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2006年12月12日
株式会社 日立製作所
株式会社ルネサス テクノロジ

微細トランジスタで発生するしきい値電圧の不安定現象の原因を解明

絶縁膜の欠陥中にて1個の電子が捕獲・放出される現象が複合的に発生

  株式会社 日立製作所(本社:東京都千代田区/執行役社長:古川 一夫/以下、日立)および株式会社ルネサス テクノロジ(本社:東京都千代田区/会長&CEO:伊藤 達/以下、ルネサス テクノロジ)は、このたび、微細トランジスタにおいて、問題の顕在化が予測される“しきい値電圧(回路動作電圧)”の変動現象の解明に成功しました。
  これにより、トランジスタを構成するゲート絶縁膜(酸化シリコン:SiO2)に存在する欠陥に、1個の電子が捕獲・放出される現象(ランダム・テレグラフ・シグナル/以下、RTS)が複合的に生じ、平均よりも一桁以上大きなしきい値電圧の変動が、確率的にはMOSトランジスタ*1,000個に1個の割合で発生することを示しました。この現象は、予測が不可能であり、また、微細化とともに影響が顕著になってくることから、今後、LSIを開発するうえで、重要な評価指標となります。

  電子デバイスの世界では、トランジスタを構成するゲート絶縁膜に存在する欠陥に、1個の電子が捕獲・放出され、これにより、オン/オフ動作に必要なゲート電圧(しきい値電圧)が2つの値の間を変動するRTSと呼ばれる現象が古くから知られています。ところが、RTSはまったく規則性なく発生し、予測が不可能なため、RTSによるしきい値電圧の変動を無視できなくなると、大きな課題になると考えられます。現在、主流である90nm世代までの半導体デバイスでは、しきい値の想定変動範囲(動作マージン)内に収まってるため、性能劣化を招く要因としては顕在化していませんが、今後、さらなる微細化が進行すると、しきい値電圧変動量はゲート電極の面積に反比例することから、RTSの影響が顕在化してくることが懸念されます。しかし、これまでは、生が不規則であり、検証が難しいことから、RTSの現象を詳細に解明した実験は、ほとんど行われてはいませんでした。

  このような背景のもと、日立とルネサス テクノロジでは、評価用デバイスとして、浮遊ゲート型不揮発メモリ構造のトランジスタアレイを用い、RTS現象の詳細な評価に成功しました。浮遊ゲート型不揮発メモリを評価用デバイスとして採用した理由は、(1)最先端の微細加工レベルではゲート面積が最も小さい構造であること、(2)ゲート絶縁膜が厚いため、しきい値電圧の変動量が見かけ上大きくなり、検出が容易であること、(3)アレイ構造により、多数のトランジスタの特性を効率よく取得できるなどの測定上の利点をもつためです。

  今回、評価実験によって得られた測定内容をさらに統計的手法で解析し、以下の結果を得ました。

  • (1) メモリセルのMOSトランジスタのRTSに起因する不規則なしきい値電圧の変動が確かに存在すること。
  • (2) 平均的な値よりも一桁以上大きなしきい値電圧の変動が、MOSトランジスタの1,000個に1個の割合で存在すること。この変動は、複数個の電子が同時に寄与し、RTSが複合化した結果で生じていること。
  • (3) 浮遊ゲート型不揮発メモリの書換え処理によってゲート絶縁膜中に捕獲される電荷や欠陥を意図的に増加させると、しきい値変動が発生しやすくなるとともに、その変動量が増大すること。

  このように古くから知られているRTSで、複合的な現象によって1,000個に1個の割合で、通常よりも一桁以上大きなしきい値変動現象が生じることを発見したのは、今回が初めてのことです。これらの解析結果は、今後の微細化により、トランジスタのゲート面積がさらに小さくなり、同時に集積数が増加するLSIでは、RTSにより、動作に重大な影響を与える大きなしきい値電圧変動が生じる可能性が大きくなることを意味する重要な成果です。

  なお、今回の解析は、MOSトランジスタのしきい値電圧におけるRTSが対象でしたが、同様な物理現象は、PN接合やゲート絶縁膜の漏れ電流でも見出されています。そこで、微細トランジスタの特性変動をもたらすRTSは、今後、極めて重要な信頼性指標になると考えられます。日立とルネサス テクノロジは、今回得た知見をもとに、さらにRTSの理解を深め、対応策の指針を構築していきます。

  本成果は、12月11日から米国サンフランシスコで開催されている電子デバイスに関する国際会議「2006 International Electron Devices Meeting」にて発表します。

用語説明

  • * MOSトランジスタ:MOSは、Metal-Oxide-Semiconductorの略。金属酸化膜半導体で作った電界効果型トランジスタ。素子の微細化により、高集積化と高性能化が可能という特徴がある。

お問い合わせ先

株式会社 日立製作所 中央研究所 企画室 [担当:花輪、木下]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地
TEL : 042-327-7777 (ダイヤルイン)

株式会社ルネサス テクノロジ 経営企画本部 経営企画統括部 広報・宣伝部 [担当:佐藤]
〒100-6334 東京都千代田区丸の内二丁目4番1号(丸ビル)
TEL : 03-6250-5554 (ダイヤルイン)

以上

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