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2007年5月18日

光ディスクの再生信号出力を10倍に増幅する光学系基本技術を開発

片面200ギガバイトの光ディスクの実現に向けた、記録層の多層化が可能に

  日立製作所中央研究所(所長:福永 泰/以下、日立)は、このたび、光ディスクの再生信号出力を10倍に増幅する光学系の基本技術を開発しました。本技術は、2つの光の干渉を利用して再生信号を増幅する光検出法を光ディスクに応用させたものです。本技術により、光ディスクの反射光が弱くても再生信号の正確な読み取りが可能となり、記録層の数が増えることで反射光が弱くなるという、多層光ディスクの根本的な課題が解決され、4〜8層で片面100〜200 ギガバイトの記録再生が可能なブルーレイディスク(Blu-ray Disc)装置の実現が期待されます。

  DVDなどの光ディスクの記録密度は、記録再生するレーザ光を細く絞り込んだ「光スポット」の大きさで決まり、光スポットは、レーザ光の波長が短く、対物レンズの解像度が高いほど小さくできるという特徴があります。しかし、近年発売されたブルーレイディスクでは、短波長の青紫色半導体レーザと顕微鏡並みの高解像度レンズを用いており、すでに光スポットの微細化の限界に達しています。一方、パソコンや録画装置などに搭載されているハードディスクはさらなる大容量化が進んでおり、そのバックアップメディアとして光ディスクを使用するために、この動きに見合った高密度化が求められています。こうしたことから、光スポットを小さくしなくても高密度化が可能な、記録層の多層化技術が注目されています。

  多層光ディスクでは、重なり合う複数の記録層を通して一番奥の記録層にも読み書きをするため、手前の層が妨げになり、少ない信号光量しか検出することができません。また、これを緩和するために手前の層の反射率を低くしておく必要があり、手前の層の信号光量も少なくせざるを得ませんでした。信号光量が低下すると、光検出器や電気回路で発生する電気的なノイズに信号が埋もれてしまい、信号読み取りに誤りが発生する可能性が高くなります。読み取った信号を電気的に増幅することは可能ですが、この場合、ノイズも同様に増幅されてしまうという問題がありました。

  そこで日立では、こうした問題を解決するために、光の干渉を利用して検出信号を増幅する「ホモダイン検出法」を光ディスクに応用する技術を新たに開発しました。ホモダイン検出法とは、レーザ光源からの光をあらかじめハーフミラーなどによって2系統に分け、その一方を信号で変調し(以下、信号光)、再生するときに、もう一方の変調していない光(以下、参照光)と干渉させることによって信号を増幅する技術です。今回は、このホモダイン検出法を光ディスクに応用するために、現行の光ディスクの光学系と親和性の高い光学系技術を開発しました。本技術の特長は、以下の通りです。

1. 偏光プリズムによる参照光生成と偏光差動検出

  従来から、光ディスクからの信号光を損失なく信号検出に利用するために、レーザ光源からの光を反射させてディスクに照射させるとともに、光ディスクからの信号光を透過させて検出器に入射させる「偏光プリズム」が使われています。今回はこれに加え、レーザ光源と偏光プリズムの間にレーザ光の位相を180度回転させる1/2波長板を設置して、偏光プリズムを透過する光を生成し、ホモダイン検出法の参照光にしました。この参照光をミラーで反射させ、再度偏光プリズムに通すことにより、光ディスクからの信号光と干渉させます。この干渉した光(干渉光)を高い感度で検出するために、光磁気ディスクで用いられている偏光差動検出方式を応用しました。これは、検出用の偏光プリズムを新たに設け、この偏光プリズムを透過した干渉光と、透過せずに反射した干渉光をそれぞれ検出することにより、差動信号を得る方式です。

2. 光路差揺らぎを補償する差動検出

  ホモダイン検出法では、参照光の光路長と信号光の光路長の間の差が揺らぐと、安定した信号の増幅ができず、光ディスク装置にホモンダイン検出法を応用する場合、光ディスクの回転によるブレのため、必然的に光路長が揺らいでしまいます。そこで、信号光と参照光を合成した干渉光をハーフミラーで2つに分岐させ、一方を上記(1)の偏光差動検出器へ送るとともに、もう一方を1/4波長板で位相を90度ずらしたのちに、もう1組別に設けた偏光差動検出器へ送り、2つの差動信号を得ます。この2つの差動信号を演算することにより、参照光と信号光の光路差の揺らぎを打ち消すことができます。

  今回、考案した光学系と同じ構成の実験システムを構築し、光ディスクの反射光を擬似的に生成して原理実験を行い、参照光の強度を信号光の100倍に設定することにより、少ないノイズで再生信号を10倍に増幅できることを確認しました。このときの参照光の強度は、記録型多層光ディスクで使われているレーザ光源の書き込み時のレーザ出力より小さな値であり、現行のレーザ光源でも対応が可能です。これにより4〜8層の記録再生が可能となり、片面100〜200 ギガバイトのブルーレイディスク装置の実現が期待されます。

  なお、本技術は、5月21日から米国オレゴン州ポートランドで開催される光ストレージ技術に関する国際会議「Optical Data Storage Topical Meeting 2007」にて発表する予定です。

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 中央研究所 企画室[担当:花輪、木下]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地
TEL : 042-327-7777(直通)

以上

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