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Hitachi

田口 謙太郎
課題に応じたソリューションを見極め
最適解へと導くコンシェルジュとして。

株式会社 日立製作所
インダストリアルデジタルビジネスユニット
トータルシームレスソリューション統括本部
技術戦略本部

デジタルエンジニア田口 謙太郎

日立の最適化ソリューションを支えるエキスパートを紹介するインタビューシリーズ。今回は、生産技術研究所に入社以来、一貫してSCM(サプライチェーンマネジメント)に関わる業務に携わってきた田口謙太郎に話を聞きました。在庫シミュレーターの開発、アパレル企業との共同研究と事業の立ち上げ、現在取りまとめ役を務めている最適化CoE活動などについて語ってもらいました。

※ CoE:
Center of Excellence

Q1 これまでの経歴を教えてください

大学での専攻は機械工学でした。エンドミルという工作機械の形状をマイクロメートル単位で計測し、物を正確に削れるようにするための研究をしていました。その後、一つの装置の制御だけでなく、工場やサプライチェーンといった全体系の制御にも興味が湧き、そうした研究を追求できる場所として日立の生産技術研究所に入りました。日立は多様な分野のモノづくりをしているので、さまざまな製品を対象とした生産システムやサプライチェーンに関われそうだという点にも魅力を感じていました。入社後は、日立グループ内事業の生産システム改革やSCM改革のプロジェクトに参画。業務改革やシステム構築において、特に在庫シミュレーション技術を活用したシステムの開発に従事しました。現在は、これまで日立グループ内に適用してきた数多くの技術や知見を生かして、サプライチェーン最適化サービスの日立グループ外のお客さまへのご紹介や適用を進めています。

Q2 最適化のどのような業務を担当していますか

日立全体の計画最適化ソリューションを統合するために2020年に立ち上げた最適化CoE活動を取りまとめる役を務めています。日立では、お客さまの業種や業務課題に応じて、独自技術や先進技術を活用したさまざまな最適化ソリューションを開発してきました。それらを整理、統合することで、それぞれの技術の違いやどういった課題に向いているのかなどを、お客さまはもちろん日立内もより理解しやすくするのがCoE活動の趣旨です。私自身は、お客さまの課題に対して、なるべく広い視野から技術やソリューションを選び、最適解へと導くコンシェルジュのような立場だと思っています。

田口 謙太郎

Q3 ターニングポイントとなった案件は

研究者として日立の複数事業部のSCM改革プロジェクトに関わる中で、共通の課題としてあるのが在庫削減で、その解決のために在庫シミュレーターを開発しました。その後、日立グループ内への適用を進めるとともに、機能をより拡張・汎用化して製品化に取り組んでいたとき、大手アパレル企業のお客さまが在庫シミュレーターを用いたPSI最適化に興味を持たれ、共同研究を始めました。それまでの実績は主に製造業向けで流通業への適用は初めてだったこともあり、共同研究を始めてみると従来型のプロジェクトの進め方ではまったく当てはまらないことが分かりました。コストや時間の面でより柔軟なアプローチが必要でしたが、共同研究でPoCを進めていくと、大きな経営効果が見込めることが実証され、案件化に至りました。このときの苦労や経験がその後のサプライチェーン最適化サービスの事業化、他の業種や業界への拡販へとつながっています。

※ PSI:
Production(生産)、Sales(販売計画)、Inventory(在庫)の頭文字を取ったもの。

Q4 「最適化の最適化」のために今取り組んでいることは

日立の最適化ソリューションには、いろいろな業務課題や業種向けに開発されてきたソリューションがあります。在庫シミュレーターもその一つですし、混合整数計画法など数理最適化の他に、AIを活用した生産計画、CMOSアニーリングのような先進的な最適化技術もあります。ただ、そうしたソリューションが社内の営業やSE、お客さまから見て分かりやすく整理できていないという課題がありました。そこで立ち上げられたのが、最適化CoE活動です。その活動の中で、案件対応の際の組織の壁を無くすとか、個別に作成されていた提案資料を統合するなどの取り組みを進めていて、このWebサイトも日立の最適化ソリューションの発信源を一つにまとめるという目的で立ち上げました。日立にはどういう技術やソリューションがあって、どういった課題に適しているのか、社内の営業やSEにも、お客さまにも、より理解をしていただけるように、これからも活動を進めていかなければと考えています。

田口 謙太郎

Q5 最適化における日立の強みはなんでしょう

私たちの強みは、「ナレッジ」「技術」「人財」の3つだと考えています。「ナレッジ」については、これまでいろいろなお客さまのいろいろな業務に適用して喜んでいただいている実績があることと、お客さまの課題に対してどのソリューションが適しているのか検討するCoEという場と議論のベースとなるノウハウが蓄積されていることです。「人財」については、そうした経験豊富なコンサルタントやデジタルエンジニアと研究所の技術者が一体となってお客さまに対応する体制が整っていることです。また、「技術」に関しては、幅広いソリューションの中からお客さまの課題にフィットする技術を選んで対応できることが強みですし、商用ソルバーを活用するだけでなく、自社独自技術を使ってモデル開発することも行っています。

Q6 最適化を通じてやっていきたいことは

直近では、日立の最適化ソリューションの認知度を上げて、より多くのお客さまに適用して喜んでいただきたいという願いがあります。その先を見据えた話になると、一企業のサプライチェーンだけでなく、川上から川下のパートナーまでを連携させることによって、より効率的なオペレーションを実現させるためにお客さまと協創し、研究開発グループなどと連携した技術開発も進めていきたいと考えています。さらには、そうした複数のサプライチェーンのデータを連携させることで、例えば食品業界全体といったように一つの業界の競合他社までを含めた全体最適化を、社会全体の課題解決への貢献までも視野に入れて取り組んでいきたいと考えています。

プロフィール

経歴

1997年 生産技術研究所入社
以降、日立グループ内事業の生産システム改革PJやSCM改革PJに参画。業務改革やSCMシステム構築において、特にシミュレーション技術を活用したシステム開発に従事
2017年より現職、サプライチェーンシミュレーターを活用した「サプライチェーン最適化サービス」の立ち上げおよびシステム導入に従事
2020年より日立の計画最適化ソリューションを統合する最適化CoE活動立ち上げ、現在運営中

日本機械学会員

担当業務(得意)領域

  • SCM分野における業務改革・データ分析・構想策定・要件定義・アルゴリズム開発。特にサプライチェーンシミュレーションの研究開発・事業適用が専門(入社以来20年以上)

これまでの主な実績

  • モーター生産システム改革:製造ライン分析
  • PCのSCM改革:販売連携システム、需給調整システム、在庫シミュレーター開発
  • ストレージSCM改革:需給調整システム、逆展開システム、在庫シミュレーター、損益シミュレーター、調達連携システム、3社合併の経営情報システム開発
  • Stanford University、Visiting Associate Researcher、Design for X:サプライチェーン考慮型設計の研究
  • 半導体SCM改革:販売予測システム開発
  • 全社CCC活動:医療機器、産業機器、ATM事業などへの在庫シミュレーター適用
  • サプライチェーンシミュレーター(SCO)の製品化
  • 大手アパレルと在庫最適化の共同研究
  • 大手アパレルへのサプライチェーン最適化サービスを適用
  • 家電メーカーへのサプライチェーン最適化サービスを適用

【社外表彰】

  • 電気学会 優秀論文発表賞(2002)

講演実績やメディア掲載実績

【学会発表】

  • 製品型式毎の需要量と部材制約を用いて最適プロダクトミックスを算出する需給調整システム、電気学会、第5回情報システム研究会 (2001)

計画最適化ソリューションに関するお問い合わせ