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企業情報ニュースリリース

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2014年4月7日

高速鉄道車両や欧州向け鉄道車両の開発強化に向けた風洞設備を開発

  株式会社日立製作所(執行役社長兼COO:東原 敏昭/以下、日立)は、このたび、高速鉄道車両の騒音低減や、欧州向け鉄道車両の強風に対する安全性向上を目的とした風洞設備を開発しました。
  本風洞設備は、車両の走行によって発生する気流を再現し、その気流から発生する騒音を予測するものです。今回、気流を作り出す送風機から気流の吐出口に至る流路の長さを従来の約2倍に伸ばし、傾斜部分の角度を緩やかにすることにより、気流の最大速度を従来の時速180kmから時速420kmまで高速にすることが可能になりました。これにより、高速鉄道が最高速度で走行する際に発生させる気流の状態に近づかせることができ、走行により発生する騒音を高精度に予測することが可能になりました。
  また、本風洞設備は、欧州規格EN14067-6*で定められている車両の安全性評価仕様に準拠した機能も有しており、欧州向けの車両開発に必要な強風に対する車両安全性の事前検証が可能となりました。日立は本設備を活用し、より安全・快適な鉄道車両開発を推進します。

  世界中で鉄道の整備計画が進む中、飛行機との競争力強化の観点から、都市間鉄道の速度は高速化傾向にあります。しかし、高速化する際には、走行安全性や車両から発生する騒音などの課題が顕在化しており、事前評価が必要不可欠です。事前評価のための実物大車両による事前走行試験の実施は容易でないため、気流に関わる車両特性の評価については、風洞設備で実際の車両の約30分の1の模型を用いて実験を行うのが一般的です。
  日立では従来から、自社で保有する風洞設備を活用して鉄道車両の開発を進めてきましたが、今後のさらなる高速化や多様な評価ニーズに対応するため、能力を大幅に向上させた風洞設備を開発しました。開発した設備の特長は以下の通りです。

(1) 車両の高速化に対応した騒音予測精度の向上
  鉄道車両が走行する際の気流から発生する騒音(以下、空力騒音)は、速度のおおよそ6乗から8乗に比例することが知られており、走行速度が上がるに従って、車両からの発生騒音に占める空力騒音の割合が顕著となります。そのため、空力騒音を車両の模型を用いた実験で高精度に予測するには、風洞設備で発生させる気流の速度を実車両の走行に相当する速度に合わせることが重要です。日立では従来から、自社で保有する低騒音風洞で車両の模型を用いた実験を通じて実車両の空力騒音を予測しています。しかし、従来の低騒音風洞では発生させることが可能な気流の最高速度が時速180kmであったため、高速鉄道車両の空力騒音を予測する際は、速度の差分を勘案した補正が必要となり、実際の空力騒音と予測した空力騒音の誤差を生む一つの要因となっていました。
  今回日立では、次世代高速鉄道の多くが最高速度として時速350km〜400kmを想定している状況を踏まえ、気流の高速化に取り組みました。高速の気流を発生させるため、気流の吐出口までの流路の断面積を緩やかに小さくすることが必要です。数値流体解析により、流路の断面積の減少率を最適化し、従来の自社で保有する風洞設備と同等の低騒音環境を維持しつつ、最高気流速度時速420kmを実現しました。これにより、実車両で発生する空力騒音の高精度な予測が可能となります。
(2) 欧州規格に準拠した車両安全性評価設備の確立
  欧州規格EN14067-6では、鉄道車両が強風を受ける際の車両の安全性を評価する風洞設備の仕様が定められており、今後欧州へ新型車両を導入する際には、車両の開発段階で本規格が定める風洞設備で車両の模型を用いた実験が要求される方向にあります。
  そこで日立では、今回開発した風洞設備に付帯するオプション設備として、欧州規格に準拠した車両安全性評価設備を開発し、規格が定める設備条件、および標準車両模型による計測データの再現性を満足し、本設備が欧州規格に準拠することを確認しました。

  本設備を活用することにより、車両から発生する騒音や走行安全性、さらには走行に必要なエネルギー量など、気流に関するさまざまな車両特性を評価することが可能となります。また本設備は、風力発電システムなど、空気の流れに関する多種多様な技術課題にも対応できるよう、気流の吐出口および吸込口の形状やサイズについて、複数の設備を備えています。今後、本設備を研究開発に活用することで、鉄道車両をはじめ、製品の形状や性能などが気流と密接に関係する製品の品質向上と開発のスピードアップに貢献していきます。

  • * EN14067-6 : 鉄道車両における、横風評価のための試験手順および要求事項を定義。風洞実験における、車両模型の製作および設置方法、また風洞設備で発生させる気流の質(均質性や乱れ)に対する制限値等を定義している。

[画像]図1 開発した風洞設備の概観:測定室(無響室)内 [画像]図2 車両安全性評価設備の概観

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 日立研究所 企画室 [担当:影山]
〒319-1292 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号
電話 0294-52-7508(直通)

以上

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