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【アズワン×日立製作所】〜プロジェクトメンバー座談会〜

【アズワン×日立製作所】
〜プロジェクトメンバー座談会〜
データ活用で調達から配送までの計画と改善施策を自動立案。
市場の速い変化に対応したサプライチェーン最適化を実現していきます。

山名 捷太

山名 捷太

アズワン株式会社
データドリブン推進部
データドリブングループ

白川 真帆

白川 真帆

アズワン株式会社
商品購買部
調達企画グループ

谷川 龍児

谷川 龍児

アズワン株式会社
物流企画部
物流企画グループ

川渕 幹久

川渕 幹久

株式会社日立製作所
関西支社
デジタルイノベーション
営業部

塚越 祥美

塚越 祥美

株式会社日立製作所
CPSソリューション開発部

アズワンと日立製作所は、サプライチェーン全体の最適化を支援するシミュレーション基盤の構築に向け、検討を開始しました。この基盤では、サイバー空間上にサプライチェーンをモデル化(デジタルツイン化)して再現することによって、受注から調達・出荷・配送までの各種データを活用した改善施策の評価や、最新の実データを反映した高精度な計画の自動立案を行います。PhaseTのPoC(Proof of Concept:概念検証)として、代表的な品目・拠点を対象に計画や施策を立案・評価し、費用対効果などを検証しました。今後、これらの結果を基にPhaseUの検証に進み、サプライチェーン最適化基盤の構築、実運用をめざします。

アズワンが直面しているサプライチェーンの課題と、日立との協創のきっかけを教えてください。

山名[A]:アズワンは理化学機器の総合商社として、現在約4,800社の代理店さまとともに、研究、産業、医療を中心とした多様な分野に機器や設備、資材を提供しています。
近年は従来のカタログ販売に加えて複数のEC※の販売チャネルが加わり、かつ商品も幅広く取り扱うようになったことで、ありがたいことに新規のお客さまへの販売も増えています。
一方、それに伴うかたちで、これまでとは異なる売上波動が発生したり、配送に関しては2024年問題のドライバー不足への対応に迫られたりするなど、調達・在庫・配送(物流)の各ステージの課題が多様化しているようにも感じています。従来から各部門において各所で改善検討に尽力してきてはいましたが、サプライチェーン全体で見たときに最適なのかが見えていない懸念もありました。
そこでまず、2023年度から調達、在庫・配送(物流)の各ステージのコストの可視化に着手しました。
しかし、コスト基準を持っていざ何かの施策を立案・実行する場合には、企画・現場を巻き込み何度も試行錯誤する必要があり、膨大な手間と時間がかかります。
大きな壁にぶつかっていた時に、当社のDX部門から日立のサプライチェーン最適化サービス(Supply Chain Optimization:SCO)の仕組みを紹介されました。

山名 捷太

白川[A]:アズワンの重要な使命はお客さまの研究活動を止めないことですので、調達部門として在庫品の即日出荷率100%を目標に日々在庫や納期を管理し、現在のところ、即日出荷率95%以上で商品をお届けしています。年々、お客さまの増加とともに取扱商品も増え、現在では約1,200万アイテムの商品を取り扱っています。商品購買部では、商品数が増え続ける中で、お客さまが期待するサービスレベルを維持することに努めてきましたが、将来的なハードルの高さへの不安もありました。そんな時に当社に新設されたデータドリブングループから日立のSCO基盤の話がありました。日々の受注データを活用し、最適な在庫の持ち方を自動立案してくれるシステムと聞き、それなら在庫計画がレベルアップするだけでなく、属人化している作業を標準化できると大きな期待を持ちました。

谷川[A]:物流企画部では全国5カ所の物流・配送拠点を基点として、「ゴム栓一個からでも即日出荷」をミッションに、オペレーションを行ってきました。配送においても増加していくアイテム数や送付先に対し、どうお客さまに対しサービスレベルを向上させていくかのという不安がありました。
また、経験が必要となる仕事が多く、業務の属人化が進んでいることも要因の一つでした。
例えば、配送ルートの改善を行う場合、検討するエリアの選定から膨大なデータを見て全て人が地道に行うため、実際に現場へ落とし込まれるまでかなり時間がかかってしまいます。SCO基盤が構築できれば、シミュレーション上で何パターンものルートを瞬間的に試し、導き出された結果に対してピンポイントにアクションすることができます。
抱えている不安にマッチした理想的な仕組みで実施できれば“かっこいい”と感じました。

川渕[H]:アズワンさまのビジネスは、取扱商品数の増加に伴いお客さまも増加するという特徴がありますので、従来どおりに人の手で運用していると、年々ハードルが高くなっていくと推察しました。また、サプライチェーンでは、調達、保管、輸配送など複数のステージがあり、効率化や改善施策を施しても、こちらのコストを下げたら他が上がってしまうといったパターンに陥りやすいです。そこで、各部門の方々が立案した改善施策を全体最適の観点から評価し、シミュレーションで効果を比較しながら、最適な方法を探す手助けをさせていただきたいと、ご提案させていただきました。

※EC:
Electronic Commerce

日立との協創を選んだ決め手はどのような点ですか。

山名[A]:2023年度はデータドリブングループが発足して間もなかったこともあり、サプライチェーン各所にさまざまな課題があることは認識していながらも、どう解決すべきかは手探りの段階でした。そこで、サプライチェーンのコストがおおむね出たあたりで、複数の会社にシステムを提案いただきたいと依頼しました。その中で最も良い提案をしてくれたのが日立さんです。

白川[A]:そうですね。日立さんのSCOが最も機能的でした。実績と知見が豊富で、メンバーの皆さんが調達や物流の仕組みに精通し、当社の意図をすぐに理解してくださるのもさすがだと思いました。
調達部門にとっての重要課題は在庫管理ですが、そこにアプローチができる提案でした。

白川 真帆

川渕[H]:皆さまのお話を伺って、「在庫の適正化」「コスト削減」という個々の課題を踏まえつつ、もう一歩踏み込んだ観点でデータを活用してサービスや物流システムをつくっていく提案を差し上げました。

山名[A]:日立さんに示していただいた流通や製造業の他社事例が非常に腑に落ちました。多種多様な在庫を持つ各業態のサプライチェーンの可視化ができており、なるほど、こういう仕組みが当社にも必要なのだと感じました。

PhaseTのPoC(概念検証)ではどのような検証を行いましたか。

塚越[H]:2024年の6月から9月の4カ月間でPhaseTのPoCを実施しました。そこでは、SCOの標準機能で、アズワンさまが実現したいことを実現可能かどうかと、その費用対効果を確認、検証させていただきました。実現できるだけではなく、さらにコストを下げることができるかどうかも重要なポイントでした。
例えば、千葉のSmart DCから配送しているエリアを一部他物流センターに変更した場合のコストを試算し、それを数万点規模に戻した場合の削減ポテンシャルも示すようにしました。

白川[A]:在庫の適正化についても検証していただきました。バウンダリーを売り上げ上位300点としたこともあり、サプライヤーとの発注要件と合わない場合がところどころありましたが、出荷量、在庫量のグラフで適正な在庫水準が明確に可視化されていて、大変、理解しやすかったです。商品ごと、商品群ごとに見られるので、在庫を持ちすぎている商品と逆にもっと持つべき商品が分かりました。このような情報があれば、担当者の経験値に依存せず、適正な在庫量が判断できるはずです。

塚越[H]:はい、同時に全体の費用対効果も示し、在庫量がこのくらい下がると、物流コストをこれくらい下げることができるといった削減ポテンシャルも明確にしました。
PhaseTの検証で、アズワンさまの実現したいことは実現できると分かりましたが、SCO標準機能ですべてが足りているかというと、一部、足りないことも発覚しました。具体的にどんな機能を補うかについては、次のPhaseUまでの宿題にさせていただきました。例えば、先ほど白川さまがおっしゃった商品の受発注要件ですが、最低発注数が2万個・追加発注数が100個だった場合、標準機能では2万100個、2万200個といった設定ができないので、このような機能に関しては拡充していくつもりです。また、アズワンさまにはほかにも試行されたい施策がありますので、それらの施策評価もPhaseUの主な目的になります。

川渕[H]:日立のSCOでは、システムに業務を合わせるのではなく、お客さまの業務にシステムを合わせましょうという考え方でシステムを開発しています。サプライチェーンの形は、業態や製品分野によってそれぞれ異なりますし、個々の会社でも違います。また、そこにひも付く業務もそれぞれ違いがあるので、システムの方を現場の業務に合わせて設計していく必要があります。PhaseTでは、標準機能ベースでアズワンさまのサプライチェーンの特徴的な部分をモデル化し、シミュレーションしました。PhaseUではさらに機能を追加し、よりアズワンさまの実態に近いモデルで評価をしていくことになります。

川渕 幹久

SCOの導入によって、アズワンのユーザーさまが得られるメリットはどのようなものですか。

白川[A] :当社のお客さまへのメリットも早い段階で出てくると思います。例えば、当日出荷率は現在、在庫品で約95%ですが、購買担当の私の感覚からするとまだ低いと思っています。SCOの構築によって、在庫の適正化が進めば、欠品が減り、ヒット率も上がっていきます。お客さまから見れば、欲しい時に欲しい量だけすぐに受け取れる体制に近づくので、それがサービスレベル向上につながると思っています。当社からすれば、欠品や納期遅れによる機会損失が少なくなります。それによって、どのくらいの収益が見込めるのか、そのあたりはPhaseUの評価課題になるでしょう。

谷川[A]:物流企画部の方では、すでに効果検証をしている施策があります。
例えばお客さまA社から時間差で複数回注文が入った場合、出荷指示を行うタイミングによっては本来1つの箱に入る商品でも梱包が複数個に分かれてしまうことがあります。当然、梱包数が増えるため配送コストは増え、お客さまへも複数個でお届けとなり手間となります。お客さま単位で注文される時間帯を分析し、最適な出荷指示で梱包をまとめる施策をスモールスタートで実証しました。まだ一部のお客さまのみの施行ではありますが確実に効果が出ています。コスト効果は出ると確信していましたが実際にどのくらい効果があるのか、梱包をまとめることによる現場への作業負担が見えにくかったことで実証できずにいたところ、SCOにより効果を瞬時に可視化できたことでスタートの助けとなりました。今後、業容が拡大していく中では、現場作業の負担解消が課題となってきます。人員や在庫配置も考慮した最適な指示が出せる仕組みと連動させることができれば非常に面白いと感じています。SCOで可視化された結果に対して素早くアクションすることで、社内だけではなくお客さまへのサービスレベル向上にもつながることを実感しました。

谷川 龍児

今後、SCOを活用してどのようなことを実現していきたいか、ビジョンをお願いします。

塚越[H] :アズワンさまと協創させていただいて、最適化に対する意欲が非常に高い会社だと感じました。例えば、最低発注数が大きい商品もあることから、ある拠点に一括で納品された商品を別拠点に送る拠点間輸送もあります。それを一括納入ではなく、複数拠点に納入した場合のシミュレーションもしてみたいとのリクエストをいただきました。各拠点の倉庫キャパシティや商品保管上の制約などもありますから、複数の商品で輸送経路を変えるには複雑な条件設定が必要でしたが、PhaseTで試行して答えが出せるものはできるだけ出すようにしました。

塚越 祥美

川渕[H] :SCOのプロジェクトでは、現場のデータを集める段階からスタートする企業さまも多いのですが、アズワンさまではデータを扱うデータドリブングループだけでなく、各部門がデータをきちんと集め、膨大なデータを整理されていたので驚きました。

白川[A] :谷川の物流企画部もそうですが、商品購買部でもデータを活用することには以前からトライしていました。過去の実績データを活用し、アイテムごとの適正在庫量を算出することはできます。しかし、EC化が進み、アイテムの取扱数や商材が増えていくにつれて、季節やトレンドで需要が変動する商品がある一方、売れ行きを予測しにくい商品もあり、後手になってしまっている現状において、購買担当には先を見越して判断する力が求められます。私のようにキャリア10年の社員もいれば、新入社員もいる中で、今後、どうやって全体で成果を出していくか、行き詰まりを感じていました。私たちが集めたデータを日立のSCOでもっと有効に活用できれば、経験だけではなくデータを活用した理想の在庫管理ができるのではないかと思っています。

山名[A] :規模的にもアイテム数でも、データとAIでなければできない領域ですよね。

谷川[A] :物流部門では、ドライバー不足やCO2削減など業界全体で抱える課題の解決に向け、サプライヤーや同業他社と一体となり、「共同配送」や「共同集荷」などを積極的に行える輸配送網の構築を実現していきたいと考えています。SCOを活用することで自社における配送の最適化を行うだけでなく、業界全体にも拡大した最適化が実現できる可能性を感じており、非常に期待をしています。

山名[A] :ドライバーもですが、在庫の拡大を続けるといつかは物流拠点のキャパシティが不足する課題もあります。この課題を解決するためには、データをうまく活用して在庫や配送の適正化を図り、人の手に大きく依存しないサプライチェーンモデルの確立と、より先端的な物流センターの新設検討が欠かせません。これらの構想についてもSCOを大いに活用した分析、検討が必要になるだろうと考えています。

白川[A] :今回の日立との協創は私にとっては視界が大きく広がる貴重な経験となりました。

谷川[A] :私も同感です。こちらの複雑な要望や意図をすぐに理解してくれた日立の方々からの提案には、気付きがたくさんありました。外部の専門家から自社の課題を診断していただくことはとても大切だと思いました。

山名[A] :当社の業態、現場のやり方に合わせて表現を変え、例え話を交えて「これならうまく動きますよ」と提案をしてくれるスピード感には毎週の定例ミーティングでも感銘を受けていました。

塚越[H] :私たちの反省点は、商品抽出に時間がかかってしまったことです。シミュレーションに入って以降は、早期から良い結果を出せて本当に安堵しています。
サプライチェーン最適化は私の専門領域ですが、初めてお伺いする現場のやり方などもあり日々勉強させていただくことが多かったです。

川渕[H] :私もアズワンさまが会社一丸で改善に挑戦する良い風土をお持ちなので感銘しています。引き続きプロジェクトを前進させ、めざすところに向かってまいりたいと思います。本日はありがとうございました。

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