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2007年2月5日
株式会社日立製作所
株式会社日立プラントテクノロジー

オイルサンドにおける排水処理システムの実証実験を今春開始

  株式会社日立製作所(執行役社長:古川 一夫)と株式会社日立プラントテクノロジー(執行役社長:住川 雅晴)は、このたび、重要な石油資源であるオイルサンド(油砂)に含まれている重質・高粘度の油分であるビチュメンを生産する際に排出される油濁水を、周辺の河川・土壌などの環境への汚染が無いように浄化して排出する「油水分離装置システム」を開発し、その実証実験を、2007年4月から8月まで、カナダ・アルバータ州で実施します。本技術は、オイルサンド排水による環境問題の解決に道を拓く技術です。

  オイルサンドは、カナダ西部のアルバータ州の北方に位置する3地域に多く賦存する粘度質の黒いアスファルト状の炭化水素であるビチュメンと砂・粘土の混合物です。石油を含んだ油層が地殻変動で地表近くに移動し、地下水との接触や生化学反応によって揮発成分が失われたことによりできた石油資源とされており、その埋蔵量はサウジアラビアの石油に相当するものと推定されています。ただ、1バレル*1のビチュメンをオイルサンドから得るためには、数トンの砂岩を乾留する必要があり、また、大量の土砂を廃棄しなければならないことから、その生産性や処理コストの面で課題が大きく、利用は進んでいませんでした。しかし、近年の原油価格の高騰により、オイルサンドからビチュメンを得るための生産コストは、中東産の原油価格と同等程度となったことから、ビチュメンの生産量は年々増加傾向にあります。

  現在、ビチュメンの生産は露天掘りによるものが主流であり、採掘されたオイルサンドからビチュメンを分離回収する工程で大量の温水が使われ、それが油や粘土を含む排水となります。排水の一部はリサイクルされるものの、残りは「Tailing pond」と呼ばれる貯水地に貯留されています。さらに、残存している可採埋蔵量の約8割を占めると言われている深い地層のビチュメンを生産するには、地下に水蒸気を圧入してビチュメンを加熱し、流動性を高めて汲み上げる「in-situ法」という工法が採られ、ビチュメン生産量の約3倍の水量を使用します。このように、ビチュメンの生産には大量の水が必要であり、同時に膨大な量の油を含む排水が発生することから、人工貯水池拡大による環境破壊や取水河川の枯渇を防ぐことが緊急の課題となっています。

  日立では、日本貿易振興会(JETRO)の「石油・天然ガス資源開発等支援およびエネルギー使用合理化調査」の一環として、2002年にアラブ首長国連邦のザクム油田における油田随伴水処理において、日立の有する膜・磁気分離を用いた高速水処理技術の有用性を調査した結果、その技術が油濁水処理に応用可能であることがわかりました。

  今回開発したシステムは、多くの浄水場でプランクトンや細菌を除去するために用いられている凝集技術を核に、湖沼や河川の富栄養化によって発生したアオコなどの植物プランクトンの浄化装置として2001年に製品化した超電導磁石を用いた浄化装置である磁気分離技術を応用することで実現したものです。具体的には、排水に含まれる油や粘土・砂などを、凝集剤と磁性粉により1ミリ程度の磁性を有した小さな固まり(フロック)にし、そのフロックを、磁石を用いて高速で水から分離、さらに自動逆洗*2装置付のフィルターを通してろ過を行い、排出しても二次汚染のない処理水にします。この凝集・磁気分離方式の採用により、油分を10mg/L以下に低減できるため、COD*3の電気分解処理が可能で、さらにフロックを磁気力により分離することから従来の凝集・沈殿法の十分の一の5分で油の除去が行え、生物処理ではないことから寒冷地でも年間を通じて高性能を維持可能といった優位性を確立しました
  来春の実証実験では、日本貿易振興会(JETRO)の「石油・天然ガス資源開発等支援およびエネルギー使用合理化調査」の一環として、本技術のオイルサンド排水処理への適用性・実現性を明らかにすると同時に、システムとして導入した場合のカナダ・オイルサンド・ビジネスにおける効果を評価する予定です。

  本システムは、凝集剤により排水に含まれる油をフロックに取り込む前処理部と、生成した油を含むフロックを水から分離する分離部からなります。それぞれの技術の特長は次の通りです。

(1) 凝集技術を用いた前処理部

  オイルサンド排水に、凝集剤と磁性粉を添加し、攪拌することにより磁性を有するフロックを生成します。このとき、油のみならず、排水に含まれる粘土・砂なども同時にフロックに取り込まれます。このため、処理システムには泥や砂が堆積することがなく、メンテナンス工数/コストも大幅に軽減されます。

(2) 磁気分離技術を用いた分離部

   排水は分離部内のフィルターでフロックと分離され、処理水として排出されます。フロックの大きさは1mm程度であるため、メッシュの大きいフィルターを使用することが可能になります。これにより、通水速度を高速化でき、装置の小型化が実現しました。また、フロックは磁性を有するため、磁石を用いて分離部タンクから効率的に排出します。

*1
1バレル(bbl)=約159L
*2
逆洗:ろ過方向とは逆方向に膜ろ過水を流すこと。
*3
COD:Chemical Oxygen Demand:化学的酸素要求量

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 新事業開発本部 [担当:望月、津山]
〒100-8280 東京都千代田区丸の内一丁目6番6号
TEL : 03-3258-1111 (代表)

株式会社日立プラントテクノロジー 研究開発本部 松戸研究所 [担当:渡辺]
〒271-0064 千葉県松戸市上本郷537番地
TEL : 047-361-6101 (直通)

以上

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