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テクノトーク


中村 道治
Michiharu Nakamura
執行役専務・研究開発本部長
理学博士



角田 義人
Yoshito Tsunoda
執行役常務・都市開発システムグループ
グループ長&CEO
理学博士



高橋 直也
Naoya Takahashi
情報・通信グループCOO



猪俣 博
Hiroshi Inomata
株式会社日立メディコ
代表執行役・執行役社長



長谷川 泰二
Taiji Hasegawa
執行役・
オートモティブシステムグループ
グループ長&CEO



日立ビルソリューションラボ
本文ここから

未来を開く事業で,
いっそう便利で快適な社会へ

日立グループの新たな事業への取り組み

 日立製作所は,コーポレートステートメントとして“Inspire the Next”を掲げ,常に次の時代へ目を向けた新たな挑戦を続けている。2003年4月からは新しい中期経営計画「i.e.HITACHIプランII」をスタートさせ,豊富な経験と技術を持つ社会インフラと情報システムを融合させた「新時代のライフラインを支えるソリューション」と,世界の市場で競争力を持つ「高度技術グローバル製品」を事業の柱として注力してきた。そして,現在,これらの事業や研究開発を通じて次なる市場のニーズを掘り起こし,新事業を創出することで,顧客の「ベスト・ソリューション・パートナー」として,便利で快適な社会の実現を目指している。この「i.e.HI TACHIプランII」の中でも主要事業分野として位置づけられる「SAN/NASストレージソリューション」,「都市再生」,「バイオ・メディカル」,「オートモティブシステム」を代表する4名のキーパーソンと,中村道治研究開発本部長が,それぞれの事業分野の展望と,新たな研究体制,新たな事業創出のあり方について語り合った。


新たなニーズに技術でこたえ,日本再生への確かな一歩を記す年に

中村 今,さまざまな分野で大きな変革が求められているわが国において,日立製作所は,社会に変革をもたらし,発展に貢献できるような技術や製品の開発,新たな事業の創出に取り組んでいます。2003年4月に新たな中期経営計画「i.e.HITACHIプランII」をスタートさせ,時代の動向をとらえた事業を展開してきました。この中の主要事業分野である「SAN/NASストレージソリューション」,「都市再生」,「バイオ・メディカル」,「オートモティブシステム」を代表する皆さんに,まずは2004年の展望についてお聞きします。

高橋 きたるユビキタス情報社会では,いつでも,どこでも,だれもが情報に安心してアクセスできるようになります。この「安心」という重要なポイントを支えるデータ自体やネットワークの信頼性に関連する技術が,本年はさらに進化していくと予想されます。教育の現場でも,さまざまな改革が進められていますが,例えば大学では,講義をデジタル画像で記録しておき,遠隔地の学生もインターネットから見られるようにする試みも動き始めています。

角田 都市開発システムグループは2003年4月に発足し,安心して快適に生活できる街づくりに取り組んでいます。都市開発に関連する個々の要素技術はたくさんありますが,それらを組み合わせたソリューションが,今までは乏しかったと思います。今回,私たちが総合力を生かしてソリューションを提供するという宣言をしたことで,各方面からも注目されています。少子高齢化や産業構造の変化から,都市の再構築が求められている今,早期に本格的な都市開発ビジネスを展開していきたいと考えています。

猪俣 21世紀は「生命の世紀」となり,ひとりひとりが人間らしく生きていける社会が実現すると,期待を込めて言われています。そのために,最も大切なのは健康であり,QoL(Quality of Life)の確保に主眼を置いた新しい医療が,周辺技術の進歩とその活用によって徐々に実現し始めました。例えば,人間の遺伝子配列の解析が世界計画よりも2 年早く完了できたことで,それを活用するビジョンも見え始めているなど,これまで描かれてきた健康に関する予想図が,どんどん現実化していくでしょう。

長谷川 自動車は,私たちに大きな利便性をもたらしている半面,環境への影響や安全対策など,解決すべき課題も抱えています。それらに対応していくため,環境負荷の軽減や,安全な走行をサポートする技術の開発が進められています。例えば環境面では,各社が一斉にハイブリッド自動車の開発に乗り出し始めました。また,ITS(Intelligent Transport Systems)の実現に向けて,官民一体となった取り組みも始まっています。本年は,こうした次世代の自動車や交通システムのための技術革新元年と位置づけられるでしょう。

中村 社会の変化に伴って顕在化してきた新しいニーズに,技術の進展によってこたえ,さらに豊かな社会を実現していこうというシナリオが,2004年には実際の姿として現れ始めそうです。日本再生に向けて,力強い,エポックメーキングな年になると期待できますね。


生活の安心を支える,医療と都市開発のビジョン

中村 それでは,2004年以降も見据えた,皆さんの事業展開における夢や抱負をお聞かせください。

猪俣 今,医療分野では,「新しい価値の創造」,「患者さんにとっての価値」,「社会的価値」という三つの大きな価値観の変化が起きています。まず,医療画像では,今まで形態の変化を画像化してきましたが,次は分子レベルで生じる生体作用の差を画像化する「分子イメージング」が注目されています。また,画像診断装置を治療に結び付けることで,新しい価値が生じています。例えば,私どもが世界に先駆けて製品化したオープンタイプMRI (磁気共鳴画像撮影)装置により,手術中にも患部の画像を確認できるインテリジェント手術室が可能になりました。これを共同開発した東京女子医科大学では,約3年間で186例の脳しゅよう手術のうち,40%の手術で全摘出に成功しています。
 次に,患者さんにとっての価値の追求です。私どもは,「ペイシェントフレンドリー」というスローガンの下で,技術面・性能面の向上だけでなく,患者さんへの負担を軽減することを重視した検査装置の開発を推進しています。
 そして,医療費のむだを抑えつつ,必要な人が必要なレベルの治療を受けられる医療の仕組みを実現する「地域医療構想」の具体化が求められています。そのための情報共有を可能にする仕組みとして,電子カルテシステムをはじめとする医療情報システムの普及が急がれています。
 日立グループは,この三つの価値の変化を横糸とし,再生医療,遺伝子医療,超早期診断,低侵襲手術・治療,安全と効率化のためのITシステムの五つを縦糸としたビジョンの下で,医療現場とともに開発を進める「医工融合」によって最先端の技術をいち早く実用化し,少子高齢化社会の中で要求される医療の実現を目指しています。
 特に,バイオ技術の進歩に伴い,究極の治療である再生医療が注目を集める中で,私どもは,歯胚(しはい)再生,すなわち第3の歯の実現を目指しています。2003年6月には,東京大学,大阪大学,名古屋大学,新潟大学,徳島大学,神奈川歯科大学の先生方に歯胚再生を目指す学のコンソーシアムを結成していただき,これまでとは少し異なる形での産学連携による研究開発がスタートしました。このような広い連携が,今後,最先端技術の実用化のスピードを上げていくうえで大切なポイントになると考えています。

角田 技術をどう生かしていくかは,都市開発においても大きなテーマです。都市開発システムグループは,スタート以来,事業の基盤固めを進めながら,都市開発のための「ソリューションメニュー」を蓄積してきました。今後はそれを,海外展開も含めた具体的な事業として立ち上げていきたいと考えています。目指しているのは,人々が快適に安心して住め,人が大勢集まり,活気あふれる「千客万来の街」です。
 都市開発ソリューション事業の根幹は,社会生活における不安を都市の立場からどう除いていくかです。そのための核となる技術は,セキュリティとエネルギーです。セキュリティは,対象を建物単位から病院や大学の敷地内といったエリア単位へ拡大し,サイバーとフィジカルの両面から支えていきます。エネルギーに関しては,工場などの大規模産業用施設だけでなく,一般家庭なども対象にした,居住環境の快適さと全体的なエネルギー消費の抑制を両立するシステムを実用化していかなければなりません。
 これらの事業で日立製作所がリードしていくには,ビジョンだけでなく,コアとなる技術が不可欠です。都市開発は日立グループの技術総合力が特に発揮できる分野であり,本格的な事業化には,現在,グループ内で研究開発を進めているさまざまな関連技術を,さらに発展させてもらうことが重要になります。
 また,建物などのハードウェアの部分は,デベロッパーやゼネコンの技術,ノウハウが不可欠な領域であり,外部のパートナーとの連携も大切になります。例えば,共同研究のようなパートナーシップの下で,互いのスキルをうまく組み合わせて新しい都市のコンセプトを提案するなどの取り組みを開始しています。



エンタープライズディスクアレイサブシステム
“SANRISE9900V”

社会インフラとなった情報と自動車のこれから

高橋 ストレージ事業を展望すると,三つのポイントがあげられます。まず,根幹であるハードウェアでは,ユビキタス情報時代を迎えて扱う情報量が飛躍的に伸びていることから,性能がますます問われるようになり,より優れた製品の開発が今後も欠かせません。また,ストレージ容量の増加に伴って,お客様による管理が困難になっているため,ストレージ管理ソフトウェア製品のレベルアップも必要です。
 さらに,災害対策をはじめとする,ストレージのソリューションも求められています。主サイトが災害にあっても影響を受けないように,遠隔地に副サイトを設置することに加え,最近では三つのサイトで万全を期すという動きが増えてきました。そのためには,ストレージ間だけでデータをコピーするなどの高度な技術が必要になりますが,研究所でかねてから力を入れてきたコピー機能に関する技術を活用して,ご要望にこたえています。また,米国政府による電子データの保存義務づけといった法的な動きを受け,米国でのデータ ライフサイクルマネジメントへのニーズも高まっているため,これにこたえるソリューションも早期に提供していきたいと考えています。現在,カリフォルニア州のサンタクララにSAN(Storage Area Network)の研究所を設置し,お客様へのご提案と,それに対応するフィードバックを技術開発とソリューション開発に生かす体制を整えています。
 ストレージの分野は,これまでハードウェアがリードしてきたのですが,これからは安心して使っていただけるハードウェアの開発と同時に,それを管理するソフトウェア,お客様のニーズに合わせたソリューションが欠かせません。「顧客視点」を第一とした総合的な事業展開で,情報という新たな社会インフラを支えていきたいと考えています。

長谷川 私たちも,これまで,自動車機器グループという名前で自動車関連部品の開発・提供を主要事業としてきましたが,日立製作所のコアビジネスの一つとして,部品だけでなく総合的なソリューションも提供していこうと,2003年4月に「オートモティブシステムグループ」と名称を改めました。
 それに伴って事業ポートフォリオ改革を行い,「環境」,「安全・快適」,「情報」のテーマの下で,コア事業を四つの領域に分けました。まず,環境に関する「エンジンマネジメントシステム」では,エンジンに関連した,さまざまな製品・システムを手掛け,いっそうの低燃費化,排気の浄化などにも取り組んでいきます。「エレクトリックパワートレイン」では,ハイブリッドシステム用のモータやインバータ,バッテリなど,私たちの得意技術を存分に発揮して,優れたシステムを提供しています。
 安全・快適に関しては,「走行制御システム」として,ブレーキやステアリングのシステム,最終的には自動運転につながる外界認識走行システムと,そのためのカメラやミリ波レーダなどを開発しています。情報に関連する「車載情報システム」では,カーナビゲーションシステムや,高速・双方向通信が可能な車載情報端末などを開発し,提供しています。また,自動車の中でも,インターネット情報はもとより,さまざまな情報のやり取りができるテレマティクス事業にも取り組んでいます。
 四つの領域それぞれに必要な要素技術が,日立グループ内とパートナー企業でほぼそろいます。これらをトータルパッケージとして提供できるのが,私たちの強みです。時代が変われば,社会的ニーズも変わり,求められる技術も変わります。私たちの得意技術は,気が付いてみれば,21世紀の自動車に必要なコア技術となっていました。それらに磨きをかけ,組み合わせて提供していくことで,自動車社会のいっそうの発展に寄与していきたいと願っています。




インテリジェントオペレーションシステム
(東京女子医科大学との共同開発)




第37回東京モーターショー2003(千葉・幕張メッセ)

ボーダーレスな研究体制で,多様な技術の芽を育てるくふうを

中村 2004年4月には,国立大学が独立行政法人化されます。わが国の教育システムや研究システムを支えている大学が,こうした大きな変革期を迎えた今,企業としても大学との連携のあり方を再考する時期にあるのではないかと思います。
 日立製作所は,さまざまな大学と包括契約の下で多様なテーマを共同研究していこうという動きを広げています。また,個別テーマでも,私どもの研究者を大学で,あるいは大学の先生を日立グループの研究所で受け入れて分室を設けるなど,一歩進んだ,大学と企業の新しい関係づくりに力を入れています。

角田 このような連携が進むと,民間企業の視点からマーケットにとって有望な技術を伸ばすことにつながり,わが国の社会全体の発展にも結び付きます。しかし一方で,マーケットというのはだれにも予測できない部分もあり,埋もれていた技術が突然見直されるような局面もあります。ですから,今のマーケットから見たらむだと思えるような技術を育てていくことも,企業はもちろん,大学にはいっそう求めたいと思います。

中村 管理者が理解できなくて首をかしげるような研究こそが,ほんとうの意味でイノベーションを引き起こすものと,よく言われます。そうした研究を温かく見守ることも,企業としての力の源ではないかと思います。ただ,今のようにグローバルな競争の厳しい時代には,一企業の枠を越えた大きな連携の中で,優れた研究者のアイディアを育てていくことも大切ではないでしょうか。

長谷川 オートモティブシステムグループでは,R&D(Research and Development)部門といっしょに自動車産業のメッカである米国デトロイトで共同で研究開発をしています。日立研究所と機械研究所の研究者も加わり,さまざまな大学や自動車メーカーとの交流で得られた生の声を研究にフィードバックする,欧州から学生をインターンとして受け入れ,いっしょに研究開発を進めるなど,グローバルな研究開発体制を敷いています。

猪俣 経済の領域でボーダーレス化が進んでいるように,近年は組織や技術分野の壁もなくなりつつあります。異なる組織・分野とのコラボレーションの中で目標を実現する,あるいはさまざまな技術を結集してトータルソリューションとして提供することが求められる時代ですね。

長谷川 私たちが最終的な目標としているITSは,正に自動車と都市の情報インフラの完全な融合によって安全で快適な「車社会」を目指すものです。分野を越えた技術とサービスの連携がなければ実現できません。

高橋 ストレージも,単体ではなくネットワークでつなぐ技術が発達してきたことで,可能性が大きく広がりました。ソリューション自体も,これからは情報・都市・健康・自動車などと分野ごとの単体ではなく,互いにつながり合って統合されることでシームレスな社会を実現していく,そんなビジョンを持ちながら提供していくべきだと感じています。

中村 日立製作所が常にお客様や社会から求められているのは,信頼関係に支えられた長期的なコミットメント,つながりです。研究開発でもビジネスでも,これからはボーダーレスな連携ということがキーワードとなるでしょう。世の中の動向を見据えた長期的な技術ビジョンに基づいて,日立グループ内のさまざまな分野で培っている個々のスーパーテクノロジーと,それらを結集できる総合力を発揮しながら,お客様やパートナーと共に新たな価値,新たな時代を開く事業を創造していく。こうした「共創」のプロセスにより,日立グループは,お客様から,そして社会から信頼される存在として,これからも社会の発展に寄与していきたいと考えています。

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