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企業情報ニュースリリース

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2016年2月3日

信号品質が劣化した環境下で高速データ伝送を実現する
低消費電力送受信機を試作

伝送損失50dBで25Gb/sデータ伝送を実現し、銅線ケーブルで情報機器間を10mまで接続可能に

  株式会社日立製作所(執行役社長兼COO:東原 敏昭/以下、日立)は、データセンターに設置されるストレージやサーバーなどの情報機器間をイーサネット®*標準規格IEEE 802.3bj*1で定められている5mを上回る10mの銅線ケーブルで、伝送速度25Gb/sの通信を実現する低消費電力送受信器を試作しました。これは、信号レベルが1/300に低減する通信環境(伝送損失*250dB)でも高速データ伝送が可能になることを意味します。イーサネット®標準規格IEEE 802.3bjでは、信号線1本あたりのデータ伝送を、従来の10Gb/sから25Gb/sとすることが決定されており、従来の接続構成を変更することなく、低消費電力で25Gb/sのデータ通信を実現する技術が求められています。今回試作した送受信機により、25Gb/sデータ伝送に規格が変更になった際においても、高価な光ファイバーを敷設することによる構成変更を伴わずに情報機器の接続が可能となります。また、電力効率についても0.269pJ/bit/dB*3と世界トップクラスであり、低消費電力で高速データ伝送を実現します。

  ビデオストリーミングやクラウドサービスなど、膨大なデータ通信を伴うサービスが拡大し、今後、様々なモノをインターネットに繋ぐIoTの普及により、さらなるデータ通信量の増加が予想されます。これに伴い、情報機器の通信速度向上が求められており、イーサネット®標準規格IEEE 802.3bjでは、信号線1本あたりのデータ伝送を、従来の10Gb/sから25Gb/sとすることが決定され、今後本格的な普及が見込まれています。
  伝送速度25Gb/sの高速通信においては、10Gb/sの通信に対し、銅線ケーブルの伝送損失が倍以上に大きくなります。イーサネット®標準規格IEEE 802.3bjでは、5m以上の長距離伝送は高価な光ファイバーの利用が想定され、新規に光ファイバーを敷設する接続構成の変更が懸念されていました。そのため、銅線ケーブルの通信距離を伸ばし、従来と同じ接続構成かつ低消費電力で伝送速度25Gb/sの高速データ伝送を実現可能にする技術が求められていました。

  そこで日立は、通信速度25Gb/sのデータ伝送を10mまで銅線ケーブルで通信することが可能な低消費電力送受信機を試作しました。試作した送受信器を用いて、信号レベルが1/300に低減する通信環境(伝送損失50dB)でデータ伝送を行ったところ、イーサネット®標準規格IEEE 802.3bj規格で定められている信号の誤り率(ビットエラーレート)10-12*4以下という高品質な信号伝送に成功しました。
  今回開発した送受信器技術の特長は、以下の通りです。

1. 1mV級*5の微小信号を判定する低消費電力判定回路技術

  データの伝送は、受信した信号を、判定回路において0か1のデジタル値に判定することで実現しています。一般に判定回路は、信号レベルが低減した入力信号を増幅し、信号間干渉*6を打ち消す補正を加えてデジタル値の判定を行いますが、従来の判定回路では、判定開始までの遅延時間により高速な信号の判定精度が低下するという課題がありました。そこで、信号の増幅と補正を一体化した回路にして連続動作を実現したことで、間欠動作による判定開始までの遅延時間がなくなり、また、25Gb/sの高速信号に対しても動作電力の増加を招かず、低消費電力で判定精度を大幅に向上させることができました。これにより、10mの銅線ケーブルを用いた伝送速度25Gb/sのデータ伝送において、1mV級の微小信号を判定することが可能になり、また電力効率0.269pJ/bit/dBと低消費電力で実現することが可能となりました。

2. 高精度なデータ伝送を長時間実現するオフセット*7キャンセル回路技術

  高品質なデータ伝送を実現するためには、送受信機は、温度や電源電圧などの環境変動、また製造ばらつきに対しても高精度なデータ判定を長時間保ち続けなければなりません。従来、環境変動や製造ばらつきに起因する信号のずれ(オフセット)によって、高精度なデータ判定を長時間保つことができず、伝送品質を劣化させるという課題がありました。そこで、オフセット量を明確に検出する検出器を用いて、長時間動作している中で変動するオフセット量を補正し続けるオフセットキャンセル回路を考案しました。これにより、長時間にわたり高精度なデータ判定を保ち続けることができ、信号の誤り率を劣化させることなく高い品質のデータ伝送を実現することが可能になりました。

  今回試作した送受信機の性能を測定するため、日立金属株式会社製ケーブルOMNIBIT®*10mを用いて、伝送損失が50dBの送受信機間を伝送速度25Gb/sで高速通信する実証実験を行いました。その結果、電力効率が0.269pJ/bit/dBと世界トップクラスでありながら、信号の誤り率(ビットエラーレート)がイーサネット®標準規格IEEE 802.3bjで定められている10-12以下という高品質な通信が出来ることを確認しました*8

  日立は今後、今回試作した送受信機を搭載した評価用モジュールを開発し、実用化にむけた実証実験を行い、高速有線通信技術の研究開発を進めていきます。

  本成果は、2016年2月1日〜4日に米国サンフランシスコで開催される「ISSCC」にて発表する予定です。

*
「イーサネット®」は富士ゼロックス株式会社の登録商標です。
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「OMNIBIT®」は日立金属株式会社の登録商標です。
*1
イーサネット®標準規格IEEE802.3bj: データ転送方式の一つで、一般的に最も使用されている技術規格。イーサネット®標準規格IEEE802.3bjとは、100Gb/sを伝送する規格で、1レーンで25Gb/sの伝送を行い4レーンで100Gb/sを実現する方式。IEEEは、The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.の略。米国に本部を置く電気・電子技術の学会。
*2
伝送損失: データ伝送時に信号の大きさを減衰させる量のこと。
*3
電力効率0.269pJ/bit/dB: 消費電力をデータレートと伝送損失で割った値を電力効率として定義。小さいほど少ない消費電力で高速かつ遠距離まで通信できることを表す。ここではアナログフロントエンド部のみの電力効率を計算している。
*4
信号の誤り率(ビットエラーレート)10-12: 1兆個データを送った際に1個データのエラーが起きることを示す。
*5
1mV級: 判定器で判定できる最小振幅。これ以下の振幅は誤った値に判定される。
*6
信号間干渉: 受け取った信号がデータ周期一つ分前の信号の影響を受けて値が変わること。
*7
オフセット: 信号の中心値が0からどれだけずれたかを表す。
*8
実証実験では、伝送損失51dBの環境で10-12以下という高品質な通信が出来ることを確認している。

[画像]試作した低消費電力送受信機
試作した低消費電力送受信機

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 研究開発グループ 情報企画部 [担当:木下、安井]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地
電話 042-323-1111(代表)

以上

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