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Hitachi

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2008年6月18日

中容量ガスタービンの熱効率を向上させ、二酸化炭素の排出を削減する
ニッケル基単結晶合金を用いた動翼の実証試験を開始

  株式会社日立製作所(執行役社長:古川 一夫/以下、日立)は、このたび、低コストで、高温でも強度を保ち、酸化しにくいなどの材料特性を有するニッケル基単結晶合金を、五井コーストエナジー株式会社(取締役社長:住谷 吉男)五井発電所のH25ガスタービン*1に搭載し、6月20日から、数万KWクラスの中容量ガスタービンとしては国内ではじめて、実証試験を開始します。開発したニッケル基単結晶合金は、炭素、ホウ素、タングステン、タンタルなどの合金の組成を最適にすることにより、耐熱性、耐酸化性を向上させたもので、さらに、この合金を鋳造して製作した動翼(以下、単結晶動翼)に、セラミックを遮熱材としてコーティングすることで部品基材の温度を低下させ、耐久性、信頼性の向上を実現しています。この単結晶動翼を数万KWクラスの中容量ガスタービンに用いることにより、熱効率を大幅に向上させることが可能となり、二酸化炭素(以下、CO2)の排出量削減が期待できます。
  なお、実証試験は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(理事長:村田 成二/以下、NEDO)との共同研究「エネルギー使用合理化技術戦略的開発」により実施するものです。

  近年、地球温暖化についての社会的な関心の高まりにより、CO2排出を削減するための技術開発が世界的に大きな課題となっています。日立は化石燃料の使用を抑制する高効率ガスタービンの開発を目的に、超高温に耐えられる単結晶合金の開発を行ってきました。単結晶合金は、普通鋳造合金と比較し、高温でも強度を保ち、酸化しにくいなどの優れた特性を有した材料で、航空機用ジェットエンジンの動翼材として既に数多く利用されています。近年、燃焼ガス温度の上昇による熱効率向上のため、大容量クラスの最新機種では、単結晶合金を用いた単結晶動翼が使用され始めていますが、単結晶動翼は、航空機用ジェットエンジンの動翼より大型で複雑な冷却構造のため、鋳造時に単結晶動翼特有の欠陥が発生しやすく、製造コストが高くなることが課題でした。

  このような背景から日立は、単結晶材の合金の組成に着目し、タングステン、タンタルなどの組成を最適にすることで素材コストを低減しました。さらに、単結晶翼特有の欠陥に対する強度を向上させることで、動翼の生産性を普通鋳造材と同等まで高め、さらなるコスト削減を実現しました。
  また、開発合金で鋳造した単結晶翼に表面処理(遮熱セラミックコーティング*2)を施工し、超高温環境下での長寿命、信頼性向上を図りました。開発した単結晶動翼は、自家発電設備による2年間のフィールド試験により単独動翼としての信頼性評価を経て、このたび、NEDOと共同で五井発電所H25ガスタービンに実機搭載し、実証試験を開始します。

  実証試験ではH25ガスタービンにおいて、最も高温にさらされる初段に単結晶動翼を全数搭載し、冷却空気量を通常の約70%にすることで、燃焼温度を上昇させた環境と同等での試験を行います。実機運転環境下での試験を行うことで、動翼の腐食、割れなどの長期信頼性の確認や動翼寿命のライフサイクルコストを検証します。また、熱効率は、商用機として稼動していたH25ガスタービンの運転実績と、実証試験での運転実績を比較することで熱効率0.5%**3の向上を検証します。

  高効率ガスタービンの実用化は、CO2排出量を抑制する手段の一つです。今後、日立はガスタービンや、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせたコンバインド発電プラントをはじめとするエネルギー分野に、本技術を用いることで、高効率発電による低炭素社会の実現をめざします。

  日立は、地球環境への負荷を低減する新しい技術の開発や、その実用化に向けた取り組みを推進していきます。

*1
H25ガスタービン : 日立製のガスタービンで出力は2.93万KW。
*2
遮熱セラミックコーティング : 部品表面に低熱伝導率のセラミックをコーティングすることで、部品基材の温度を低下させる技術。
*3
商用機H25ガスタービンと比較して、CO2約700t/年の削減に相当。

[画像]左:単結晶動翼外観、右:H25ガスタービンに搭載した実証試験動翼

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 日立研究所 企画室 [担当:鈴木]
〒319-1292 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号
TEL : 0294-52-7508 (直通)

以上

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