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企業情報ニュースリリース

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2016年5月27日
国立大学法人東北大学電気通信研究所
株式会社日立製作所
株式会社日立ソリューションズ東日本
文部科学省研究振興局参事官(情報担当)

通信広域網が途絶した状況においても、
継続的な情報サービスの提供を可能にするデータ複製方式を開発

コストを抑えた耐災害情報プラットフォームの構築が可能に

  国立大学法人東北大学電気通信研究所(所長:大野 英男/以下、東北大)、株式会社日立製作所(執行役社長兼CEO:東原 敏昭/以下、日立)、株式会社日立ソリューションズ東日本(取締役社長:八田 直久/以下、日立ソリューションズ東日本)は、大規模災害によりインターネットなどの広域網が途絶し、遠隔地にバックアップしたデータが利用できない状況においても、被災地内でデータを保護し、継続して情報サービスの提供を可能にするデータ複製方式を開発しました。県や市レベルの自治体地域各所に設置したサーバー24台のうち、同時に被災する可能性の低いサーバー間でデータを複製し合うことにより、50%のサーバーが損壊しても、94%のデータが保護できることをシミュレーションで確認しました。データの消失リスク*1に応じてデータを複製する数を変えることにより、従来方式と比較して、半分のデータの複製数で同じ量のデータを保護することができます。本技術により、コストを抑えた耐災害情報プラットフォームの構築が可能となります。

  高度情報化社会の急速な進展により、様々な情報を取り扱う社会インフラの重要性はますます大きくなっています。近年では、広域災害時においても継続的な情報サービスを提供するため、インターネットを介して遠隔地にデータを複製するディザスタリカバリサービス*2などが提供されています。しかし、東日本大震災では、地域内ではネットワーク環境が残存している場所があったものの、遠隔地に繋がる広域網が損壊しました。そのため、遠隔地に複製されたデータへのアクセスが不可能となり、発災直後に必要となる住基情報や医療情報などの重要なデータを継続的に提供することが課題となりました。

  このような背景を踏まえ、2012年9月より、東北大、日立、日立ソリューションズ東日本は、本課題を解決する共同研究を開始しました。県内や市内の医療機関、自治体庁舎など近隣区域に分散して設置したサーバーにデータを複製し、データの複製元と複製先のサーバーが同時に損壊するリスクが低くなるよう、サーバーのペアを選択し、データの保護を行う「リスク考慮型データ複製方式」を開発してきました*3。しかし、この方式では、データの複製数をすべてのサーバーで同一にしていたため、データの残存割合を上げるために複製数を増やすと、その格納のための追加コストが増大し、コストとデータ保護のバランスをとることが困難でした。また、複製数を増やすと複製先を決定する計算時間が膨大になるという課題がありました。

  そこで今回、追加コストに影響するデータの複製数を抑えつつ、大規模災害発生後のデータ残存割合を上げる「コスト・リスク考慮型データ複製」方式を開発しました。この方式では、データの消失リスクが低いと想定されるサーバーはデータの複製数を少なくし、消失リスクが高いと想定されるサーバーは複製数を多くすることで、コストとデータ保護のバランスを取ります。また、複製の回数ごとに複製先を決定する最適化問題を解く手法を開発し、計算時間の短縮を図りました。

[画像]図1. コスト・リスク考慮型データ複製方式の概念図(サーバー台数4、平均複製数1.5の例)
図1. コスト・リスク考慮型データ複製方式の概念図(サーバー台数4、平均複製数1.5の例)

  図1に示した、サーバー台数4、平均複製数1.5(6台のサーバに複製)とした「コスト・リスク考慮型データ複製方式」において、一回目の複製では、各サーバーのデータ消失リスクに応じて、そのリスク低減に適切なサーバーを選択し、複製先を決定します。このとき、一回目の複製を行った後でもデータ消失リスクが高いと判断されるサーバーについては、二回目の複製の複製元として、再度リスクの低減に適切なサーバーを選択し、二回目の複製の複製先を決定します。ここでは平均複製数を1.5と制限したため、データ消失リスク値が高い上位50%のサーバーC、Dを二回目の複製の複製元として選ぶことになります。

  今回、仙台市近郊の25平方キロメートル内にある24の医療機関にサーバーを1台ずつ配置した構成を想定し、現実に近い災害モデル*4を用いて本方式をシミュレーションで実証しました。その結果、図2に示すように、コスト・リスクを考慮せずに複製する場合と比較して、平均複製数を半分の1.5とした条件下でも、50%のサーバーが損壊した際、94%のデータが保護できることを確認しました。このケースでは、複製のための追加コストを2分の1に削減します。また、複製回数ごとに複製先を決定する最適化問題を解く手法の開発により、サーバー数100台の構成で平均複製数2の条件下において、「リスク考慮型データ複製方式」では、複製先決定に2,500秒かかっていた計算時間を、本方式では0.6秒まで削減することができました。

  今後は、開発した「コスト・リスク考慮型データ複製方式」をサーバーに搭載し、東北大の3キャンパスに多数のサーバーを配置して大規模検証環境を構築、実証実験を行います。なお、実験には、一般社団法人宮城県薬剤師会(会長:佐々木 孝雄/以下、宮城県薬剤師会)と連携して作成した、「電子お薬手帳アプリケーションシステム」を用いる予定です。東北の復興と発展に貢献することを目的として震災後設立された「東北IT新生コンソーシアム」と連携し、東北地域のIT技術振興に資する技術開発を進めていきます。

  本技術開発は、文部科学省の委託研究である「高機能高可用性情報ストレージ基盤技術の開発」プロジェクト(プロジェクトリーダ:東北大学電気通信研究所教授 村岡 裕明)として実施されたものです。本成果の一部は2016年6月9日(木)〜10日(金)に東北大学で開催される電子情報通信学会磁気記録・情報ストレージ研究会で発表する予定です。

[画像]図2. コスト・リスク考慮型データ複製方式によるデータ残存割合向上効果(サーバー台数24)
図2. コスト・リスク考慮型データ複製方式によるデータ残存割合向上効果(サーバー台数24)

*1
データの消失リスクは、平時にそのデータをサービスしているサーバー(複製元サーバー)と、災害などに備えてそのデータの複製をもつサーバー(複製先サーバー)が同時に損壊するリスクとして定義。
*2
遠隔地へのデータのバックアップなど、災害で被害を受けたシステムを復旧・修復する仕組みを提供するサービス。
*3
2014年4月24日ニュースリリース「広域災害時でも情報を失わず、継続的なサービス提供を実現する災害に強いストレージシステム技術を開発」 http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2014/04/0424a.html
*4
今回のシミュレーションでは、より現実に近い条件とするため、国立研究開発法人防災科学技術研究所が提供する地震ハザード情報サービスJ-SHISによる、今後30年で発生する宮城県近隣に影響のあるすべての地震を考慮した災害モデルを用いて実証。

お問い合わせ先

国立大学法人 東北大学電気通信研究所

21世紀情報通信研究開発センター [担当:中村]
〒980-8577 仙台市青葉区片平二丁目1番1号
TEL : 022-217-5062

株式会社日立製作所

研究開発グループ 技術統括センタ 研究管理部 [担当:廣岡]
〒244-0817 神奈川県横浜市戸塚区吉田町292番地
TEL : 050-3135-3409(直通)

株式会社日立ソリューションズ東日本

研究開発部
〒980-0014 仙台市青葉区本町二丁目16番10号
TEL : 022-266-2194

以上

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