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2006年5月16日

たんぱく質の解析精度を向上させる質量分析技術を開発

疾病メカニズムの解明や新薬開発などの効率化に寄与

 

   株式会社日立製作所(執行役社長:古川 一夫/以下、日立)は、このたび、疾病に関連するたんぱく質の解析精度を向上させる質量分析技術を開発しました。開発した技術は、たんぱく質を高速で解析することが可能な液体クロマトグラフ質量分析装置を用いて、イオン化された試料を分子量の小さな断片に切り離す方法に、従来用いられていた「衝突誘起解離法(Collision Induced Dissociation/以下、CID)」に加え、新たに「電子捕獲解離法(Electron Capture Dissociation/以下、ECD)」を用いて、特性の異なる2種類のイオン解離法を高速に切り替えるものです。これにより、CIDでは解析不可能であったたんぱく質をECDで解析することができるようになります。その結果、分析で得られるアミノ酸配列のデータ量が増加し、たんぱく質の解析精度を向上させることが可能になりました。本技術の開発は、疾病メカニズムの解明や新薬開発などの効率化に道を開くものです。

   近年、遺伝子情報に基づいて体内で生成されるたんぱく質や代謝物が、人々の疾病や健康状態に直接関わっていることが明らかになり、疾病メカニズムの解明や新薬開発の研究現場では、それらの物質を高感度で高速かつ正確に解析する質量分析技術が重視されています。たんぱく質の解析は、液体クロマトグラフ質量分析装置で試料を分離しながらイオン化し、そのイオン化された試料を分子量の小さな断片に分離したものを質量分析することで行われます。その分析結果を遺伝子などの外部情報と照合し、断片のアミノ酸配列に関する情報を解析してたんぱく質を特定します。
   従来、たんぱく質を解析する質量分析装置では、イオン解離法として、中性ガスの衝突を利用するCIDが用いられていました。しかし、CIDでは、アミノ酸間の結合部位で試料が切断されなかったり、特定のアミノ酸に結合したリン酸や糖鎖など、たんぱく質の解析で重要となる修飾部位*1 が切断されやすいなど、たんぱく質の解析精度を低減させるという課題がありました。一方、アミノ酸間の結合部位で試料が切断されやすく、修飾部位が切断されない解離法として、1電子ボルト程度の低エネルギー電子を試料イオンに照射するECDがあります。この技術は既にフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析装置で実用化されていますが、この装置は高精度の質量分析が行えますが、高速分析には適用されていませんでした。このため、たんぱく質の解析精度を向上させる、質量分析技術の開発が求められていました。
   このような背景から日立は、イオン化された試料の切り離しに、CIDとECDの2種類のイオン解離法を用いて、分析結果を確認しながら、解離法を切り替えて分析が可能な質量分析技術を開発しました。開発した新技術の特長は以下の通りです。

 

1. イオントラップ方式を用いた高スループットECD技術

   高速な質量分析が可能なイオントラップ*2質量分析装置で動作するECD技術を開発しました。 従来、試料イオンを溜め込むために高周波電場がかけられるイオントラップ質量分析装置では、低エネルギー電子の導入が困難であるため、ECDは利用できないと考えられてきました。今回、装置の中心軸上だけは高周波電場がないリニアイオントラップ*3を利用したECD技術を開発しました。これにより、世界で初めて液体クロマトグラフと結合して動作する高スループットECDを実現しました。

 

2. CIDとECDを最適に制御する技術

   イオントラップで試料を溜め込みながら、はじめにCIDを使った質量分析を行い、10ミリ秒以内でアミノ酸配列情報を解読し、たんぱく質特定に必要なデータが得られなかった場合には、ECDで質量分析を行います。イオン解離法をCIDからECDに即座に切り替えて、CIDデータと相補的なECDデータを取得できるため、解析スループットを下げることなく、たんぱく質などの解析精度を向上させることが可能になりました。

   今回開発したECDを液体クロマトグラフ・リニアイオントラップ・TOF(飛行時間型)融合型質量分析装置*4に適用したところ、従来のCIDと同等の条件で動作すること、ならびにCIDとECDを最適に制御しながら動作可能であることを確認しました。さらに、酵母細胞抽出サンプルの分析を行ったところ、CIDでは特定できなかったたんぱく質をECDにより数例特定できました。また、特定されたたんぱく質のうち、1割程度はCID、ECDの両分析において特定され、解析精度の向上が確認できました。本技術により、疾病メカニズムの解明から新薬開発などの効率化が期待できます。

   なお、本開発の一部は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構助成事業「バイオ・IT融合機器開発プロジェクト」の一環として行われたものです。
   また、本成果は、2006年5月18日に大阪で開催される日本質量分析総合討論会、および2006年5月28日から米国シアトルで開催される「54th ASMS Conference on Mass Spectrometry」(米国質量分析会議)で発表する予定です。

 
*1 たんぱく質はアミノ酸が一次配列したもので、各々のたんぱく質には各々役割(機能)があります。さらに、たんぱく質の特定のアミノ酸にリン酸や糖鎖などが結合することにより、別の機能を獲得します。そのため、どのたんぱく質の何処のアミノ酸(部位)に何の修飾が何パーセントなされているかを調べることが重要視されています。
*2 真空中で、イオンを保持することを特徴とする質量分析装置です。保持したイオンを繰り返し分解(断片化)することが可能で、分子種を高い確度で識別する機能を持つため、複雑な分子構造を持つ分子種の分析に有効です。
*3 イオントラップ方式の1種です。イオン捕捉領域が線形(リニア)であり、従来のイオントラップに比べて感度が1桁高いという特長があります。
*4 高周波リニアイオントラップと飛行時間型質量分析計を結合させた装置です。高周波リニアイオントラップでは、高周波電界によるイオンの空間的な閉じ込めができ、そこでイオン解離を実行することも可能です。一方、飛行時間型質量分析計では、イオンの質量をppmレベルの精度で決定することができます。そのため、リニアイオントラップ-飛行時間型質量分析装置では、精度の高い解離データを取得することが可能です。
 
 

お問い合わせ先

株式会社 日立製作所 中央研究所 企画室 [担当 : 花輪、木下]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地
電話 : 042-327-7777(直通)

 
 

以上

 
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