研究者が見るイベントレポート
展示エリアで見えた、フィジカルAI社会実装の足場
2026/06/03
OVERVIEW
- 【EX-A4】Microsoft - フィジカルAIを支える IQデータ基盤
- 【EX-B3】Gemini × SAP × OT:生成AIで解き放つ次世代の自律型製造(フィジカルAI)
- 【EX-C1】NVIDIAで実現するフィジカルAI
- 【EX-SP4】フィジカルAIを社会・産業で動かすAI基盤「Hitachi iQ」
- 【EX-SP3】複雑作業の自動化を実現する、フィジカルAIの頭脳を搭載したロボティクス
<はーい。こちら天野です。>
Hitachi Physical AI Dayの展示ブースを天野よりレポートします。
展示ブースでは、保全の現場を模倣した大型セットでロボットが動く姿を確認したり、直接来場者の方々が、展示担当者へ質問ができたりするため、熱気に包まれていました。その中から何件かヒアリングした内容を特集します!
【EX-A4】Microsoft - フィジカルAIを支える IQデータ基盤
「Microsoft - フィジカルAIを支えるIQデータ基盤」の展示ブースでは、日本マイクロソフト(株)(以下、Microsoft)が支援するAIサポートソリューションの「IQ」ソリューションを説明していました。展示会場では、日本Microsoftの森 圭司さまに、Fabric IQやセキュリティと生成AIに関する内容など、広くお話を聞くことができたので、以下にレポートします。
- 天野
- Microsoftさまのこのブースでは何を紹介されているのでしょうか。
- 森氏
- 「Microsoft - フィジカルAIを支えるIQデータ基盤」と題して、ハノーバーメッセでの展示がフィジカルAIのテーマに合うと思い、クラウドAI、オンプレAIとロボットアームが連携している例を紹介しています。
- 天野
- 実際に現場からのデータがクラウドに上がり、その後制御に指示を出している様子が分かるのは良い展示ですね。現場とクラウドをつなぐAPIはありますか?
- 森氏
- Adaptive CloudというオンプレAI(Foundry Local)とクラウドAIを組み合わせたMicrosoft特有の強みを生かした構成になっています。瞬時に判断すべき内容はFoundry Localで処理し、Azure IoT Hubなどを使ってAzureにデータをアップロードし分析します。
- 天野
- 逆にクラウドから現場へ制御命令を出すときはどうでしょうか?
- 森氏
- Azureから現場側のサーバーへの通信で行うイメージです。Azure IoT HubやAzure Arcを使うことで可能です。
- 天野
- Work IQやFabric IQについても教えてください。この方針は実際の事例が増えてきているのでしょうか。
- 森氏
- Work IQ、Foundry IQ、Fabric IQの事例は増えてきています。フィジカルAIにおいても期待されている機能で、IoTから上がってきた単純なデータにFabric IQで意味付けし、Foundry IQで推論・判断、Work IQで人や業務との実行・自動化を実現します。注意したいことはフィジカルAIのために独自ツール導入することによるデータのサイロ化です。皆さんが今使っているMicrosoft 365やCopilotのIQを利用・拡張することで一元管理された最新データに基づいた正確で高度なフィジカルAIの実現が可能です。
- 天野
- Graph APIはAzure Entra IDベースで設計されているため、どうしても個人ベースのAIサービスにとどまってしまうと感じています。私の経験として、Power Automateの時は、作ったロジックを部で共有したり、部共有のアカウントで活用すること不可能で、個人個人での業務改善にとどまってしまいました。現在は、マルチAIエージェントを活用し、ユーザー単位ではなく、役務まるごと効率化する時代です。そのギャップを埋める方法がWork IQとなることを期待しています。
もし、MicrosoftさまとWork IQのような新しい技術に取り組む場合、Microsoftさまのファンドを使うこともできるのでしょうか?Microsoftさまと連携で、SIMT(構造化情報一元管理技術)をハノーバーメッセに展示したときも、日・米Microsoftさま双方に多大なご支援とご協力をいただいた記憶があります。 - 森氏
- ファンドは利用可能です。Microsoftにはファンドの制度があるのでぜひ活用していただきたいと思っています。
- 天野
- ファンドを活用しながら、Microsoftさまの最新の技術やWork IQを活用したサービス作りを期待したいところです。引き続き意見交換をさせていただきたいと思っています。
- 森氏
- こちらこそ、よろしくお願いします。
【EX-B3】Gemini × SAP × OT:生成AIで解き放つ次世代の自律型製造(フィジカルAI)
次のレポートは、同様にクラウドのビッグベンダーであるGoogle Cloudのブースです。「Gemini × SAP × OT:生成AIで解き放つ次世代の自律型製造(フィジカルAI)」の展示では、Gemini Enterpriseを中心に紹介をしており、グーグル・クラウド・ジャパン合同会社 スペシャリスト営業統括 データアナリティクス事業本部 セールススペシャリストの藤好 健太郎さまに、お話を聞くことができたので、以下にレポートします。
- 天野
- 多くの頭脳部分(LLM)を選択的にユーザー利用ができるようになった現在、GeminiやGoogle Cloudと連携することの利点はどこにあるのでしょうか。
- 藤好氏
- AIの活用には、実はいろいろな機能スタックが必要になります。エッジ側ハード、クラウド側ハードインフラ、データ管理機能、AIの頭脳部分、各種作り込みができる機能レイヤなど、その全てのレイヤを提供しているのがGoogle Cloudであると考えていただけると分かりやすいです。
- 天野
- Google Cloudは、製造業などクラウド側でのデータ管理コストが安いということは知られていますね。
- 藤好氏
- そのとおりです。それに加えて、Google CloudはBigQueryが使えることも大きいです。BigQueryを使いながら分析できるユースケースはお伝えしたい領域です。
- 天野
- ビッグデータやETL(エクストラクト・トランスフォーム・ロード)という技術が注目されたときもありましたが、データテーブルの設計を知らないと使いこなせなかったと思います。そこで、BigQueryが使えるのは利点ですね。
- 藤好氏
- BigQueryに加えて、クエリ処理の負荷をスケールできる点も重要です。AIからデータベースに対するクエリはクラウド環境に強い負荷を与えます。
- 天野
- 人は自然言語を使って目的ベースでデータを要求し、それを分析したフロントのAI、さらには、エージェンティックAIによってオーケストレーションされたAIエージェントが一斉にデータ管理層へ問い合わせを行うと、そのシステム負荷は今までのシステム設計者の想像を超えますね。
- 藤好氏
- Google Cloudは、自動的に計算機リソースや処理タスクをスケールしたり、分配する処理を自動的に行う設計になっているので、この機能はAI活用時代に生かせると思っています。
- 天野
- これから、日本は人口減少社会といわれており、設備保全なども個人事業主の熟練者や、エリアマネージャー、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)によるスポット的な連携なども発生してくると思います。その時、多数人が集まる場を作りサービスを提供する設計はGoogle Cloudはやりやすいのかもしれませんね。
- 藤好氏
- その通りです。例えばBigQueryにおいても、テーブル単位のみならず、行×列の単位でアクセス権限管理ができるので、BPOのようなユースケースにも対応しやすいです。
- 天野
- 少々視点を変えて、Excel方眼紙文化を吸収できるGoogle Cloudサービスはあるのでしょうか。たしかにスプレッドシートは存在しますが、「Excel方眼紙文化」、「Excel関数活用」、「Excelマクロ、VBA」この領域をサポートできますでしょうか?
- 藤好氏
- Google Workspaceというサービスを展開しており、視野には入れていますが、「Excel方眼紙文化」「Excel関数活用」「Excelマクロ、VBA」を取り込めるだけの対応はこれからというイメージです。
- 天野
- 化学プラントなどでは、計算パラメータなどを与えるためのインタフェースのようになっており、「表」+「処理機能」、「表」+AI連携について参考になる設計が求められています。
- 藤好氏
- Google Cloudの技術を広く知っていただけるように、引き続き議論させていただきたいです。
【EX-C1】NVIDIAで実現するフィジカルAI
次は、クラウド側から、徐々にフィジカルAI現場側へ視点を動かしていき、GPUの供給メーカー側から見てみましょう。
「NVIDIAで実現するフィジカルAI」の展示ブースでは、NVIDIA担当者さまに、デモ展示を中心に熱いメッセージを伺うことができました。
- 天野
- ブースに伺ってまず、熱気とリアルなシミュレーション画面に圧倒されました! 今回のNVIDIAブースで「これだけは絶対に見て帰ってほしい」という一番の見どころは何ですか?
- NVIDIA担当者
- NVIDIA Blueprint for Video Search and Summarization (VSS)です。映像は「見る」から「検索・分析する」時代へ移行したと感じていただけると思います。全てのカメラ映像を人がチェックするのは不可能ですが、VSSを活用するとライブ映像をAIエージェントが常時監視し、例えば「作業員が安全帯をつけ忘れている」「作業工程でネジを締め忘れている」といった異常を自動検知してリアルタイムでアラートを出したりできます。さらに作業の終わりに「今日の作業レポート」をAIが自動で文章にまとめて要約してくれます。
- 天野
- 今回のテーマは「Physical AI(フィジカルAI)」ですが、デジタルの中だけだったAIが「フィジカル(現実世界)」とつながることで、私たちの暮らしや仕事はどう変わるのでしょうか? ポイントを教えてください。
- NVIDIA担当者
- AIが高度にフィジカル、物理的につながることで、将来的に例えばロボットが見て、考えて、動く。また、そのロボット同士が会話して動作するという現実世界が来ます。
- 天野
- 日立ビルシステムの昇降機保守や鉄道、工場などの現場でもVSSの活用が進んでいます(ウェアラブルカメラ映像のリアルタイム解析による安全指示など)。日立が持つ現場(OT)アセットと、NVIDIAのVSSが組み合わさることで、どのようなシナジーが生まれると期待していますか?
- NVIDIA担当者
- いわゆる暗黙知と言われる、熟練保守作業員の作業手順、安全基準、現場のデータをデジタル化することで、今まで熟練保守作業員でしか判断できなかった事をAIが判断できるようになります。
- 天野
- シミュレーションで賢くなったAIを現実のロボットや車に載せると、最初はうまく動かない「Sim2Real(シミュレーションから現実への適用)の壁」があると聞きます。 NVIDIAのIsaac Simは、この「現実とのギャップ」をどうやって埋めているのですか?
- NVIDIA担当者
- Isaac Simは重力・摩擦・風・モノの重さや柔らかさなど物理特性まで再現する事が出来るため、現実世界に近い環境でシミュレーションすることで現実とのギャップを埋めることができます。
- 天野
- 日立は「世界一のフィジカルAIの使い手になる」と宣言し、NVIDIAさまとは単なる技術パートナーを超えた「ビジョン共有パートナー」として手を取り合う方向性をめざしています。これから日立とNVIDIAで実現していきたい「未来の社会インフラの姿」について、熱いメッセージをお願いします!
- NVIDIA担当者
- 日立さまの持つOT、NVIDIAの持つAI技術を掛け合わせることで、よりよい未来を現実にしましょう!
【EX-SP4】フィジカルAIを社会・産業で動かすAI基盤「Hitachi iQ」
徐々にクラウド領域から、フィジカルAIで注目される現場領域に近づいてきました。次は生成AIを活用する環境をオンプレで持つ選択肢として「Hitachi iQ」をレポートします。展示会場では、技術面にも詳しい日立ヴァンタラの群(たかむれ) 史郎にヒアリングを行いました。
- 天野
- Hitachi iQの特徴は何でしょうか。
- 群
- 「Hitachi iQ」は、日立ヴァンタラが得意とするストレージを含む分散ファイルストレージに加え、NVIDIA GPUサーバー、AI開発ツール・フレームワークをセットにしたソリューションです。さらに、ノーコードでAIエージェントの開発が可能な、Hitachi iQ Studioが加わることが特徴となります。(国内販売計画中)
- 天野
- 日立はこれまで金融業界を中心にブロックストレージが強く、ファイルストレージについてはラインアップが無いと思われていましたが、AI時代ファイルサーバーへのニーズも高まっているのではないでしょうか。
- 群
- その通りです。そのニーズに応えるためにHitachi Content Software for File powered by WEKAをHitachi iQに組み込み、さらに魅力が増しています。
- 天野
- Hitachi iQの優位性は何でしょうか?
- 群
- Hitachi iQの採用事例として、自動車メーカーのディープラーニングの処理での活用があり、80時間かかるワークが、4時間で完了した例*が挙げられます。生成AIを実用に供するための高い精度を実現するべく、大量の学習データの読み込みが行われ、高性能なIO処理を実施する必要があります。
- 天野
- Hitachi iQでは学習シーンのみならず、AIエージェントが、コンピューター処理のスピードで一斉にファイルストレージやブロックストレージに対して、検索を始めるシーンでも効果がありそうですね。
- 群
- Hitachi iQの魅力の1つにHitachi Virtual Storage Platform(VSP)の圧縮機能があり、重複データに対する圧縮はこれまで日立が知財を含めて育ててきた技術が生かされています。
- 天野
- 外に出せないデータを使い、AIの世界を自社データセンター、自社工場、自拠点、自モジュールにAI活用環境を組み込みたいと悩むお客さまの最後の選択肢に入ってくると感じますね。
- 群
- IT系のシステム選定では、プラットフォームの分離調達になる傾向が強く、他方、プラットフォームのコモディディ化も進み、ハード単体で差別化を設計することが難しくなってきていると思います。Hitachi iQは、日立が得意とするストレージをコアに、お客さま価値を訴求するAIプラットフォームソリューションを提供しております。
- 天野
- 一時期COTS(Commercial Off-The-Shelf)の活用などが進んだ時に、そのように各階層で独立した入札になった時期がありました。しかしながら、現在はお客さまが抱える課題は複雑化し、AI活用すら、手段ととらえられてしまうようになってきたため、AIをハード〜実際の課題解決までトータルで、どの会社に相談すべきか検討しないエンドユーザーさまはいないと思っています。
- ディープラーニングの処理での削減効果などは、内容により変化いたします。日立ヴァンタラへぜひ、お問い合わせください。
【EX-SP3】複雑作業の自動化を実現する、フィジカルAIの頭脳を搭載したロボティクス
フィジカルAIの中核となる現場側ロボットに近づいてきました。「複雑作業の自動化を実現するフィジカルAIの頭脳を搭載したロボティクス」の展示ブースをレポートします。
- 天野
- 2種類のロボットを展示している理由を聞かせてください。
- 開発チーム
- 私どもが開発したロボットの頭脳であるフィジカルAIのモデルは、構成が異なる複数のロボットを扱うことができることを伝える目的で、協働ボットタイプのアームロボットと、ヒューマノイドタイプのロボットの2台を展示しました。
- 天野
- デモンストレーションについて詳しく教えてください。実際の展示では、ロボットがケーブルをつかみ、製品を模倣した基板のコネクターに挿し込むデモンストレーションを実施していますが、コネクターが小さいのに器用に動きますね。
- 開発チーム
- コネクターの大きさは約6mm×6mm、高さ約8mm程度です。
従来ロボットのように原点調整(キャリブレーション)の必要はなく、頭上位置にあるカメラ画像や、アーム先に存在するカメラ画像、アクチュエーターと呼ばれる動作箇所にかかる負荷(電流値のしきい値判定)などで検知し、コネクターをアーム間で持ち替えたり、基板のコネクターに挿したりします。 - 天野
- 「人と異なり、ロボットは同じタスクをこなす場合であっても動き方が違う」との説明がありましたが、最初の動作はどのように教えるのでしょうか。
- 開発チーム
- リーダーフォロアーシステムを使います。リーダーアーム(人が操作するアーム)で、リアルタイムにデータを取り込み、覚え込ませて、タグ付けを行います。
動作に対するラベル付けを行い、状態を推定できるようにする処理を組み合わせると、正常動作、リトライなどを実施することもできるようになります。 - 天野
- 近未来の話をすると、簡単な指示を自然言語ですると、フロントAIやエージェンティックAIが、指示の内容を分割(タスク分割)し、それを自動的に組み合わせて、ロボットが動く世界が来ると思っています。たとえば、「コネクターを基板に挿して」と言う処理を、「ケーブルを取る」〜「基板を認識してケーブルを近くまで移動させる」〜「コネクターに挿すときに力を加えすぎないように、カメラとアームの負荷の双方のデータで、押し込みすぎないようにする。」など、大きなタスクを自動的に分解し、状態管理を行いながら動かす必要が出てくると考えていますが、今回の展示には含まれていますでしょうか。
- 開発チーム
- エージェンティックAIの要素は今回は含まれていませんが、現在の研究テーマには入っています。
レポーター 天野光司
日立製作所 AI&ソフトウェアサービスビジネスユニット Strategic Alliance 事業開発部
2004年、日立製作所 システム開発研究所に配属。大みか工場で製造する高信頼多重系システムや多数決システムの研究開発に従事。
2010年頃からは複雑なITシステムや工場DXの高度化に取り組む。
2018年頃からは、グローバルテクノロジーパートナーとの連携や、お客さまとの協創型プロジェクトを推進。
2026年より、研究者として培った知見をベースに、生成AIを活用した新規事業創出や、グローバル企業との連携、顧客協創、社内チームビルディングを横断的に企画・推進する役割を担っている。
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全ての製品名、サービス名、会社名、ロゴは、各社の商標、または登録商標です。
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製品の仕様・性能は予告なく変更する場合がありますので、ご了承ください。

