ページの本文へ

Hitachi

金融ソリューション

量子コンピュータとCMOSアニーリング

〜量子コンピュータの“今”と、半導体技術で大規模最適化計算に挑むCMOSアニーリング〜

【前編】量子コンピュータとは

「量子コンピュータ」。これまでとは桁違いの計算ができる技術である、と日々話題になっています。しかし、その量子コンピュータが私たちの社会生活の中で実際に使えるようになるのは、まだ少し先の話であるということはご存じでしょうか。このコラムでは、量子コンピュータと、その高速な計算に半導体の技術からアプローチし、今日からでも実務に使える利便性を実現させた高速コンピュータ「CMOSアニーリングマシン」についてご紹介します。

量子コンピュータとは

量子コンピュータは、原子や電子といったミクロな物質を扱う学問である量子力学を応用することで、処理能力を飛躍的に高めることができるといわれているコンピュータです。
従来のコンピュータは、「0か1か」といわれる通り、電圧を用いて「0」か「1」を表現する「ビット」を使って計算を行っています。
それに対し、量子コンピュータでは、「0であり1である」という状態をとることのできる「重ね合わせ」とよばれる性質をもつ「量子ビット」の特性を活かしたアルゴリズムを用いることで、非常に高速に解を求めることができるといわれています。

現在開発されている量子コンピュータは、大きく「量子ゲート方式」と「量子アニーリング方式」の2つに分けられます。

「量子ゲート方式」は、「汎用型」と呼ばれ、従来のコンピュータが用いる「論理ゲート」の代わりに「量子ゲート」を用いるため、従来のコンピュータと同じように汎用的な計算が可能と言われています。しかし、大学や企業によっていくつかの実現方式が試されていることからもわかるように、その技術はまだ確立されておらず、実験段階にあります。その実用化は10年、20年先とも言われ、日々研究が進められているところです。

もう一つの「量子アニーリング方式」は、「組み合わせ最適化問題」という種類の課題を解くことに特化した技術です。
“特化する”というと用途が限られるように感じますが、決してそんなことはありません。「組み合わせ最適化問題」とは、「いくつかの選択肢がある中で最も適しているものを選び取る」という種類の課題の総称で、有名な例題として「巡回セールスマン問題」があります。これは、セールスマンが商談のために色々な都市を回る場合、どの順番で回れば一番効率が良いかを求める問題です。回る都市が数か所なら全てのルートを書き出して検証することも可能ですが、10か所、100か所と増えれば、人手で計算することは困難になっていきます。他にも、予算内で最も満足度が高くなる商品の組み合わせを考える、なども「組み合わせ最適化問題」です。こういった種類の計算を非常に高速に解くことができると言われているのが、「量子アニーリング方式」の量子コンピュータです。

組み合わせ最適化問題のイメージ図

この「量子アニーリング方式」を用いた量子コンピュータは、2011年にカナダの会社がすでに実用化に成功しています。しかし、最新型のマシンでも、量子コンピュータの計算に用いる「量子ビット」の数は約5000個が限界です。これは例えば、道路を走る車を制御して交通渋滞の解消を試みる場合、同時に5000台の車の動きしか計算できないため、毎日百万台近くの車が走る首都高速道路で使いたい場合は歯が立たないということになります。
ビッグデータをはじめとした膨大な情報が行き交う現代で、社会課題を解決するために用いるには、今後、さらなる規模の拡大が必要です。

半導体コンピュータと量子コンピュータの比較表

さらに、「量子ビット」という非常に不安定なものを扱う特有の課題もあります。
具体的には、量子ビットを制御する際、マイナス273度という温度を維持しなければならないということ。
常温に晒せば一秒も経たないうちに消えて無くなってしまう量子ビットを、何十〜何百万個と大量に作成し保持するには、大きな設備や高性能な冷却設備、多額の光熱費など、大きなコストが発生するだけでなく、それらを正確に管理する高度な知識をもつ技術者も必要とします。
このように、量子コンピュータを実際に私たちの業務で活用するには、いまだ高いハードルがあるのが現状です。