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2012年7月19日
大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 総合地球環境学研究所
国立大学法人長崎大学
株式会社日立製作所

総合地球環境学研究所がラオス人民共和国で進める
「森林環境とマラリア感染の調査」において
「指静脈認証」の活用に向けた実証試験を長崎大学、日立と共同で実施

発展途上国における長期的な住民調査の本人特定の精度向上を実現

  大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 総合地球環境学研究所(所長:立本 成文/以下、 地球研)は、ラオス人民共和国(以下、ラオス)で実施している「エコヘルスプロジェクト*」の1つである「森林環境とマラリア感染の調査」において、現地住民の追跡調査の精度を将来的に向上させることを目的に、国立大学法人 長崎大学(学長:片峰 茂)の熱帯医学研究所(所長:竹内 勤/以下、熱研)ならびに株式会社日立製作所(執行役社長:中西 宏明/以下、日立)と共同で、ラオス南部のサワナケート県セポン郡の住民約3,500人を対象に、生体認証である「指静脈認証」の活用に向けた実証実験を2012年7月19日から8月11日まで行います。

  • * エコヘルスプロジェクト:感染症の原因を、人間の生活とそれを取り囲む環境全体が関連しているととらえ、一体的・横断的に研究する取り組み

  地球研では、ラオスのサワナケート県のセポン郡において、「エコヘルスプロジェクト」の一環として、森林環境によるマラリア媒介蚊の発生と住民のマラリア感染の関連を調査する「森林環境とマラリア感染の調査」を行っています。この調査の中で地球研は、地域住民を登録しその動向を継続的に把握する「健康と人口の動態追跡調査システム」(以下、HDSS:Health and Demographic Surveillance System)をラオス保健省・国立公衆衛生研究所、サワナケート県保健局と共同で運用しています。このHDSSでは、現地住民一人ひとりの名前や住所、婚姻、出生、死亡、移動などの状況を、3ヶ月に一度、各家庭を訪問して聞き取り、それを継続的に行うことで住民の状況変化などに関するデータを把握、蓄積しています。しかし、調査対象地域では、住民一人ひとりが複数の名前や居住地を持つことなどから、長期間の継続した調査に必要な調査時の本人特定が困難な場合があります。そのため、定期調査で得た情報の連結が不確実となり、調査そのものの信頼性をおとすことになりかねません。そこで今回、この問題を大きなコストをかけることなく解決することを目的に、日立が開発した「指静脈認証」技術を活用し、既にケニアにおいて、「指静脈認証」技術をHDSSに応用した実証試験の実績がある熱研と協力し、セポン郡の6歳以上の全住民約3,500人を対象に、実証試験を行います。具体的には、家庭を訪問しての聞き取り調査の際、「指静脈情報」を登録し、それ以降の定期的なマラリア検査や聞き取り調査の際に、「指静脈認証」で本人を特定します。これにより、長期間にわたる追跡調査において本人特定の精度が飛躍的に高まり、調査データの精度の改善につながることを期待しています。

  地球研は、セポン郡で行われる今回の実証試験の成果を「マラリア感染と森林環境の関連に関する調査」に活用していきます。定期調査で行なう血液検査などにより把握されるマラリア感染歴と周囲の森林環境の状況などを組み合わせることにより、セポン郡におけるマラリア感染の経路や発生源の特定、環境変化との関連を解析します。これにより、今後のマラリア発生に関する予測、さらには、感染予防に向けての取り組みや環境改善に向けての提言をめざします。今後、地球研と熱研は、今回の実証試験の成果をふまえ、HDSS実施地区におけるワクチン接種記録やマラリア予防のための蚊帳の提供、病院情報との連結といったさまざまな履歴情報の管理に「指静脈認証」を適用し、疾病予防やその対策を推進することを検討していくほか、ラオスにおける住民情報の充実にも貢献していきます。
  また日立は、すでにグローバルでの利用が拡大している「指静脈認証」のさらなる活用範囲の拡大に向け、製品やサービスの開発を進めていきます。

[左図]ラオス・サワナケート県・セポン郡の位置図、[右画像]セポン郡におけるマラリア調査の風景

「エコヘルス・プロジェクト(熱帯アジアの環境変化と感染症)」の研究について

  感染症の流行形態は、病原体、媒介動物、宿主を取り巻く環境に左右されます。従来の医科学的アプローチでは、普遍的な健康像を目指した比較的短期的な解決が模索されてきました。本プロジェクトでは、人類と感染症を上記3者(病原体、媒介動物、宿主)の生態学的な関連ととらえ、人間の生活と、それを取り囲む環境全体の問題として一体的・分野横断的に記載・分析する「エコヘルス」として、研究を行っています。

健康と人口の動態追跡調査システム(HDSS:Health and Demographic Surveillance System)について

  住民登録や人口の動態(婚姻、出生、死亡、移動)を把握する仕組みのない「地域」において、その「地域」に居住する住民を登録し、その動向を系統的かつ継続的に行う取り組みのことで、「ある限られた地域」を丸ごと観察し、疫学調査や介入研究を行い、その結果を広く一般に還元するものです。現在では、アジアやアフリカをはじめとした途上国の健康・保健情報を安定して提供するための手法として価値が高まっています。

大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 総合地球環境学研究所について

  総合地球環境学研究所は、地球環境学の総合的研究を行う大学共同利用機関として2001年4月に創設されました。「環境問題の根源は、人間文化の問題にある」という哲学に基づき、「人間と自然系の相互作用環」の解明と「未来設計シナリオ」の検証を通して、既存の学問分野の枠組みを超えた総合地球環境学の構築を目的としています。

長崎大学 熱帯医学研究所について

  長崎大学熱帯医学研究所は1942年に長崎大学に設置された東亜風土病研究所を前身とします。1967年に熱帯医学研究所と改称され、アジア、アフリカなど、その研究活動を途上国へと拡大してきました。熱帯地域では、その複雑多様な自然・社会環境が、熱帯病をはじめとする錯綜した健康問題を引き起こし続けています。このような認識に基づき、熱帯病の中でも最も重要な領域を占める感染症を主とした疾病と、これに随伴する健康に関する諸問題を克服することを目指し、関連機関と協力して、熱帯医学及び国際保健における先導的研究と、その研究成果の応用による熱帯病の防圧ならびに健康増進への国際貢献、さらにこうした問題に関わる研究者と専門家の育成を進めています。

「指静脈認証技術」について

  指静脈認証技術は、日立が開発した生体認証技術で、指の静脈パターンで個人を認証するものです。近赤外線を指に透過させて得られる指の静脈パターンの画像から静脈の存在する部分を構造パターンとして検出し、あらかじめ登録した静脈の構造パターンと照合させて個人認証を行う技術です。指静脈は体内にある情報であるため、偽造や成りすましが極めて困難であり高いセキュリティレベルを実現します。日立では、2002年に指静脈認証装置を製品化して以来、ATMの本人認証やPCログイン、入退室管理など、さまざまな分野での適用を広げてきました。

日立指静脈認証装置

他社所有商標に関する表示

  • 記載の法人名、製品名は、それぞれの法人の商標または登録商標です。

研究内容に関するお問い合わせ先

大学共同利用機関法人 人間文化研究機構

総合地球環境学研究所 [担当:門司]
〒603-8047 京都市北区上賀茂本山457-4
TEL : 075-707-2215(ダイヤルイン)

国立大学法人長崎大学

熱帯医学研究所生態疫学分野 [担当:金子、中山]
〒852-8523 長崎県長崎市坂本1-12-4
TEL : 095-819-7866(ダイヤルイン)

株式会社日立製作所

情報・通信システム社 公共システム営業統括本部
カスタマ・リレーションズセンタ [担当:西本、佐々木]
〒136-8632 東京都江東区新砂一丁目6番27号 新砂プラザ

以上

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