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株式会社 損害保険ジャパン殿

新災害対策運用管理システム 〜ディザスタリカバリへの対応〜

背景

2001年の米国同時多発テロ、2004年の新潟中越地震で、大規模災害時に企業が業務を継続できる体制を確立することの重要性が再認識されるようになりました。これに関連して情報システムにおいても、迅速に災害から復旧するディザスタリカバリが注目されています。

2004年11月、損保ジャパン殿は、従来の磁気テープ搬送によるバックアップ手法を見直し、基幹業務を対象にした新災害対策運用管理システムを本番稼動させました。

概要

本システムは、日本IBM社が構築した災害対策運用管理システムと当社のストレージ製品SANRISE(*1)とを組み合わせて実現するディザスタリカバリ対応システムです。通常業務処理をおこなっている東京のメインセンター(事務本部)が被災して使用できなくなった場合に、大阪のバックアップサイトで業務を継続するため、日々東京から大阪のバックアップサイトにデータを転送しています。まず、事務本部でDB更新終了後の夜間に、SANRISEの同一筐体内に論理ボリュームを複製します。その後、複製したデータをバックアップサイトに転送し、バックアップサイトでもSANRISEの同一筐体内に論理ボリュームを複製します。

万一、事務本部が被災した場合には、バックアップサイトで複製したデータを使用して、業務処理を継続します。

[イメージ]システム概要図
【図】システム概要図

特徴と効果

本システムの特徴と効果は、次の通りです。

 1. ホストに負荷をかけないデータ転送の実現

SANRISEの機能により、事務本部のデータは、ホストを経由せずにバックアップサイトのディスクに直接転送されます。このため、複製処理でホスト資源を消費せず、業務システムの円滑な稼動に影響を与えません。

 2. 高速バックアップの実現

データ複製・データ転送の際には、SANRISEの差分コピー機能を使用し、前回作成分との差分のみをコピーして前回作成分に反映しています。また、事務本部とバックアップサイト間の接続回線には、100Mbpsの広域イーサネットを採用し、チャネルエクステンダ(*2)が転送データを圧縮してからデータを送信しています。これらとSANRISEの高速処理により、遠隔地への大量データの高速バックアップを実現しています。

 3. 複製の活用による業務継続性の確保

万一、バックアップサイトへのデータ転送中に東京で災害が発生し、正常にデータ転送が終了しなくても、前日の複製データをもとに即時に業務を再開することができます。また、事務本部のコンピュータ環境が復旧した際には、通常のバックアップ処理とは逆の手順で、データを事務本部に転送し、事務本部で業務を再開できる仕組みになっています。

企画者・開発者へのインタビュー

[写真]宮川 洋和 氏
(株)損害保険ジャパン
情報システム部
宮川 洋和 氏

[写真]田中 潤一郎 氏
(株)損害保険ジャパン
情報システム部
田中 潤一郎 氏

[写真]田中 久子 氏
(株)損害保険ジャパン
情報システム部
田中 久子 氏

従来損保ジャパンでは、さまざまなリスクを扱う損保として、被災地以外で業務を継続するための方策を検討してまいりました。そのうちのひとつとして、基幹業務システムが稼動している事務本部が被災したときの対策についても検討しており、1994年に災害対策管理システムを構築しました。当時は、ネットワークコストが高く性能も低かったため、ひと月に一度DBのフルバックアップを磁気テープに取得して陸送し、毎日のログをファイル転送する方式でした。

今回、同システムを見直すにあたり、2002年7月の当社統合時に採用した日立様のSANRISEを全面的に活用することにしました。ディスク同士でデータを直接やり取りできるSANRISEは、システム統合をわずか1年で完了させるのに非常に威力を発揮しました。また、大阪とデータの同期を取る機能以外の部分については、既存の災害対策管理システムを流用することにし、その開発を依頼したIBM様と日立様に本システムの構築を支援いただくことになりました。

今回のシステム構築では、災害発生時に、前営業日の業務開始時点の状態で業務を再開できるようにすることを基本要件としました。さらに、被災地システムの早期復旧も念頭におき、復旧時のデータ回復についても検討しました。特に、日立様にはSANRISE部分の構築、SANRISEの性能評価を中心におこなっていただきました。今回の開発では、2ベンダがそれぞれの役割を果たしつつ、互いに連携をとって全体像の把握につとめていただいたおかげで、何の問題もなく無事に本番稼動を迎えることができました。実際に稼動してみると、複製・データ転送ともに予定時間内に処理を終了しており、バックアップ処理が通常のシステム運用にまったく影響をおよぼしていません。

SANRISEを採用して、最も効果があった点は、管理負荷が大幅に軽減したことです。これまで、アプリケーション担当者が同期を意識してDB/DC機能を利用する必要がありましたが、ハードが同期を取ってくれるSANRISEのおかげで、まったく意識する必要がなくなりました。また、月に何千本と陸送していた磁気テープの煩雑な管理が不要になったことも大きなメリットです。SANRISEに関しては、当社でのこれまでの実績を踏まえてみても、障害も非常に少なく、性能もよいと高く評価しています。

今後も、基幹業務の増加に伴うデータ増大にも迅速に対応し、災害時においても業務を継続できるよう取り組んでまいります。

  • * 本稿は、損害保険ジャパン 情報システム部 宮川システム調査役 田中潤一郎課長代理 田中久子氏のインタビューを編集部でまとめたものです。

[お客さまプロフィール] 株式会社 損害保険ジャパン

(2004年3月末現在)

株式会社 損害保険ジャパン
会社名株式会社 損害保険ジャパン
本社東京都新宿区西新宿一丁目26番1号
代表者平野 浩志
設立1888年10月
総資産5兆0,722億円
正味収入保険料 1兆3,528億円
従業員数15,529人
URL http://www.sompo-japan.co.jp/ (新規ウィンドウを表示)
*1
SANRISEは、(株)日立製作所の日本における商標もしくは登録商標です。
*2
チャネルエクステンダ:チャネルインターフェースと回線を接続する装置。