立ったまま手漕ぎ舟で渡る
「橋の上からカナル・グランデを見下ろしていたある朝、モーター付きの運搬船に交じって手漕ぎの舟が進んでくるのに気が付いた。ゴンドラと違って漕ぎ手が前後に二人いて、運河の右岸と左岸をジグザグに縫い合わせるように往復している。トラゲットという渡し舟だった。朝の通勤時間帯には対岸に渡るのに利用者が多い。船べりの低い小舟に乗客が立ったまま運ばれていく。遠目に見ると、人間というよりカイワレ大根のパックが流れているようでおかしい……」
ところが、この舟に乗ってみると……! 揺れる舟に手ぶらで立ち続ける、水上都市ヴェネツィアの人々の驚くべき身体技術。
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