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2010年9月8日

マイクロリアクタとマイクロ波の組み合わせによる
高効率なハイブリッド化学プラント技術を開発

電子材料や医薬品における化学合成時間の短縮化と量産化に貢献

  株式会社日立製作所(執行役社長:中西 宏明/以下、日立)は、このたび、効率的に化学反応を起こすことができるデバイスであるマイクロリアクタと、高速に化学反応を起こすことができる電磁波であるマイクロ波を組み合わせ、連続処理を行うことで化学合成の高効率化を実現するハイブリッド化学プラント技術を開発しました。本技術により、電子材料に用いられるナノメートル(10億分の1メートル)サイズの銀ナノ粒子の合成を行ったところ、従来の原料を撹拌(かくはん)させる方式の反応装置に比べて、化学合成時間が約10分の1に短縮されることを確認しました。
  また、マイクロリアクタは、複数個を並列に配置することで処理量を増やせるという特長があるため、マイクロ波処理においても、複数のマイクロ波導波管で均等かつ99%の効率でマイクロ波を伝送し、多量の処理を実現するハイブリッド化学プラント量産対応技術を開発しました。本技術を化学プラントに適用することで、高性能・高機能な電子材料や医薬品などを効率的に量産できることが期待され ます。
  なお、本成果は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(理事長:村田 成二)の助成事業「革新的マイクロ反応場利用部材技術開発/研究開発項目(4)マイクロリアクタ技術、ナノ空孔技術および協奏的反応場技術を利用したプラント技術の開発」(プロジェクトリーダー:長谷部 伸治京都大学教授)の実施により得られたものです。

  マイクロリアクタは、数100µm程度の微細な溝の中で薬液を高速に混合することにより、高効率な化学反応を実現するデバイスです。このマイクロリアクタに、別のエネルギー供給手段を組み合わせることによって、さらに効率の良い革新的な化学反応プロセスを開発し、高性能・高機能な電子材料や医薬品などを開発することが期待されています。日立では、波長が数10cmの電磁波であるマイクロ波を化学反応に利用することで、急速な均一加熱により化学反応の高速化が実現できることに着目し、マイクロリアクタとマイクロ波を組み合わせたハイブリッド化学プラント技術を開発しました。今回開発したハイブリッド化学プラント技術の特長は、以下の通りです。

開発技術の詳細

(1) マイクロリアクタとマイクロ波を組み合わせた連続処理による化学合成時間の短縮化
  2種類の異なる薬液をマイクロリアクタにより高速混合することで効率的に化学反応を得るとともに、その薬液に導波管内でマイクロ波を照射することで化学反応を高速化させ、化学合成時間の短縮化を実現する連続処理型のハイブリッド化学プラント技術を開発しました。また、マイクロリアクタは、扱う薬液の種類に応じて材質と流路形状を決定し、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems:微小電子機械システム)技術を用いて作製しています。一方、マイクロ波の照射部は、扱う薬液の誘電特性に応じて、マイクロ波シミュレーションにより、スタブチューナーと呼ばれるマイクロ波の吸収調整素子の設置位置を最適化しています。これらの2つの技術を組み合わせることで、さまざまな薬液に対応することが可能になりました。
(2) マイクロ波を均等に分岐することで処理量を増やすハイブリッド化学プラント量産対応技術
  マイクロリアクタは、複数個を並列に配置することで処理量を増やせるという特長があります。そこで、マイクロ波処理においても、複数のマイクロ波導波管で均等にマイクロ波を伝送する技術を開発しました。マイクロ波シミュレーションにより複数の導波管に均等にマイクロ波を分岐し、かつ途中でのエネルギー損失の少ない分岐導波管を設計することで、マイクロ波の伝送効率99%を実現しました。この分岐導波管を用いることで、複数の薬液を、それぞれ同時に、均等かつ安定して加熱することが可能になります。水を用いた加熱実験を行ったところ、12トン/年以上に相当する量を加熱処理できることを確認しました。

  今回開発した技術を搭載した試作装置(幅 2400 mm×高さ 2000 mm×奥行き 900 mm)を用いて、電子材料に用いられるナノメートル(10億分の1メートル)サイズの銀ナノ粒子の合成を行ったところ、従来の原料を撹拌(かくはん)させる方式の反応装置に比べて、化学合成時間が約10分の1に短縮され、さらに粒子径のばらつきを表すCv(Coefficient of variation:変動係数)値が約75%から31%となり、粒子径が均一化されることを確認しました。今後、本技術を、化学プラントに適用することで高性能・高機能な電子材料や医薬品などを効率的に量産できることが期待されます。

  なお、本成果は、2010年9月6日から同志社大学で開催される化学工学会第42回秋季大会にて発表します。

[画像]今回開発したハイブリッド化学プラント技術を搭載した試作装置

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 機械研究所 企画室 [担当:秋葉]
〒312-0034 茨城県ひたちなか市堀口832番地2
TEL : 029-353-3214 (直通)

以上

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