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SPECIAL TALK 先輩社員 日立初の大型淡水化プロジェクト。言葉と技術と信頼の壁を乗り越えて困難なミッションに挑む Kenji Kiguchi SPECIAL TALK 先輩社員 日立初の大型淡水化プロジェクト。言葉と技術と信頼の壁を乗り越えて困難なミッションに挑む Kenji Kiguchi

木口 健治

営業技術

木口 健治水ビジネスユニット 社会システム本部
東部システム技術第一部/
2006年入社
理工学研究科 情報システム学専攻 修了

お客様に一番近いエンジニア。

学生時代に世界を見てやろうと思い、カナダに留学したり、ベトナムやカンボジアを一人旅したりしました。カンボジアでは飲料水はペットボトルを買って飲むのが当たり前でしたが、たまたまブランドものではない安価なボトルを買って飲んだところ、思い切りお腹をこわしてしまいました。ベトナムではいまだに水を桶に入れてお皿を何度も繰り返し洗ったり、川で洗濯をしたりする光景を目の当たりにしました。日本にいれば蛇口をひねって当たり前に水を飲むことができますが、海外ではむしろそれはまれなこと。こうした体験を通じてインフラの大切さを痛感しました。

大学では現実の世界にバーチャルなものを重ね合わせる拡張現実ARを研究しました。よくゲームなどで使われる技術ですが、例えば特殊な環境で作業者がゴーグルを着けながら、表示されたガイドに従ってメンテナンス作業を行ったりするような応用も可能です。こうした技術を何らかの形で社会に活かすのであれば、やはり商社よりはメーカーがいいと考えていました。留学先のカナダで知り合った友人が先に日立に入社していたので、その友人の話や紹介してもらった現在の事業部の先輩の話を聞いて、日立の社会インフラ事業のスケールや技術レベルの高さ、そして何よりも彼らの技術に対する真摯な姿勢に深い共感を覚えて、最終的に日立を選びました。

入社後は2年間、工場の設計実習で技術的なベースを学び、3年目から関西支社で営業技術を担当しました。営業はどちらかというとフロントでの顧客窓口、契約や受注手配などがメインの業務ですが、営業技術は技術的な窓口としてお客様の課題を深く掘り下げた上で、解決のメニューを提案したり、実際に工場の技術者と一緒にお客様にとってのベストソリューションを追求したりします。何かトラブルがあれば迅速にお客様の元に駆け付けてサポートし、さらに新たなアウトプットをご提示する、いわば“お客様に一番近いエンジニア”が営業技術です。もともと自分は研究室に閉じこもるタイプではなく、人と関わりながら社会のために技術を活かしたいというのが日立を選んだ理由でしたから、まさに営業技術は自分の天職といってもいいかもしれません。

木口 健治

3社ジョイントベンチャーによる未体験の大型プロジェクト。

7年目に水事業の海外チームを立ち上げる際、自分もそのメンバーとして参加。当初2年間はインドや中国のお客様のプロジェクト案件創出に取り組みました。各国の政府機関や自治体の責任者に対してプロジェクトの提案をしていくため、本来、ベテランの仕事ですが、海外案件はほとんど経験者がいなかったため、自分が抜擢されたのかもしれません。もともと海外の水事業をやりたいというのが入社動機の一つでしたから、日立の水事業のグローバル展開と自分の成長の時期が重なったのは幸運でした。

実際にお客様を訪問するとそもそも日立を知らなかったり、知っていても水事業をやっている話をすると「えっそうなの?」という反応だったり。本来、複雑な水道をより効率的に行き渡らせるようなシステムの提案に日立の強みがありますが、現地のニーズを探っていくと、そういった高品質・高価格のシステムではなく、単純に水を浄化できて低コストで整備することが求められているのだとわかってきました。夢への第一歩を踏み出せたと同時に、現地に行かなければ知りえないリアルな実情も知った時期でした。

一方、日立グループでは海外市場の開拓をよりスピーディに進めるため、グループ会社の日立プラントテクノロジー(2013年に日立製作所と吸収合併)とフランスの水メジャーであるVeoliaグループ、エジプトの企業がジョイントベンチャー(JV)を組んで、水事業の営業活動を進めていました。そこで持ち上がったのがイラクのバスラという都市の大型淡水化プラントを建設するプロジェクトです。日立製作所からは私を含む数名が参加し、私は主に監視制御システムの設計を担当しました。大型淡水化プラントは日立グループとして初めて経験するプロジェクトで、Veolia社が機械設備、日立が電気設備、エジプトの企業が建築を担当しました。

JVの難しさはパートナーでありながらライバルでもあるといういわば、呉越同舟的なところです。大型淡水化プラントは会社としても私自身も経験がなかったので、Veolia社が長年培ってきた大型淡水化の技術をいかに吸い上げて新たなシステムに落とし込んでいくかが重要な課題でした。しかし、最初はお互い腹の探り合いのような状態で、メールやテレビ会議で問いかけをしてもなかなか腑に落ちるリアクションが返ってきませんでした。これではらちが明かないと思い、半ば押しかける形で先方に出向いて、約一週間根をつめて打ち合わせをする機会を設けました。そうするとようやくこちらの本気が通じたのか、エンジニア同士で細かな部分での意見交換ができるようになり、その後も互いに訪問し合ってFace to Faceでモノづくりに取り組める関係が生まれてきました。

木口 健治

悩み、もがいていたとき、思い出した言葉。

「こんな時じゃないと大型淡水化プラントの制御を学べる機会はないぞ。ここでノウハウを身につければお前が第一人者になれる。だから責任を持って技術を理解し、システムを造り上げてこい」。現地に向かう前に上司から言われた言葉です。この言葉があり、成し遂げる気概を持って臨んだからこそ、企業文化の違いを乗り越えて相手の懐に飛び込む勇気を得て、困難な状況を突破できたのだと思います。システムは日本のメーカーの工場で2年ほどかけて作り上げ、イラクのお客様が立会検査に訪れて合格のサインをいただいた時、それまでの苦労が報われ、熱いものがこみ上げてきました。ただ、完成までの道のりはまだ長く、実際の据え付けはまだ数年かかる予定です。

私自身はいったん国内のプロジェクトに戻っていますが、必要があればまたバスラに赴くことがあるかもしれません。自身としては大型淡水化プラントのエンジニアリングについてのノウハウが蓄積できましたし、今後、他の案件に生かす自信がつきました。グローバル展開については、今後もハードとソフトを併せ持ち、浄水場や下水処理場をまるごと構築できる日立グループの持つ総合力を活かし、発展途上国の水の環境を日本と同レベルの水準に持っていくという志の実現に向け、さらに経験値を高めていきたいと思います。

現在は日本で下水処理場の電気設備の更新提案や新技術導入提案に取り組んでいますが、今後の日立の水ビジネスを発展させていく上で、やはりIoTやAIの活用がカギになってくると思います。まだ具体的に何ができるかという部分では議論を重ねている最中ですが、装置のモニタリングや自動化においてIoTやAIを応用できるはず。ハードの技術とIT、そしてOT(制御技術)が三位一体となり、自前で研究開発を進めることができるのが日立の強みであり、それを活かして世界の難題の解決に自ら参加できるのがエンジニアとしての誇りであり、喜びです。

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