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2009年5月18日

騒音の中でも特定の人の声を聞き分けることが可能な
音源分離技術を開発

複数のマイクを用いた雑音抑制処理により感度を二桁向上

  株式会社日立製作所(執行役会長兼執行役社長:川村 隆/以下、日立)は、このたび、騒音の中でも特定の人の声を聞き分けることが可能な音源分離技術を開発しました。開発した技術は、複数のマイクロ ホン素子(以下、マイク)を用いて、部屋の壁や天井の反射により発生する雑音を予測・除去することで目的の音声を抽出し、その後、抽出した音声の歪みを補正するという2段階の雑音抑制処理の開発により実現 したものです。これにより、従来に比べ二桁高い感度を実現し、マイクから数メートル離れた人の声を周囲の音と分離することや、音声の発生位置を特定することが可能になります。今後は、多数の人が参加する テレビ会議の通話品質の向上や、安全管理を目的とした、騒音の中から異常音を検知する音響監視システムの実現への貢献が期待されます。

  近年、携帯電話やカーナビゲーションシステム、テレビ会議システムなど、音声認識や遠隔通話の利用が増加するとともに、周囲の人の声や雑音、反響音などが生じる環境でも、音声認識の精度や通話品質が悪化しないシステムが求められています。この課題に対応する技術として、さまざまな音の中から目的の音声のみを抽出する音源分離技術の開発が進められています。従来の音源分離技術は、抽出したい音源位置の方向を特定し、それ以外の方向からの音を除去することにより、目的の音声を抽出していました。しかしながらこの方式は、マイクと音源との距離が1メートル程度の場合には有効ですが、数メートル離れると、音が部屋の壁や天井で反射するため音源の方向を特定する精度が劣化し、雑音を十分に除去できないという課題がありました。このため、マイクと音源が数メートル離れた環境でも、雑音を除去し目的とする音声を高精度で抽出できる音源分離技術の開発が求められていました。

  このような課題に対応するため、日立は、騒音の中でも特定の人の声を聞き分けることが可能な新しい音源分離技術を開発しました。開発した音源分離技術は、雑音が、部屋の壁や天井などでどのように反射するかを予測し除去する処理により目的の音声を抽出し、さらに抽出した音声をオリジナルの音声の品質に近づけるための歪み補正処理を行なう、2段階の処理を採用しています。
  今回、4メートル四方の室内にマイクを16個設置し、開発した音源分離技術の評価実験を行なったところ、約10秒で目的の音声を抽出し、この時の雑音を約20デシベル(dB)に抑えることが確認できました。これは、雑音の音量が100分の1程度になることを意味しており、繁華街の騒音を静かなオフィス環境の雑音程度まで抑制することに相当するものです。また、音源位置を誤差20センチメートル以内の精度で特定できることも確認しました。
  今回開発した技術の特徴は、以下の通りです。

開発技術の詳細

(1) 複数のマイクを用いた多チャンネル空間予測処理に基づく雑音の除去

  あるマイクの入力信号(入力信号1)に混入する雑音信号を、他のマイク信号に混入する雑音信号から推定し、推定した雑音信号を入力信号1から差し引くことで、雑音信号を除去した信号を得ることができます。雑音の予測は、雑音が部屋の壁や天井などでどのように反射するかを考慮して実行します。この雑音の予測処理を多チャンネル空間予測処理と呼びます。しかし、この処理を行った後の信号は、雑音がきれいに消えた信号ですが、目的の音も若干不自然な歪んだ音になってしまいます。そこで、この歪みを次の「歪み補正処理」で補正します。

(2) 歪み補正処理による目的の音の不自然さの解消

  全てのマイクの入力信号に対して空間予測処理を行い、雑音信号を除去した信号を得ます。それぞれの信号には、雑音が除去された目的とする音が含まれていますが、空間予測処理により一部の音が欠けて歪みを生じ、違和感のある音となっています。歪み補正処理では、それぞれのマイクに含まれる目的の音の断片を寄せ集めて、目的の音をオリジナルの音に近い、きれいな音に補正します。

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 中央研究所 企画室 [担当:木下、工藤]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪1丁目280番地
TEL : 042-327-7777 (直通)

以上

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