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デジタルITインフラソリューション

ハイブリッドクラウド実現する次世代インフラ条件

後編:従量課金制サービスとSoftware-Defined Storageによるインフラの変革

本コラムの前編ではハイブリッドクラウドのニーズが高まっている理由とその課題を述べると共に、ハイブリッドクラウドの戦略的な導入にはオンプレミスのインフラを次世代インフラに変革することが必要になることを述べた。オンプレミスのインフラの変革が求められるのは、従来型インフラモデルでは、ハイブリッドクラウド環境やデータ駆動型ビジネスのインフラとして求められる迅速な導入/構築、運用管理の容易性、俊敏性や柔軟な拡張性、経済性(投資の最適化など)、効果的なデータ運用などに対応することが難しいためである。オンプレミスのインフラを変革し、データの運用を改善するソリューションとして現在注目されているのが、従量課金制サービスとSoftware-Defined Storage(SDS)である。

オンプレミスにおけるインフラの従量課金制サービスとは、ベンダーが資産として所有するサーバーやストレージなどのインフラをユーザー企業のオンプレミス環境(自社データセンターやコロケーション)に導入して、インフラリソースの使用量に応じた従量課金制で利用するサービスである。従量課金制サービスを利用するメリットは、インフラに対するユーザー企業の支出をCAPEX(Capital Expenditure:資本支出)からOPEX(Operating Expenditure:運用支出)に変更できることに留まらない。ベンダーが準備している多様な従量課金制のサービスメニューからユーザー企業が自社に最適なサービスを選択して導入できるため、従来型インフラモデルで課題になっていた導入/構築に時間がかかる、初期投資コストの負担が大きい、柔軟に拡張することが難しい、余剰リソースが生じるといった課題を解消することが可能になる。

Figure 2は、オンプレミスでのストレージの従量課金制サービスを利用している企業と利用を計画、検討している企業に対して、その利用理由をたずねたユーザー調査の結果である。上位に来ている回答は「使用量に応じた支払いができる」「容量の拡張や縮小が柔軟にできる」「ストレージ関連コストの最適化」「多額な初期投資を回避できる」「迅速な導入が可能」であった。この結果は、オンプレミスの従量課金制サービスの利用において、ユーザー企業がそのクラウドライクな特徴を高く評価していることを示している。また、従量課金制サービスはインフラをオンプレミス環境で運用するため、Figure 2の回答が示すようにユーザー企業の「自社ポリシーに応じたセキュリティ対応」や「自社ポリシーに応じたコンプライアンス対応」が可能になるなどパブリッククラウドでは得難いメリットも享受できる。

従量課金制サービスを提供するベンダーやそのパートナー(システムインテグレーターなど)はインフラの導入/構築、サポート、運用管理に関するサービスもメニュー化して提供している。こうしたサービスを併せて利用すれば、ユーザー企業はIT部門のインフラ運用管理の負荷を軽減したり、IT部門の要員を開発などに振り向けたりできる。また、ハイブリッドクラウド環境におけるインフラの運用管理の複雑化や運用管理負荷の増大といった課題にも対処しやすくなる。

オンプレミスにおけるデータ運用ではSDSが重要な役割を果たす。データ駆動型ビジネスを推進するためには、自社データセンターで生成、保存されているデータを利活用するだけでは十分ではなく、エッジ(工場、倉庫、店舗、施設、支店/営業所など)で生成される多様なデータを利活用することでビジネス価値をより高められる。そのためには、多様なデータを大量に蓄積するだけではなく、データの運用フェーズ(収集〜準備〜利活用〜保存)に対応して最適なストレージインフラを選択し、データ移行やデータ連携を効果的に実現することが求められる。また、自社データセンター、エッジなどで生成されるデータは、データベースなどで利用される構造化データだけでなく、増加率の予測が困難な非構造化データ(画像/映像データ、センサーデータなど)が急増しており、多様な特性を持ったデータ量の増大への対応とその効率的な運用が必要になる。

こうしたストレージに対する要求の変化には、導入/構築に時間がかかり、柔軟に容量を拡張することが難しい従来型ストレージインフラでは対応が困難である。一方、ソフトウェアとハードウェアが分離した構成を持っているSDSは迅速な導入/構築が可能なほか、データ量の増大に対応して容量を柔軟に拡張できる。また、オンプレミスの自社データセンターやエッジに導入したSDSを連携することで、データの運用フェーズに対応したデータの収集、移行、利活用などを効率的に行うことができる。さらに、SDSを利用してオンプレミスとパブリッククラウドに同じストレージ環境を構築することでハイブリッドクラウド環境でのデータ移行やデータ連携など柔軟なデータ運用の実現も可能になり、ハイブリッドクラウドの課題となっていた「データのサイロ化」の解消を進めることができる。


オンプレミスでの従量課金制サービスやSDSは必ずしも新しいコンセプトではない。しかし、データ駆動型ビジネスに取り組む企業が増加し、ハイブリッドクラウドの利用が進むと共に、オンプレミスのインフラを変革するソリューションとしてその有効性が認識され、国内においても導入が進み始めている。ハイブリッドクラウドを戦略的に構築し、そのメリットを最大限に引き出すことを求める企業にとっては、この2つのソリューションを投資対象として検討する価値は高いとIDCでは考えている。

Figure 2 オンプレミスでの従量課金制サービスの利用理由(ストレージ)

Note:ハイブリッドクラウドを利用している91社の回答 Source:IDC Japan「2021年 国内ストレージ需要動向調査:新しいインフラ提供モデルの台頭 (IDC#JPJ46559521)」
Note: 従量課金制サービスを利用中、または利用を計画、検討している338社が対象、複数回答
Source: IDC調査レポート『2021年 国内ストレージ需要動向調査:新しいインフラ提供モデルの台頭(IDC #JPJ46559521、2021年3月発行)』
森山 正秋

森山 正秋(もりやま まさあき)

IDC Japan
エンタープライズインフラストラクチャ/PCs
グループディレクター

ストレージ、サーバーを含む複数のリサーチグループを統括。アナリストとしては、国内ストレージ調査の責任者として、年間情報サービス「Japan Storage Systems」「Japan Storage Solutions」「Japan Quarterly Enterprise Disk Storage Systems Tracker」などを担当。また、多くのマルチクライアント調査やカスタム調査を手掛けている。IDC Japan主催のIDC Storage Vision Japan、Directions Tokyo、IDC Predictions Japanの講演メンバー。ストレージ業界の各種カンファレンスでもベンダーやユーザーを対象にした多くの講演を行っているほか、その発言は各種メディアで取り上げられている。
IDC Japan入社前より、ストレージ、半導体、電子材料などに関する調査に携わる。IDCを含めて調査/コンサルティング業界での経験は20年以上。

専門の分野/テーマ

  • ◎ディスクストレージシステム
  • ◎ストレージ仮想化などのニューテクノロジー
  • ◎ストレージネットワーキング
  • ◎ユーザーのストレージ利用動向分析
加藤 慎也

加藤 慎也 (かとう しんや)

IDC Japan
エンタープライズインフラストラクチャ
シニアマーケットアナリスト

国内エンタープライズ向けITインフラストラクチャ市場を担当。ストレージやサーバーの出荷動向の調査や予測に加え、技術動向やベンダーのマーケティング戦略などの調査を通じて、ベンダーやユーザーの変化について、主に採用されるハードウェアの視点から分析している。扱ってきた分野には、ビッグデータや科学技術計算のほか、 ODMの採用動向などがある。
IDC Japan入社前は、外資系コンピュータメーカーにて 10年以上に渡りマーケティングやビジネ ス開発に従事。サーバーやストレージを含むデータセンターインフラストラクチャ全般に加え、バーチャルリアリティ ーを含む映像分野のビジネスにも携わっていた。

専門の分野/テーマ

  • ◎ストレージ
  • ◎サーバー
  • ◎ビッグデータインフラストラクチャ
  • ◎科学技術計算
  • ◎データセンターインフラストラクチャ

前編 後編

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