用いた、Si-MOSFET型の水素センサを開発しました。

  これまでも、水素を検知するセンサ部分に白金を使用した水素センサの研究が進められてきましたが、白金はパラジウムと比べて感度が低く、白金は絶縁膜上では極めてはがれやすいという性質があります。すでに白金と絶縁膜の接着性を高めるために、バリアメタルという接着性のある素材を白金と絶縁膜の間に塗布する方法が開発されていますが、白金とバリアメタルが反応し、水素センサとして動作しないという問題があります。
  そこで、日立は、バリアメタルとしてチタンを採用し、さらに白金の膜構造と製造工程の分析と改良を 重ねることで、このたび、白金をゲートに使用しても高い感度で反応し、かつ白金がはがれにくい特長を持つ、新しいSi-MOSFET型の水素センサを開発しました。
  開発した水素センサは、センサ部の大きさが2.0mm×2.0mmと小型で、トランジスタが動作するしきい値電圧のバラツキが極めて小さく、水素濃度に対して正確に反応する特長があるほか、反応を促進するための加熱が100度程度で済むなど、現在主流のセラミック等を使用したセンサと比べて低温での動作が可能です。このため、消費電力を低くおさえることが可能(100mW)なほか、防爆構造も簡素化できるなど、センサ全体の小型化も可能になります。また、濃度1000ppm以上の水素を約1秒で検知可能で、熱や湿度にも強いという特長もあります。

  新技術の開発により、今回、水素センサの小型化と低消費電力化が実現できましたが、トランジスタの微細化など、要素技術の改良により、さらなる小型化・低消費電力化が可能であると、考えています。これにより、従来、他の方式の水素センサでは実現が難しかった、電池駆動による水素センサのコードレス化、そして複数のセンサを無線でつないだセンサネットの構築、さらには水素自動車などに搭載可能な小型・低消費電力水素センサの実用化につながると期待しています。
  本成果は、2008年6月23日から東京都千代田区で開催される「平成19年度NEDO成果報告シンポジウム」で発表します。

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 中央研究所 企画室 [担当:木下]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ケ窪一丁目280番地
電話 : 042-327-7777(直通)

以上

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