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  • 日立、DXと「つながり」で社会課題の解決へ

    サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」 2023年1月掲載

    日立製作所は12月15日、「DXと協創で立ち向かうサステナビリティ」と題したセミナーを開催した。気候危機など複雑で多様な社会課題がある中、企業が継続的に成長していくためのサステナブル経営をデジタルでトランスフォームしていく方法、取り組みの壁となる共通課題や解決のアプローチなどを特別講演やトークセッションを通して説明した。

    「アウトサイド・イン」の考え方で社会課題を起点にビジネスを創出

    オルタナ代表取締役・編集長の森 摂氏が「SDGs『アウトサイド・イン』戦略」をテーマに講演した。2015年に採択されたSDGsは、その言葉の認知度は各調査で約9割となっているものの、内容を含めた認知度は3割程度まで下がる。2023年3月に折り返し地点を迎えるが、国連はSDGsの進展が大幅に遅れていることを指摘する。

    こういった課題を解決するために、国連が提唱するのが「アウトサイド・イン」だ。従来の企業の商品開発の手法である、マーケットインは市場のニーズを取り入れる。しかし、それは既存の顧客の声を聞いているに過ぎない。このベクトルを市場の外の社会へと伸ばす、あるいは未来まで伸ばしてその声を聞き取ることが「アウトサイド・イン」となる。

    アウトサイド・インの概念図
    アウトサイド・インの概念図

    森氏は、「たとえば、『新型コロナウイルスが流行したからマスクをつくって販売する』は、マーケットインです。『新型コロナウイルスが蔓延した後の世界を見据え、テレワークやバーチャルな旅行をいち早く手掛ける』ことはアウトサイド・イン」と説明する。

    さまざまな企業がその時々の社会課題・ニーズを取り入れ、世界有数の企業へと成長してきた過去の例をみると、アウトサイド・インの考え方は、じつは古くからある戦略で決して突飛なものではない。

    「ある企業では、『400のブランドのうち、サステナビリティを前面に掲げた28ブランドの方が69%成長が早い』という。SDGs、ESGを経営に統合しサステナビリティ経営を推進することで、社会課題の解決だけでなく、社会からの評価となり会社の収益性にもプラスの影響を与える効果がある」と強調した。

    「つながる」が全体最適を促しSDGs達成へ

    日立製作所 Lumada Innovation Hub シニアプリンシパルの加治 慶光がモデレーターとなり、「サステナビリティを実現するためのDX」のテーマでトークセッションを行った。

    パネリストは森氏に加え、日立のDXエキスパートとして、苗村 万紀子(日立産機システム プロダクツコネクティッド推進部 部長)、増田 典生(日立製作所 サステナビリティ推進本部 主査/一般社団法人ESG情報開示研究会 共同代表理事)、松本 和己(日立製作所 Lumada CoE DesignStudio リードデザインストラテジスト)、織田 稔之(同上 DX協創推進部 協創事業開発担当部長 上級コンサルタント)が登壇した。


    トークセッションの登壇者、右から加治、増田、苗村、松本、織田、森氏

    議論の軸となったのは「つながる」だ。

    増田は研究会でのキーワードのひとつとして「Co-creation」を挙げた。

    「1社だけでなく、事業会社、監査法人、機関投資家や政府機関とともにディスカッションすることで、より良い情報開示やサステナブル経営の在り方をブラッシュアップしていくことができる」と指摘する。

    さらに、情報開示を効率的・効果的にしていくには、デジタルの力を活用し、自社内の情報開示の仕掛け自体をトランスフォームするとともに、ステークホルダーと情報共有をしていくためのアウトサイドのプラットフォームも必要になると訴えた。

    企業側の取り組み姿勢にも変化が見られる。

    苗村は、工場別に目標値が厳密に設定されており、どう達成するかが厳しく問われているとサステナブルへの取り組みが喫緊の課題であることを示した。

    その上で、「いまもっともホットなのはデータ取引の考え方。データの取り扱いがじつはサステナブルな考え方と非常に近い関係にある。昔は絶対に自社からデータは出さなかったが、今では社会全体で事象を共有していく傾向にある。それがKPIには絶対に必要な指標になるとともに、標準化活動も活発に行われている」と話す。


    苗村はデータ取引とサステナ経営の関係性について話した

    織田は「年間800件近いご相談をお客さまからいただくが、その中でSDGsと関係するのは2〜3割。サステナブルや社会課題に挑戦するには局所最適では絶対に解けない。これまで一番の課題だったのは、お客さまの中でも業務の壁が厚いということ。しかし、最近では情シス部門と業務部門が一緒に新しいことに取り組むということも増えてきた」という。

    これは、共通のモノサシが売上だけでなく、企業活動にとって何がいいのか?というベクトルが合い始めているのではと推察した。

    離れた知をつなぎイノベーションを起こす

    「つながる」ことは企業のサステナビリティの向上に寄与するだけでなく、イノベーションも生み出す。

    加治は「イノベーションは新しい知と知が『新結合』すること。いまは、同じ産業内ではなく、例えば、家産業と自動車産業の知が出会わなければイノベーションは起きない。これは世の中がコネクトされたために産業間の障壁が崩れたから。知と知の距離が離れていなければいけない。多様性がないと成り立たない」。そういう意味でDEI(Divesity,Equity,Inclusion)はイノベーションを成立させるための戦略の1つと言えるという考えを述べた。


    イノベーションを生み出すカギとしてDEIを強調した加治

    松本は、新結合を生み出す取り組みを紹介した。

    「例えば、車そのものがどうなるか、人の生活の中で移動というものがどうあるべきかを考えるためには、自動車業界と我々の会話だけでは成り立たない。事業の外側にある変化をどれだけ取り込めるかが重要。日立は多種多様なお客さまとの取り組みをしているのでそこで得た知見や情報を集めて紐づける挑戦をする。そうする中でいままで考えたことがないものを組み合わせたり、はがしたりしながら、新しい結合でうまれる価値を創っていく」と説明した。

    最後に、加治は「早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け」というアフリカのことわざを紹介した。大きな危機をともに乗り越え、サステナブルな社会の実現に向け、ともに取り組んでいきたいというメッセージで締めくくった。

    セミナー詳細、アーカイブ映像は下記からご覧いただけます。

    【イベントレポート】DXと協創で立ち向かうサステナビリティ

    サステナビリティの有識者とDXのエキスパートが、サステナビリティ経営のポイントから、現場での課題や求められるアクションについて語り、ともに考え、持続的な成長につなげていくためのヒントをお届けします。

    DXと協創で立ち向かうサステナビリティ

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    本記事はサステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」に掲載されたものを転載したものです。
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    所属・役職等はすべて取材日時点のものです。
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