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Hitachi

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2008年2月29日
株式会社日立製作所
Opnext, Inc.

次世代高速光通信(100ギガビットイーサネット)向け
非冷却半導体レーザを開発

伝送速度25ギガビット/秒(1波長)で12kmの光ファイバー伝送に、世界で初めて*1成功

  株式会社日立製作所(執行役社長:古川 一夫/以下、日立)とOpnext, Inc.(CEO:Harry Bosco/以下、オプネクスト)は、このたび、次世代高速光通信規格である100ギガビットイーサネット(10km伝送)を実現する技術として、0℃〜85℃での動作が可能であるなど、温度調節が不要な新しい半導体レーザを開発しました。この非冷却半導体レーザは、1.3µm帯の中の4つの異なる波長を発振させるもので、温度調節をすることなく、1波長あたり25ギガビット/秒で動作できる光変調器集積型レーザです。開発した非冷却半導体レーザ光源を用いて実証実験を行ったところ、伝送速度25ギガビット/秒(1波長)で12kmの光ファイバー伝送に、世界で初めて*1成功しました。
  非冷却半導体レーザは、次世代の高速光通信規格として期待されている100ギガビットイーサネット向け光送受信機を、低コストで実現するためのキーデバイスであり、IT社会のさらなる発展に向けて、光通信機器の低コスト化および大容量化に貢献できるものです。

*1
2008年2月27日時点、非冷却半導体レーザを使った1.3µm帯での伝送として。日立調べ。

  近年の高速インターネット接続サービスの普及は、動画配信などの新たなサービスを生み出し、こうしたサービスの拡大が通信環境のさらなる高速化を促すことによって、通信容量は1年半ごとに2倍の速度で増加すると言われています。これは、5年で10倍、さらには10年で100倍に増加するペースです。このような通信容量の増加に対応し、IT社会をさらに発展させるためには、高速で大容量のデータ伝送が可能な光ファイバーネットワークを拡充することが不可欠です。
  そのため、IEEE標準化委員会では、次世代の高速通信規格として、100ギガビットイーサネットの策定が進められています。これは、インターネットに代表されるイーサネット形式の通信規格において、従来の最高速度であった通信速度10ギガビット/秒を、10倍の100ギガビット/秒にする試みです。この100ギガビットイーサネット用光送受信機を低コストに実現する方法として、1.3µm帯の波長の異なる4つの半導体レーザを、25ギガビット/秒で動作させ、この4つの波長を同時に伝送する、波長多重(Wavelength Division Multiplexing/以下、WDM)方式が最も有効であると、注目されています。そして、WDM方式の中でも、CWDM(Coarse WDM:低密度波長分割多重)方式が、最も低コスト化しやすいと期待されています。これは、CWDM方式で使用する波長は波長と波長の間隔が広いため、半導体レーザの波長制御が行いやすいことや、ある程度の波長変化を許容できることから、半導体レーザの波長を一定にするための温度制御が不要になるためです。この方式を実現する鍵の一つが、1.3µm帯の1波長当たり25ギガビット/秒のWDM光源の実現であると考えられています。

  このたび、日立とオプネクストは、このWDM方式に適した波長で発振する非冷却半導体レーザを開発し、25ギガビットの高速動作と12kmの光ファイバー伝送を実証しました。
  今回試作した非冷却半導体レーザ光源の特長は、以下の通りです。

  • (1) 低コスト化に適した4波長でのレーザ発振を実現
  •   半導体レーザは、一般に温度によって発振波長が変化することから、波長と波長の間隔が狭いと、光信号が混信してしまうため、一定の温度で動作するよう、温度調整を行う必要があります。今回開発した非冷却半導体レーザは、それぞれ1290nm、1310nm、1330nm、1350nmの4波長で発振します。波長と波長の間に20nmの間隔があるため、温度が変化しても光信号の混信が少なく、温度調整が不要です。このため、温度制御用の機構と電力が削除でき、光送受信機の低コスト化を可能にします。

  • (2) EA変調器集積型半導体レーザによる25ギガビット/秒の高速動作
  •   EA(Electro-absorption:電界吸収型)変調器は外部変調器の一種であり、レーザ光強度を直接変調する直接変調方式に対して、信号波形の劣化が少なく、高速・長距離の光ファイバー伝送が可能となります。日立とオプネクストは、従来から、このEA変調器と半導体レーザを一体化して集積した変調器集積型半導体レーザの開発に取り組んでおり、40ギガビット/秒の高速伝送が可能な製品を開発しています。しかしながら、既製品の動作波長は1550nm帯に限られていたため、本研究では1波長当たり25ギガビット/秒の高速動作が可能な変調器構造を維持しつつ、EA変調器および半導体レーザそれぞれの材料および組成比を変更し、1290nm〜1350nmの波長で動作できるようにしました。

  • (3) EA変調器に広い温度範囲で動作可能なInGaAlAs材料を使用
  •   従来の変調器集積型半導体レーザでは、直接変調方式に比べて高速・長距離伝送が可能になる一方、正常動作できる温度範囲が±5℃程度と、非常に狭いという問題がありました。これは、EA変調器の光吸収波長が温度変化に対して大きく変動してしまうためです。今回開発した半導体レーザ光源では、EA変調器の材料に温度耐性の高いInGaAlAs(インジウム・ガリウム・アルミニウム・ヒ素)を用いることで、正常に動作できる温度範囲を拡大できました。

  本研究で開発した非冷却半導体レーザ光源を用いた実証実験を行ったところ、0℃〜85℃の広い温度範囲において、伝送速度25ギガビット/秒で12kmの光ファイバー伝送に、世界で初めて成功しました。波長間隔20nmのWDM方式に対応した非冷却半導体レーザ光源により、25ギガビット/秒で10km超の光ファイバー伝送を実現したのは、今回初めての実証となります。本研究の成果は、100ギガビットイーサネット向け光送受信機の低コスト化に貢献できるものです。

  本技術は、2月25日から28日まで、米国・サンディエゴで開催されている、光ファイバー通信会議「OFC(Optical Fiber Communication Conference)2008)にて日立およびオプネクストの子会社である日本オプネクスト株式会社(取締役社長:沖 啓)との共同で、ポストデッドラインペーパーとして発表しました。

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 中央研究所 企画室 [担当:木下]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地
TEL : 042-327-7777(直通)

日本オプネクスト株式会社 マーケティング本部プロダクトマーケティング部 [担当:江良]
〒244-8567 神奈川県横浜市戸塚区戸塚町216番地
TEL : 045-865-7000

以上

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