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コラム・インタビュー

4Mデータを活用して製造工程で発生した変更・変化情報を可視化

製品経歴トレーサビリティは、モノづくりを行う中で発生する不適合品の要因調査の時間を短縮するソリューションである。

従来は不適合品が判明したとしても、その影響範囲の特定や原因分析を迅速に行うことができず、暫定対策コストなど多大なロスコストが発生していた。この要因を現場レベルで掘り下げてみると、紙帳票などに手書きされたアナログデータのデジタル化が進んでおらず、設備情報や作業手順も最新状態に更新できていないといった問題が明らかになってくる。これらの現場からの報告を受けて施策を検討する対策会議も、調査に必要な情報入手に手間取るばかりで迅速な動きを取ることができず、暫定的な対策が多発、恒久化しているのが実情だ。

日立製作所 産業・流通ビジネスユニット
エンタープライズソリューション事業部 産業システム本部 第六システム部 第2G
主任技師の廣喜充氏

そこに輪をかけて襲ったのが先にも述べたコロナ禍である。関係者が一堂に会する対策会議は密が発生することから開催が困難となり、ペアチェックなどの暫定対策もまた対人接触機会を増加させてしまうことから回避しなければならない。

要するに、これまで多くの製造業で日常的に行われてきた暫定対策は、八方ふさがりで立ち行かなくなっている。日立の製品経歴トレーサビリティは、この課題を解決するものだ。日立製作所 産業・流通ビジネスユニット エンタープライズソリューション事業部 産業システム本部 第六システム部 第2G 主任技師の廣喜充氏は「製品経歴トレーサビリティは、製造工程で蓄積された4Mデータを活用し、製品の製造工程で発生した変更や変化に関する情報を可視化します。これにより、工場オペレーションマネジメントとしての変化点管理や品質管理に活用することができます」と説明する。

「製品経歴トレーサビリティ」により不良原因の早期特定が可能になる製品経歴トレーサビリティ」により不良原因の早期特定が可能になる

「製品経歴トレーサビリティ」により不良原因の早期特定が可能になる 「製品経歴トレーサビリティ」により不良原因の早期特定が可能になる(クリックで拡大)

IoTデータを効果的に活用するうってつけのソリューションに

製品経歴トレーサビリティでは、ユーザーの個体管理方法に応じたトレーサビリティを実現している。シリアル番号により該当品を1個単位に個別に特定する「シリアル管理」、個別に管理はしないものの製造ロット番号で該当品を固まりとして特定する「ロット管理」、さらにこれらの管理手法を前提として製品が製造された経路を含めたトレーサビリティを実現する「工程管理」などに対応し、4Mデータである事象データや、装置などから得られる稼働データなどさまざまな取得データの種類や粒度に応じて「変更」や「変化」についての可視化を行う。

「製品経歴トレーサビリティ」の特長。ユーザーに応じたトレーサビリティと、取得データに応じた変更と変化の管理により、不適合品発生原因の分析と影響範囲の特定を迅速化できる「製品経歴トレーサビリティ」の特長。ユーザーに応じたトレーサビリティと、取得データに応じた変更と変化の管理により、不適合品発生原因の分析と影響範囲の特定を迅速化できる

「製品経歴トレーサビリティ」の特長。ユーザーに応じたトレーサビリティと、取得データに応じた変更と変化の管理により、不適合品発生原因の分析と影響範囲の特定を迅速化できる 「製品経歴トレーサビリティ」の特長。ユーザーに応じたトレーサビリティと、取得データに応じた変更と変化の管理により、不適合品発生原因の分析と影響範囲の特定を迅速化できる(クリックで拡大)

なお、ここでいう「変更」と「変化」には大きな違いがある。「変更」は例えば日勤から夜勤への要員シフトなど計画に基づくものをさし、一方の「変化」は何らかの突発的な出来事を受けた一時的な要員追加など、もともとの計画にはなかったものをさす。廣氏は「こうした変更情報と変化情報をしっかり分けて捉えられることが、製品経歴トレーサビリティの強みとなっています」と強調する。

さらに製品経歴トレーサビリティは、変更情報および変化情報をそれぞれ5段階のランクに分けて表示する。事象データについては、4Mデータに関するイベントごとに任意のランクを指定することが可能。稼働データについては、標準偏差を用いた値の発生確率および分布によりランクを付与する処理仕様となっている。

これによって不良発生時に、その対象となるシリアル番号やロット番号の製造工程で発生した変更情報と変化情報を工程別や4Mデータ別に分析し、不良発生の原因究明や対策を実施することが可能となる。分析内容はサマリー画面で確認できる他、工程別詳細画面の情報をCSV形式で出力して関係者間で情報共有できるため、調査や対策検討を行う際にリアルに対面して密になる対策会議を開催する必要はない。

「製品経歴トレーサビリティ」の画面表示例。変更・変化情報を5段階のランクに分けて表示する「製品経歴トレーサビリティ」の画面表示例。変更・変化情報を5段階のランクに分けて表示する

「製品経歴トレーサビリティ」の画面表示例。変更・変化情報を5段階のランクに分けて表示する 「製品経歴トレーサビリティ」の画面表示例。変更・変化情報を5段階のランクに分けて表示する(クリックで拡大)

2020年4月から提供を開始した製品経歴トレーサビリティだが、「4MデータをはじめとするIoT(モノのインターネット)データの準備が整っていれば、早ければ半年程度で導入することも可能です」(廣氏)という。現在では多くの工場でIoTの取り組みが進んでおり、データが整いつつあることを考えれば、製品経歴トレーサビリティはこれらのIoTデータを効果的に活用するうってつけのソリューションとなるのではないだろうか。

廣氏は「導入効果としては品質不良原因特定でこれまで数カ月かかっていたところを1週間に減らせると見込んでいるお客さまもあります」とのことで、ロスコスト削減など定量的な効果も出しやすいという点からも採用を検討する価値があるのではないだろうか。

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