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2020年10月2日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
株式会社日立製作所
昭和電工マテリアルズ株式会社
株式会社三井住友銀行
ポーランド・パワーグリッド社
エネルガ・オペレータ社
エネルガ・リニューアブルエナジー社

ポーランド最大規模のハイブリッド蓄電池システムを設置、本格的な実証運転を開始

-風力発電に対応し、系統の安定化と再生可能エネルギーの導入拡大を後押し-

   NEDOは、このたび、委託先である(株)日立製作所、昭和電工マテリアルズ(株)、(株)三井住友銀行と推進する、ポーランドにおける再生可能エネルギー導入拡大に向けたスマートグリッド実証事業において、ポーランド北部グダニスクのビストラ風力発電所に、ハイブリッド蓄電池システム(BESS)を設置し、6月に試行運転を開始、9月25日から、本格的な実証運転を開始しました。本実証事業は、日本の系統安定化技術と蓄電技術を活用し、電力系統の安定運用を実現しつつ、送配電線設備投資を抑制しながら再生可能エネルギーの導入拡大を後押しすることを目的とし、2019年10月に稼働させた、系統安定化システム(SPS)に続き、ポーランド気候省と共同で取り組みを進めています。

   今回導入したハイブリッドBESSは、高出力のリチウムイオン電池と大容量の鉛蓄電池を組み合わせることにより、高性能と低コストを両立させたポーランド最大規模の蓄電池システムです。実証運転により、風力発電の短期的な変動を緩和する機能や、需給バランスを調整するために必要な予備力を提供する機能など、その有効性を検証します。

[画像]図1 ビストラ風力発電所に併設したハイブリッドBESS建屋
図1 ビストラ風力発電所に併設したハイブリッドBESS建屋

1.概要

   ポーランド共和国(以下、ポーランド)は、EU指令に基づき、再生可能エネルギー比率を引き上げることを計画しており、特にポーランドの北部地域は、風況に恵まれることから風力発電の大量導入を目指しています。一方、電力インフラ設備の多くは、建設から長い期間が経過しており、風力発電を大量に導入するためには送電系統の余力が不足していることや、需給バランスの調整を担う揚水発電所が老朽化していることから、電力設備の更新や増強が急務となっています。さらに、今後は、風力発電の大量導入に伴う系統の不安定化や需給バランス調整力不足への対応が課題と考えられており、経済的な負担を抑えながら、風力発電をはじめとした再生可能エネルギーの大量導入を可能にすると同時に、電力系統を安定させるシステムが求められています。
  このような背景のもと、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、2017年3月に、ポーランドにおける再生可能エネルギーの導入拡大に向けた「スマートグリッド実証事業※1」に関する基本協定書(MOU)を、ポーランド気候省(Ministry of Climate、旧エネルギー省)と締結※2しました。同時に、委託先として選定した株式会社日立製作所(以下、日立製作所)、昭和電工マテリアルズ株式会社(以下、昭和電工マテリアルズ)および株式会社三井住友銀行(以下、三井住友銀行)は、ポーランド唯一の国営送電会社であるPolskie Sieci Elektroenergetyczne S.A.(以下、ポーランド・パワーグリッド社)とポーランド北西部の配電会社であるENERGA-OPERATOR S.A.(以下、エネルガ・オペレータ社)、ポーランド北西部の発電会社であるEnerga OZE S.A.(以下、エネルガ・リニューアブルエナジー社)の3社と協力し、現地調査、設備の設計、設備機器の製造および輸送、据え付け・試運転を進め、2019年10月1日には系統安定化システム(SPS[Special Protection Scheme])の実証運転を開始しました※3

   今般、NEDOは、これらの委託・協力企業とともに、ポーランド北部グダニスクのビストラ風力発電所にハイブリッド蓄電池システム(BESS[Battery Energy Storage System])の設置を完了し、ポーランド気候省と共同で9月25日より本格的な実証運転を開始しました。
  本実証事業で導入したハイブリッドBESSは、昭和電工マテリアルズの高出力リチウムイオン電池(1MW-0.47MWh)、大容量鉛蓄電池(5MW-26.9MWh)および2種類の蓄電池をハイブリッド制御する監視制御装置(BESS-DCS[Distribution Control System])と日立ABBパワーグリッド社製パワーコンディショナー(6MW)(PCS[Power Conditioning System])から構成され、高性能と低コストを両立させた、ポーランド最大規模の蓄電池システムとなります。
  今般導入したハイブリッド蓄電池システムを先般導入した系統安定化システムにより制御し、平常時には風力発電の短期的な変動緩和ならびに需給バランスを調整するための予備力として運用し、系統事故時には送電線の過負荷解消に活用することで、風力発電の出力を最大限有効活用することが可能です。今回の実証において、各機能の有効性を検証し、ポーランドにおける風力発電をはじめとした再生可能エネルギーの導入拡大に寄与していきます。
  また、併せて、日立製作所と昭和電工マテリアルズ、三井住友銀行は、システムのビジネスモデルとその普及の可能性やファイナンススキームの検討についても共同で推進します。

2.今回の実証内容

テーマ①:風力発電に対応したハイブリッド蓄電池システム
[委託先:日立製作所、昭和電工マテリアルズ]

  風力発電は風速の変動に伴い発電量が変動するため、風力発電が大量に連系した電力系統では短期的な出力変動を緩和すると同時に、発電量と電力需要の変動がもたらす需給バランスの不安定化を調整するため、適切な予備力を提供する必要があります。
  今回の実証運転では、出力特性に優れるリチウムイオン電池と容量単価の低い鉛蓄電池を、要求性能を満たすように最適に組み合わせて構成したハイブリッドBESS(図2)を用います。各電池を最適に配分し、制御することにより、平常時には以下の機能を検証します。

(1)風力発電の短周期変動緩和
(2)周波数制御用予備力の提供
(3)需給バランス調整用予備力の提供
(4)揚水発電相当の予備力の提供
(5)電力需要シフト対応

   さらに、系統事故時には、潮流回り込みにより発生する送電線過負荷解消に蓄電池を活用し、系統増強の代替としてより広い範囲で蓄電池システムを活用する可能性もあわせて検証します。これらの複数の機能の検証を通し、リチウムイオン電池と鉛蓄電池を組み合わせたハイブリッドBESSの経済性を評価します。

[画像]図2 ハイブリッドBESSの特性イメージ
図2 ハイブリッドBESSの特性イメージ

テーマ②:系統安定化システムおよび蓄電池システムのビジネスモデル、普及可能性の検討
[委託先:日立製作所、昭和電工マテリアルズ、三井住友銀行]

  系統安定化システムやハイブリッド蓄電池システムの利点を明確化し、ビジネスモデルおよびファイナンススキームを検討します。

【注釈】

1  スマートグリッド実証事業
案件名:エネルギー消費の効率化等に資する我が国技術の国際実証事業/ポーランド共和国におけるスマートグリッド実証事業
事業期間:2016年度〜2021年度
2  基本協定書(MOU)を締結
参考:NEDOニュースリリース 2017年3月17日「ポーランドで再生可能エネルギー導入拡大に向けたスマートグリッド実証事業を開始」
3  系統安定化システム実証運転を開始
参考:NEDOニュースリリース 2019年12月3日「ポーランドで電力系統の安定化システムの実証運転を開始」

お問い合わせ先

(株)日立製作所 サービス&プラットフォームビジネスユニット 制御プラットフォーム統括本部
エネルギーソリューション本部 電力システム設計部 担当:丹宗

以上

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