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2008年6月5日

ホワイトカラー社員の生産性向上をサポートする
新しい分析・評価技術を開発

実証実験により、ビジネス顕微鏡と行動観察技術による業務実態把握の有効性を確認

  株式会社日立製作所(執行役社長:古川 一夫/以下、日立)は、大阪ガス株式会社(取締役社長:尾崎 裕/以下、大阪ガス)と共同で、ホワイトカラー社員の生産性向上をサポートすることを目的とした新しい分析・評価技術を開発し、その有効性を確認するための実証実験を大阪ガスの本社で行いました。この新しい分析・評価技術は、日立の開発した組織活動可視化システム「ビジネス顕微鏡」*1(図1)と大阪ガスの推進する人間工学にもとづく行動観察技術*2を組み合わせたもので、実証実験の結果、これまで定量的に把握することが困難であったホワイトカラー社員の業務中の活動状況や組織内のコミュニケーションの実態を明らかにするとともに、フリーアドレス型オフィスの効果等を実証し、両社の取り組みが、ホワイトカラー社員の生産性分析、改善に有効であることを確認しました。

[画像]図1.名札型センサネット端末

*1
ビジネス顕微鏡 : 赤外線センサや加速度センサを内蔵した名札型センサネット端末を用い、これを身につけた社員同士の対面時間や動作を測定、データを蓄積し、可視化する技術。
*2
行動観察技術 : 調査対象の日常の行動を観察し、人間工学や環境心理学、しぐさ・表情分析などの知見を用いて行動データを分析することで、潜在的な問題点を顕在化させ、改善する技術。

  今日、専門的な知識に基づいて非定型な業務を行う知識労働者、特にホワイトカラー社員の生産性を向上させることが大きな課題となっています。しかしながら、ホワイトカラー業務は、その効率等を計るには、業務の流れや実態が見えにくいという問題がありました。また、ホワイトカラー業務の実態把握を行うためには、ホワイトカラー社員へのアンケートやヒアリング等の方法が一般的に採用されてきましたが、被調査者の主観による部分が大きいため、結果の信頼性に課題がありました。
  このような背景のもと、日立ではホワイトカラーの生産性向上手法の構築をめざし、センサ技術を用いて、社員のコミュニケーション頻度や活動状況を測定できる「ビジネス顕微鏡」を開発し、自社内で実証試験を行ってきました。また、大阪ガスグループでは、人間工学や環境心理学の知見を用いた独自の行動観察技術を確立し、店舗設計などの観察・調査受託業務を推進しており、新たに、ホワイトカラーの生産性分析への応用を検討していました。

  今回、両社が得意とするセンサ技術、行動観察技術を用いて、ホワイトカラー社員の業務活動の実態把握を目的とした実証実験を大阪ガス本社で行いました。実験の結果、社員に固定席を割り当てずに共有席を設け、空いている席を使って仕事をするフリーアドレス型オフィスでは、固定席型オフィスに比べ、上司とのコミュニケーションが2倍になることやコミュニケーションの範囲が組織を越えて拡大することが明らかになりました。また、社員が同一作業を継続的に集中して仕事を行っている時間とそれを妨げる要因など、業務活動の実態が明らかになりました。さらに、得られた評価結果をもとに生産性向上施策の立案、実施を行い、今回の実証実験がホワイトカラー業務の生産性分析や改善に有効であることが確認できました。
  今後、両社はさらに技術を集積し、一般企業へのホワイトカラー業務の分析や改善のためのコンサルティングサービスを、連携して提供していく予定です。
  2007年7月から10月の4ヶ月間、大阪ガス本社で行った実証実験の概況と改善施策は、以下の通りです。

実証実験の方法

  1. 行動観察技術を用いた実証実験:大阪ガス本社内の複数のオフィスに設置したビデオカメラの録画映像や予定表から、ホワイトカラー社員の時間の使い方や会議運営等の定量分析や、固定席型オフィスとフリーアドレス型オフィスの比較検証等を実施しました。
  2. 「ビジネス顕微鏡」を用いた実証実験 : 大阪ガス情報通信部員(30名)が装着した名札型センサネット端末で収集したデータをもとに、組織内コミュニケーションの実態や組織内ネットワーク構造を分析しました。

実証実験結果とその後の改善施策

(1) ホワイトカラー社員の時間の使い方における問題点とその改善施策

  行動観察技術による分析の結果、ある組織では会議のダブルブッキングが多く(週あたり4.4時間/人)、そのため会議の参加率が低い(出席率41%)など、会議運営に問題があることが明らかになりました。また、ホワイトカラー社員一人ひとりが同一作業を継続して取り組むことができる時間を計測したところ、電話などの突発的な仕事の割り込みによって、その時間が平均4分未満と短時間であることがわかりました(図2)。そのほか、「ビジネス顕微鏡」を用いて、自ら積極的にコミュニケーションしている時間と継続して作業に集中している時間を可視化することによって、時間の使い方に対する意識を高め、その改善に役立てられることがわかりました(図3)。
  これらの結果をもとに、大阪ガスでは、会議時間の制限や、参加人数を最小限にするなど、会議運営の改善を実施しました。また、組織内で一定時間、電話や会話を禁止する「集中タイム」制度や他人に妨げられず業務ができる「集中ルーム」を設置しました。

[画像]図2.ある組織における同一作業継続時間のヒストグラム

[画像]図3.ビジネス顕微鏡による時間の使い方の可視化例

  対面コミュニケーションしている時間(積極的:赤色、受動的:緑)と、継続して作業に集中している時間(青色)の、約1か月分の可視化例。積極的な対面(赤色)が多いが、集中時間(青色)があまり取れていない様子が分かる。

(2) フリーアドレス型オフィスの効果検証と改善施策

  行動観察により、フリーアドレス型オフィスでは固定席型オフィスに比べて、上司との対面コミュニケーションを行っている回数および時間が2倍になることが明らかになりました。フリーアドレス型の場合、近くに座る上司と気軽に日常会話や業務上の打ち合せができるため、コミュニケーション頻度が高くなるのに対し、上司と部下の座席が離れている固定席型の場合、上司が必要に応じて部下を呼ぶ形のコミュニケーションが主流であるため、コミュニケーションの頻度が低くなることがわかりました。また、「ビジネス顕微鏡」を用いてメンバ間の対面してコミュニケーションを行う実態を測定し、「組織地形図」*3を用いて解析を行った結果、フリーアドレス型では異なる2つのチーム間で垣根を越えた情報交換が行われているのに対し、固定席型では、コミュニケーションがチーム内に限定されるとともに、その頻度も少ないことが明らかになりました(図4)。
  これらの有効性をもとに、大阪ガスでは、フリーアドレス型オフィスを増やす施策を採用しました。

[画像]図4.ビジネス顕微鏡によるフリーアドレス型と固定席型オフィスにおける社員の対面コミュニケーション測定結果例(組織地形図)

  赤外線センサを用いて対面コミュニケーションを測定した結果、フリーアドレス型の場合(右側ピンク色の円部分)、2チームのメンバが混在した形で組織地形図が形成されているのに対し、固定席型(左側緑色円部分)ではコミュニケーションがチーム内に限定され、その頻度も少ないことがわかる。

*3
地形組織図:赤外線センサによるデータをもとに社員間の対面頻度をもとめ、社員同士の相互影響の度合いを地形図上に表示するもの。組織全体を島の形状で表現し、活発に他の社員とコミュニケーションを行っている社員に対応して、地形図の内側に突き出した岬が形成される。メンバ間の対面頻度に基づき、つながりの強い人同士が集まって山を造り、等高線で表現される

(3) 情報の流れの検証と対策

  「ビジネス顕微鏡」により、組織内で情報が伝達される組織ネットワーク構造を分析したところ、部長から発信された情報が、2ステップ(介在人が1名)で約8割の部員に伝達されていることがわかりました*4。さらに、メンバ内で情報伝達のハブとなっている度合い(媒介度)を分析したところ、3人のキーパーソンが存在し、この3人に情報を集めることによって短時間で情報伝達が徹底できる組織であることが明らかになりました。

*4
人伝えによって情報が伝達される場合、間に人が入る毎に影響力が急速に低下するが、2ステップまでは大きな影響がある。

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 中央研究所 企画室 [担当:木下]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地
TEL : 042-327-7777 (直通)

以上

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