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Hitachi

マネジメントメッセージ

CEOメッセージ

社会イノベーションを通じてステークホルダーと共にサステナブルな社会を実現/株式会社日立製作所 執行役社長兼CEO 小島 啓二 株式会社日立製作所 執行役社長兼CEO 小島 啓二

社会イノベーションを通じてステークホルダーと共にサステナブルな社会を実現

日立のめざす「社会イノベーション」

私たち日立は、データとテクノロジーでお客さまと共にサステナブルな社会を実現し、人々の幸せを支える社会イノベーション事業に注力しています。リーマンショック後の経営危機を経て、日立は「社会イノベーション事業」をシングルパーパス(日立の唯一の存在価値)と位置づけ、日立の強みであるIT、OT、プロダクトを組み合わせた独自技術でお客さまと共に社会課題を解決し、社会に変革をもたらすグローバルリーダーになることをめざして、事業ポートフォリオ改革を継続してきました。

2022年からスタートした2024中期経営計画では、サステナブルな成長をテーマに掲げ、取り組んでいます。サステナブルな社会を実現するには、社会と産業を大きく変える3つの潮流である「デジタル」「グリーン」「コネクティブ」をドライバーとして、さまざまな分野で社会イノベーション事業を拡大し、経済価値、環境価値、社会価値を創出しなくてはなりません。経済価値は、デジタル技術を活用した社会イノベーション事業の顧客協創フレームワークであるLumada*1事業の比率をグローバルで向上させることによって、EPS(1株当たり純利益)とCFPS(1株当たりのキャッシュフロー)の成長を実現すること。環境価値は、それぞれの事業領域で環境貢献を推進する事業セクターが連携し、グループ全体で年1億トンのCO2排出量削減に貢献すること。そして社会価値では、「Powering Good」を企業活動の指針として、プラネタリーバウンダリーの配慮とウェルビーイングの向上をめざしています。

サステナブルな成長モードに入った日立にとって「Powering Good」はスローガンである「Inspire the Next」と両輪の、私が大切にしている行動指針ともいえるものです。例えば、生成AIがめざましく進化していく中、今後、私たち人間にますます求められるのは、何が良きものであるかを見極める判断力ではないでしょうか。次々と行動を起こして、さまざまな新しいチャレンジをし、社会イノベーション事業を通じて世の中をインスパイア(「Inspire the Next」)しつつ、世の中の進歩をめざす際に、忘れてはいけないのが、何がグッドかを判断する力、すなわち「Powering Good」の指針だと思っています。

私たちがめざす良きものとして、プラネタリーバウンダリーの配慮とウェルビーイングの向上について言いますと、プラネタリーバウンダリー関係では、環境長期目標「日立環境イノベーション2050」で、バリューチェーンを通じて2050年度までにカーボンニュートラル達成、という目標を掲げています。自社の事業所(ファクトリー・オフィス)における取り組みと、CO2排出量削減に貢献する脱炭素ビジネスをパートナーとの協創を通じて大きく育てていくことで、お客さまと社会に価値を提供していきたいと思っています。

また、ウェルビーイングについては、一人一人が快適で活躍できる社会をめざし、社内外の取り組みをもう一段進歩させ、人生100年時代に向けたイノベーションを起こして、そこでも大きく貢献したいと強く思っています。

*1
Lumada:お客さまの事業のデジタル化を加速するための、日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション/サービス/テクノロジー体系の総称

社会イノベーションに重要な「人財」への取り組み

社会イノベーションをグローバルに実現していく私たちにとって、グローバル人財の確保は極めて重要なテーマです。

日立にはグローバルな仲間や、世界中のお客さまへソリューションやプロダクトを提供する基盤があります。近年ではABBのパワーグリッド事業やGlobalLogicのM&Aによって、多くの優秀なグローバル人財が加わりました。さまざまなバックグラウンドや専門性を持った多様な仲間がそれぞれの能力を発揮し、さらに“One Hitachi”として連携し合うからこそ、世界中のお客さまのニーズや課題を理解し、サステナブルな社会を実現するイノベーションが可能となります。

私は、人財こそ日立の強さの源泉だと信じています。“One Hitachi”として、新たな価値をお客さまと社会に提供し、変革と成長を図るために、2024中期経営計画では「デジタル人財の獲得・育成」、「DEIの推進」、「従業員エンゲージメント向上」の3点を重要な目標として掲げました。デジタル人財についてはGlobalLogicの採用/育成スキームを活用することで順調に強化され、DEIについても、M&Aによって加わった多様な人財が活躍しています。また、従業員エンゲージメントスコアも向上しています。“One Hitachi”での成長マインドを多くの従業員に持ってもらうために、さらなる高みをめざします。

成長を支えるサステナブル経営とガバナンスの進化

私たちの2024中期経営計画では、2050年の地球・社会・そこに暮らす人々の姿や、自分たちのありたい姿を思い描き、そこからバックキャストすることで、現在なすべきことや中長期的に取り組むべきことを明確にしました。サステナブル経営の推進に向けては、6つの重要課題(マテリアリティ)を決定し、目標を定め、進捗や新たな取り組みについては、経営会議や取締役会において議論しています。

サステナブル経営にガバナンスの進化は不可欠です。取締役の皆さんは、重要な課題を指摘してもらえる必要不可欠な存在であり、2024中期経営計画の策定にあたっては、私は、取締役の皆さんと取締役会で繰り返し議論しました。これからのサステナブル成長モードにおいても、取締役の皆さんと議論を重ねていきながら、サステナブル経営をより発展させていきます。

また、2023年4月に実施した役員報酬制度の改定では、サステナブル経営の強化を通じて企業価値を向上させることを目的に、マテリアリティに基づいたサステナビリティの評価項目を新設しました。会社として持続的に成長していくためには、世の中でサステナブルな企業として認められる必要があります。目線を遠めに置き、日立が中長期にわたって社会に貢献をし、あらゆるステークホルダーの皆さまへ還元していく姿勢が大切です。そうした意欲を経営層でしっかり共有しなければならないとの強い想いからこの改定を行いました。こうした仕組みを導入することで、私たちはサステナブル経営のさらなる進化をめざします。

ステークホルダーへのメッセージ

110年以上にわたる日立の歴史は、社会課題の解決の連続であり、お客さまをはじめとしたステークホルダーの皆さまと共に築き上げてきたものです。社会イノベーション事業を推進する日立は、お客さま、株主・投資家、政府・自治体、学術団体・研究機関など多様なステークホルダーとの対話・協創を大切にしています。特に次世代を担う若い方々は環境意識や健康意識が高く、多くのインプットを与えてくださいます。

こうしたステークホルダーの皆さまは、日立にとって共に社会課題の解決にチャレンジするイノベーションパートナーでもあります。昨今ではお客さまの多くが社会課題の解決にチャレンジされています。そのため、本当の意味で社会イノベーション事業に取り組める環境になってきていることを感じますし、お客さまと真剣に社会課題を解決しようと協創していく中で、新たな「社会イノベーション事業」が誕生するのを見ていると、大変勇気づけられます。

ステークホルダーの皆さまの期待に応えるため、日立はこれからも、ダイバーシティに富んだ多くの仲間たちと共に、それぞれの事業領域や担当分野を超えた“One Hitachi”のマインドで世界中のお客さま、そして社会へ日立のイノベーションを届け、成長していきます。

株式会社 日立製作所
執行役社長 兼 CEO
小島 啓二

Chief Sustainability Officer メッセージ

2024年度のサステナビリティ目標達成に向けた着実な前進/株式会社 日立製作所 執行役専務 Chief Sustainability Officer兼サステナビリティ統括本部長兼CDEIO ロレーナ・デッラジョヴァンナ 株式会社 日立製作所 執行役専務 Chief Sustainability Officer兼サステナビリティ統括本部長兼CDEIO ロレーナ・デッラジョヴァンナ

2024年度のサステナビリティ目標達成に向けた着実な前進

私のミッション

日立グループは、グローバルな事業ネットワークや幅広い製品群、そしてさまざまな産業における100年以上にわたる知見を強みとする多国籍企業です。今日の世界が直面する課題の解決に向け、日立グループの強みを融合して活用していくことが、私のChief Sustainability Officerとしての使命だと考えています。

私には、日立グループの環境や社会に与える影響を評価し、将来に生きる人々のニーズを損なうことなく、現在を生きる人たちのニーズも満たすような、適切な行動をとるための意思決定をする責任があります。それを実現していくためには、日立グループとして、抜本的な組織の変革が必要です。そのため、サステナビリティの観点をビジネスモデルやオペレーション、意思決定にしっかりと統合していくことも私の役割です。そして、この変革の中核を担うのが、言うまでもなく、人財であり、日立グループのすべての従業員にこの変革のジャーニーに加わってもらうためにも、強力なリーダーシップとしっかりとしたエンゲージメントが不可欠だと、考えています。

サステナビリティは、日立にとって大きな成長機会

日立にとってサステナビリティは目新しい概念ではありません。創業以来の企業理念とアイデンティティに根ざしたものです。また、プラネタリーバウンダリーを守り、一人一人のウェルビーイングを向上させながらサステナブルな成長をめざす2024中期経営計画においても中心となる考えです。そして、この中期経営計画の実現の鍵となるのが社会イノベーション事業であり、地球の持続可能性に影響を与える環境や社会課題に対し実践的なソリューションを提供していくことだと考えています。

今日では、お客さまも、財務的な成果だけを重んじる企業よりも、サステナビリティにもコミットする企業との取引をますます重んじています。また、投資家も投資先の判断基準にESG(環境・社会・ガバナンス)を指標としています。さらに、特に若い世代の人たちは、より社会性の高い企業で働くことを志向しています。こうしたサステナビリティのトレンドは、日立がお客さま、投資家、人財を惹きつけて、事業を展開するすべての国や地域において持続的に成長できる大きな機会になると捉えています。

サステナビリティとマテリアリティの取り組みの進捗について

当社は、サステナビリティに対する強いコミットメントを、透明性を保ちながら示すために、幅広いステークホルダーやNGO等の外部組織と緊密に協力した上で、「環境」「レジリエンス」「安全安心」「幸せな生活」「誠実な経営」「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI)」からなる、日立グループの将来にとって重要な課題(マテリアリティ)を6つ特定しました。マテリアリティの特定プロセスでは、現在および将来のビジネス機会を検討し、ステークホルダーへの影響を評価しました。

世界中の従業員の努力の積み重ねのおかげで、マテリアリティの取り組みは、目標達成に向けて着実に進んでいます。例えば、脱炭素の取り組みでは2030年度までに事業所内のカーボンニュートラル達成をめざしていますが、2024中期経営計画では、2024年度までにCO2排出量を2010年度(基準年度)比で50%削減を目標としている中、現時点では削減率64%の見通しです。また、社会イノベーション事業を通じて、お客さまとともに社会全体のCO2削減にも取り組んでおり、2022年度はCO2排出量を1億トン削減という目標に対し、約1億2,600万トンの削減に貢献することができました。

サーキュラーエコノミーについては、2024年度までに水使用量原単位を2010年度(基準年度)比で24%削減という目標を達成予定です。また、サーキュラーエコノミーを進めるその他の取り組みとして、2030年度までに埋立廃棄物を限りなくゼロに近づけること、そして2024年度までにすべての新規開発製品へのエコデザインの適用をめざしています。2022年度には、製品のライフサイクル全体を通じて環境負荷を大幅に低減する、357のエコデザイン対象製品を特定しました。

人財について言いますと、デジタル人財は日立グループのみならず社会全体にとっても重要と考え、2024年度までにグループ全体で97,000人(日立Astemoを除く)に増やすという目標を掲げています。デジタルエンジニアリングサービスのリーディングカンパニーであるGlobalLogic社の買収により、デジタルケイパビリティを強化することができましたし、今後もさらに拡大していきます。

DEIは、日立のサステナビリティ戦略の中核であり、今後もサステナブル経営を強化するために推進します。例えば、役員層における多様性を推進していますが、執行役・理事における女性比率と外国人比率を見ると、2022年度の女性比率は11%、外国人比率は20%となっており、2030年度までに30%という目標の達成に向け力強く進んでいます。

さらに重要なのは、従業員一人一人が活躍できる職場環境づくりをめざし、ダイバーシティ(多様性)を欠かせないものとして、推進していることです。その結果、2022年度の従業員エンゲージメントスコア(肯定的回答率)は2024年度目標を上回りました。ダイバーシティは新たなアイデアを生み出しますが、アイデアを声に出したり問題の解決策を生み出したりするにはエクイティ(公正性)とインクルージョン(包摂性)も確保する施策が必要です。DEIを構成する3つの要素の相互作用が、イノベーションと人財の可能性を引き出す鍵なのです。

日立グループの従業員による自主的な取り組みである「日立Voice of Youthプログラム」は、若手社員がさまざまな事業や地域の仲間、そして日立のリーダーシップチームと、サステナビリティについて話し合う機会を提供しています。私自身、プログラムの参加者たちと何度となく話しましたが、若い人たちがボトムアップで日立グループに新しいエネルギーと情熱をもたらしてくれることに、とても期待を寄せています。

私は、日立が社会全体の人々に価値あるソリューションを提供すべく、持ち前の総合力、ノウハウ、技術力、多様性を活かすことで、ますます成長する機会が広がると信じています。世界中の日立グループ各社がOne Hitachiとして力を合わせ、一人一人が積極的にそれぞれの役割を果たしていくことで、社会に大きな変化をもたらすことができるのです。

最後に、外部からの評価はサステナブル経営の強化において、重要なフィードバックだと認識しています。日立はさまざまなESGインデックスに選定されており、2023年にはコンプライアンス教育の推進やグリーン価値を創出するための研究開発投資の開示など、日立のサステナビリティへの取り組みが高く評価され、MSCI ESGレーティングで「AA」(リーダー)評価を獲得しました。また、2022年にはCDPにより「気候変動」と「水セキュリティ」の分野で最高評価の「Aリスト」企業に選定されました。さらに、バリューチェーン全体でのCO2排出量削減など、ネット・ゼロ社会の実現に向けた取り組みが評価され、CDPの「サプライヤー・エンゲージメント・リーダー」(サプライヤー・エンゲージメント評価における最高評価)も得ることができ、こうした評価を私たちは非常に誇りに感じています。

ステークホルダーの皆さまへ

日立グループは、最先端の技術と専門知識を有するグローバル企業ですが、世界が直面している大きな課題を解決するためには外部との連携が必要不可欠と認識しています。そのため、日立は、政府や学術機関、団体、そして、お客さま、調達パートナー、競合他社を含む企業の皆さまと協働する機会を積極的に模索しています。日立のサステナビリティの取り組みは、SDGsの17の目標のうち、13の目標に直接関連していますが、外部の方々とのパートナーシップを通じて活動を拡大させていくことで、17の目標すべての達成に貢献していきたいと考えています。

今後も、ステークホルダーの皆さまとともに、サステナビリティの取り組みを意欲的に進めていくことを、楽しみにしています。

株式会社 日立製作所
執行役専務
Chief Sustainability Officer
兼サステナビリティ統括本部長兼CDEIO
ロレーナ・デッラジョヴァンナ