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Hitachi

2007年10月29日

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建物内の人の流れや混雑を予測する
三次元人流シミュレーション技術を開発

エレベーター、ロビー、通路など、建物内の最適レイアウト設計への応用が可能

  株式会社日立製作所(執行役社長:古川 一夫/以下、日立)は、このたび、国立大学法人横浜国立大学(学長:飯田 嘉宏)大学院環境情報研究院 森下 信教授と株式会社ジェイアール東日本企画(代表取締役社長:小島 紀久雄)と共同で、エレベーターを使った建物内の上下移動や各フロア内での歩行による水平移動など、建物内における三次元での人の流れをシミュレーションで再現することが可能なシステムとして、三次元人流シミュレーション技術を開発しました。本シミュレーション技術では、多数の人の動きを予測する基本的な理論として「セルオートマトン型計算モデル*1」を用いた群衆行動モデルと、エレベーターの運行モデルを連動させることにより、建物内を移動する人々の動きを計算し、建物全体での人の流れを再現することができます。また、人の移動の状況を再現するだけでなく、人の分布を決定する心理モデルを用いて、ロビーやエレベーターホールにおける人の挙動を忠実に再現することで、混雑度や輸送効率を高精度で評価することが可能です。
  本シミュレーション技術を用いることにより、オフィスビルやデパートなど建物の用途に応じて、セキュリティゲートやエレベーターなどのレイアウトを、輸送効率や混雑度など定量的な指標に基づいて適切に決定することができます。

  近年では、商業ビルなどの超高層化や大規模化とともに、オフィスや店舗、居住スペースなど、従来では別々に建築されていた施設が一つの建物内に混在する複合施設など、さまざまな用途を盛り込んだ街や建物が構成されるようになってきています。このような建物の内部では、エントランスからエレベーターホールへ絶え間なく通過する人々や、待ち合わせスペースで滞留する人々、複数の店舗を往復して買い物を行う人々など、多種多様な人の流れが発生しています。大規模ビルなど建物の開発においては、これらの多様な人の流れを考慮して、エレベーターやセキュリティゲートを設置したり、空調設備などの設備機器を設置して運用していくことが重要となっています。
  平面での人の流れを再現する技術としては、「セルオートマトン型計算モデル」を応用し、フロアを格子状の領域(セル)に分割し、各セル内の人の動きを周辺セルにおける人や障害物の有無などによって決定することで、駅構内での数万人規模の群集の動きを再現する技術を、既に横浜国立大学とジェイアール東日本企画が開発しています。
  これに加え、超高層ビルや大規模商業ビルの増加や複雑化に伴い、複数階での人の流れをシミュレーションすることが重要であることから、平面に加えエレベーターを使った上下方向での移動も含む、建物全体での人の流れをシミュレーションできる技術の開発が求められていました。

  今回、日立は、横浜国立大学とジェイアール東日本企画と共同で、横浜国立大学とジェイアール東日本企画が持つ駅構内での人流シミュレーション技術と、日立の持つエレベーターのシミュレーション技術を組み合わせ、エレベーターによる人の流れとフロア内での人の流れを連動させ、建物内における人の三次元での流れをシミュレーションで再現することが可能なシステムとして、三次元人流シミュレーション技術を開発しました。本シミュレーション技術では、設計データを基にフロアごとのレイアウト情報を読み込ませ、時間帯ごとの来場者数やその来場者が訪問する階などのデータを入力することで、エレベーターによる人の上下移動や各フロア内での歩行による水平移動など、建物内における人の移動に関する三次元での流れを再現することが可能です。本システムの主な特徴は、以下の通りです。

1.エレベーターと連動した人の動きの再現

  エレベーターホールにおいて、人は他人とは一定の距離をおいたり、利用予定のエレベーターにあらかじめ近づいておこうとする性質があります。これらの性質に加え、エレベーターが到着した際には、そのドア付近に集まる動作や、エレベーターに乗り降りする動作など、エレベーターと連動した人の動きを心理モデルに基づくパラメータで再現しました。

2.多様なエレベーター構成への対応

  通常のエレベーターのかごが1台のシングルエレベーターに加えて、2台のかごを上下に連結したダブルデッキエレベーターなど、最新のエレベーターを採用した場合もシミュレーションできるようにしました。また、建物内を低層階と高層階に分けて別々にエレベーターを運行させるコンベンショナルゾーニング方式*2や、高層階にロビーを設けるスカイロビー方式*3など、複雑な運行方式にも対応することが可能です。

  今回開発した三次元人流シミュレーション技術は、エレベーターによる人の上下移動や各フロア内での歩行による水平移動など、建物内における人のすべての三次元的な流れをシミュレーションすることが可能です。日立では、今後さらに本シミュレーション技術の精度を高めるとともに、建設予定の建物の設計や既存の建物の混雑予測に活用することで、より快適で経済性の高い合理的な建物の開発に貢献していく予定です。

注釈

*1
格子状のセル(細胞のような単位要素)の状態を周辺のセルの状態に応じて単純な規則で変化させることによりセル全体の複雑な動きを再現する計算モデル。
*2
ビルを低層階や高層階などのゾーンに分け、各ゾーンに数台のエレベーター群を割り当てて、一階などからそれぞれのゾーンまでは途中の階を飛ばして運転するエレベーターの運行方式。
*3
ビルの中間部にスカイロビーと呼ばれる乗り継ぎ階を設け、スカイロビーに直行する高速エレベーターから各階止まりのローカルエレベーターに乗り換えて目的階まで行くようにしたエレベーターの運行方式。

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 機械研究所 企画室 [担当:秋葉]
〒312-0034 茨城県ひたちなか市堀口832番地2
TEL : 029-353-3047(直通)

以上

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