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エネルギー

背景 重要性が高まるエネルギーの広域連系と長距離送電

2011年3月の東日本大震災により、大規模な電源喪失が起こりました。関東地方の一部の地域では、他の地域の電力会社から電力の融通を受けようとしても、連系線の容量と周波数の変換設備容量に制約があったため、計画停電を余儀なくされたのです。さらに、2018年9月の北海道胆振東部地震では北海道全域でブラックアウトを引き起こしたことで、大規模な災害に強い電力インフラのあり方に関して政府で電力のレジリエンス強化に関する委員会やワーキンググループが立ち上げられ、エネルギー政策の重要な柱として議論が開始されました。 また、地球温暖化対策として注目されている再生可能エネルギーの普及おいては、電源立地と消費地の偏在性の問題があり、電源適地で発電した電力を距離の離れた消費地へ無駄なく安定に送電することが求められています。さらに、自由化された電力市場においては、エリア間の電力取引価格差の解消のために、広域的な連系を強化することで、電力取引市場を活性化し経済メリットをより拡大することが期待されるようになりました。

課題 電力系統の連系に最適なHVDC

震災の教訓、再生可能エネルギーの普及、電力取引市場の活性化などの観点から、地域間の電力融通を強化し、電力会社の枠を越えた広域的な電力運用が求められる一方、東日本と西日本とで異なる周波数エリアや、北海道と本州間などの地理的な制約など、その実現にはさまざまな課題がありました。 この電力系統の連系強化のニーズに応える有力なソリューションの一つが、「高電圧直流送電(HVDC:High Voltage Direct Current)」です。 HVDCは、送電を高電圧の「直流」で行うシステムで、送電ロスが少なく、長距離を大量に送電できるうえ、周波数が異なる系統の連系にも適していることが特長です。また、大規模な再生可能エネルギーの系統連系や大需要地への長距離送電など、再生可能エネルギーの主力電源化を実現するためのソリューションとしても注目されています。

ソリューション 飛騨直流幹線プロジェクトにおいて、HVDCシステム構築

日立は1970年以来、これまで国内で設置されたほとんどのHVDCプロジェクトにおいて、技術開発やプロジェクトの取りまとめを担当し、国内の高い電力品質の保持や世界トップクラスの高稼働率を誇る設備の運用に貢献してきました。 日立は、東京中部間連系の重要拠点である中部電力飛騨変換所と東京電力新信濃変電所とを結ぶ飛騨信濃周波数変換設備プロジェクトにおける飛騨変換所向けの他励式HVDC*1 システムを受注、現在、2020年度の運用をめざして構築中です。飛騨変換所は、周波数が異なる東日本と西日本で電力を融通しあう重要拠点。日立のHVDCシステムは重要な役割を担うことになります。

将来展望 自励式HVDC*2を積極的に展開

HVDCは、電力エリア間の融通だけでなく、洋上風力発電やメガソーラー発電など大規模再生可能エネルギーの系統連系、遠隔地から大需要地への長距離送電、さらには離島との連系などで、系統安定化のメリットの大きい自励式HVDCの需要がますます高まると予想されます。 日立は、2014年12月にABB社との戦略的パートナーシップを締結し、2015年11月に合弁会社「日立ABB HDVCテクノロジーズ株式会社」を設立。日立とABB社が互いに強みを持ち寄り、協力してプロジェクトを進めていく体制を確立しました。このパートナーシップにより、システムの全体構成を最適化できる自励式HVDCも積極的に展開していく予定です。 そして、日立は、2019年、中部電力株式会社の東清水変電所の連系容量を30万kWから90万kWに増強する自励式周波数変換装置(30万kW)2基を受注、ABB社製の制御保護装置を含む交直変換装置と、日立製の変換用変圧器を組み合わせてシステムを構築していきます。 日立は、HVDCの豊富な経験と世界最高水準の技術を活かし、電力の安定供給に貢献していきます。

*1 他励式HVDC:オフの際に通過電流をゼロにする必要があるサイリスタなどのパワー半導体デバ
      イスを利用する方式。連系点は系統が強い必要がありブラックスタートは不可。
*2 自励式HVDC:任意の時点でオン/オフの切り替えが可能なパワー半導体を用いる方式。ブラック
      スタートが可能で、連係点の系統が弱くとも連系可能。フィルタ設備は不要か小規模でよい。
      2000年頃から海外市場を中心に増加。

  • 公開日: 2019年12月
  • ソリューション担当: 日立製作所 エネルギービジネスユニット/ 日立ABB HVDCテクノロジーズ

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