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お客さまのビジネスに成果をもたらすビッグデータ利活用

第2回 お客さまとの協創によるビッグデータ利活用の事例

永年培ってきたデータベース基盤技術やフィールドサポートのノウハウに加え、最新のAIテクノロジーやデータ分析技術を駆使しながら、ビッグデータをお客さまのビジネスに役立てるソリューションを提供する日立の新しいビジネス。今回は、そのビッグデータソリューション事業のマーケティングとプロモーションの担当者にお話をお伺いします。

第2回目は、ビッグデータを利活用した事例についてお話を伺いました。


船生(ふにゅう)さん(左)、更田(ふけた)さん(右)

──今回は、ビッグデータ活用の事例をご紹介いただけますか。

船生 それでは事例を3つ紹介します。それぞれ、前回お話しした「売上拡大」、「コスト削減」、「リスク低減」の事例になります。

まず1つ目は、流通・小売業における売上拡大の事例です。その小売業さまでは、個々のお客さまの購買嗜好を分析するパーソナル・マーケティングによって、顧客単価を向上したいというニーズがあったのですが、購買嗜好や価値観を定量的に見るための方法がないかということでご相談に来られました。そこでわれわれは各商品に「高品質」や「高級志向」、あるいは「大容量」「価格志向」といった特徴タグをデータ上でひも付けて、お客さま一人ひとりの購買履歴を価値観の視点で分析しました。これにより、たとえば同じ30代の女性でもAさんとBさんの価値観の違いがわかるようになりました。この考え方自体は従来からあったのですが、大量のデータ処理が必要なことから、高速データアクセス技術を活用することで実現できるようになったのです。

また、お客さまの価値観に加えて、天候の情報や近隣のイベント情報など、さまざまな外部のデータを人工知能で掛け合わせて、最も購買の可能性が高い仮説を抽出して効果的な販促施策を実行することなども検討されています。今後、ビッグデータ活用でマーケティングの精度はどんどん上がっていくでしょう。

──ありがとうございます。次は「コスト削減」の事例ですね。

船生 はい、2つ目は製造業の事例です。M&Aを繰り返しながら海外に拠点を拡張してこられたお客さまが、状況の変化に迅速に対応できるグローバル・サプライチェーンを実現し、コスト最適化を図ろうと考えられました。世界的な規模で需要に迅速かつ無駄なく対応するためには、販売情報、在庫情報、原材料の調達価格、さらには工場の稼働状況などをリアルタイムで把握することが必要になります。例えば、ある国で需要があるのに在庫が少ないといった場合、生産を代替できる拠点を他の国から探し出します。その時、最適なグローバル・サプライチェーンをシミュレーションするには、世界中にある各拠点の最新データをタイムリーに取得することが不可欠です。しかし、各国のデータのフォーマットは違いますし、時差もあり、通貨価値の変動も考慮しなければなりません。そこで私たちは各拠点のデータベースにおいて、データが更新されたのをきっかけに自動で最新データを収集する仕組みをつくることでこの課題を解決しました。

──スケールの大きな事例ですね。そして3つ目の事例は「リスク削減」ですね。

船生 これも製造業の事例です。このお客さまは、新興国での工場展開、さらに現地従業員の雇用、現地での販売を考えておられたのですが、大量販売後のリコールを避けるべく、その国での最適な品質を確保することが課題でした。その際にポイントとなったのが、部品(Material)と労働者(Man)と生産装置(Machine)、すなわち「3つのM」のリスク管理です。たとえば、部品については海外では現地調達品の品質のばらつきが多いというリスクがあります。労働者については、ある程度キャリアを積むともっと給料のいい他社へ移るなど定着率が低く、品質維持の障害となっています。また生産装置については故障のリスクがあります。定期的に保守を行うものの、それでも故障は発生し、解決困難な課題となっていました。

それらの対策として、例えば部品の品質管理では、打音の検査を人間の耳ではなくスペクトル解析や振動によって異常値を検知するようにシステム化しました。検査データの蓄積によって精度を上げられるのがデータ活用のメリットです。また労働者については、スキルレベルに依存せずに品質を維持する仕組みを整えました。製造ライン作業の動作は定型化されているので、通常と違うことをしている時には不良品を作り込む可能性が高まります。そこで作業をカメラでモニターしておき、いつもと違う行動を検知した時には、市場に製品が出る前にチェックをすることで不良品を減らせます。生産装置については、さまざまな稼働データをセンサーで採取し、しきい値を超えていないかモニタリングすることで故障前の兆候を検知できるようになりました。

──こうした業務への適用事例は、すべて日立が考え実現したものですか。

船生 いいえ、私たちだけではありません。当然ながら、お客さまは私たちよりも業務に関するノウハウを持っていらっしゃいます。私たちはお客さまのニーズに対して、この技術を使えば効率的にデータを活用できるのでは、といった提案をすることでお手伝いしています。さらに、私たちは知識をいただくことによって、じゃあ製品やサービスをこういうふうに磨こうとか、こういう方向に研究を進めようなどと開発をしていくことができます。お客さまとは、お互いにウィンウィンの関係を築いているのです。

──なるほど。ともに歩んでいきましょう、ということですね。

船生 そうです。つねにめざしているのは、お客さまとの協創によるオープンイノベーションです。私たちはお客さまと最上流の部分で協創し、実際にデータを使うサービスプラットフォームの部分でそこで得たノウハウを具体化していきます。

更田 日立はいろいろな業種のお客さまとお付き合いさせていただいており、私たちはこれまで多くのお客さまから学ばせていただきました。だから私たちのソリューションは、さまざまな業種・分野に応用できるのです。それが日立のアドバンテージであり、それをさらに進めていくことが私たちの使命だと思っています。

──では最後に、今後のビジョンについてお話しいただけますでしょうか。

更田 ソリューションの強化を推進していきます。その1つがデータに関するマネージドサービスです。データのマネジメント全般を、アウトソースしてもらえるようソリューションの充実化を図りたいですね。データのクレンジングや加工だけでなく、データの設計段階から入らせていただいて、最適なモデリングをしていくようなことも視野に入れています。

またオープンソースも活用していきます。例えばSOE(System of Engagement)といわれる、人と人をつなぐシステムが今後ビジネスにおいて重要度を増していきます。その構築の際には素早くPDCAを回していくことが必要になってきます。そのためにはオープンソースを活用していかなければいけません。日立はOSSソリューションセンターという組織を昨年設置しました。これは自社製品だけではなく、オープンソースもうまく活用しながら、お客さまにソリューションを提供することが目的です。

船生 これまでは、主に製造業や流通業などの産業分野に取り組んできたのですが、今後は協創の分野を拡大していきます。例えば金融分野においても私たちの最新の技術が課題解決をお手伝いできると考えていますし、また公共分野における少子高齢化や地方創生などの課題解決も、ビッグデータ活用で今後取り組んでいくべきテーマだと思います。あとはオープンデータの活用です。日立は噴火の予知などにすでにオープンデータを活用し始めていますので、こうした応用事例を増やしていきたいと思っています。

私たちは社会イノベーションを支えるソリューションを、これからも分野を問わず提供していきたいと思います。

──まさにビッグデータ技術を元にしたソリューションが、さまざまな分野で今後は中心になっていくわけですね、本日はありがとうございました。(次回はプロモーションについてのお話を伺います)




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