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平成11年6月22日

上下水、排水などに含まれる有害な重金属元素を分析する
ICP質量分析装置「P−5000」を製品化

−業界で初めて元素分析に3DQMSを採用し、高感度で迅速な水質分析を実現−

 株式会社日立製作所 計測器グループ(グループ長&CEO 猪俣 博)は、上下水、排水、河川、湖沼など
に含まれる鉄、ウラン、ヒ素など重金属の極微量元素を測定するICP質量分析装置(注1)「P−5000」
を製品化し、平成11年6月24日より販売を開始します。
  本製品は、ICP質量分析装置の質量分析部に3DQMS(注2)技術を採用し、妨害イオンの影響を軽減す
ることで、従来のQMS(注3)のICP質量分析装置では測定が難しかった極微量の元素分析を実現しました。

 これまでの水質の元素分析法においては、環境庁やJIS法でICP質量分析法、原子吸光法(注4)、
ICP発光分析法(注5)などが公定分析法として採用されていましたが、厚生省の上水の分析ではICP質量
分析法は認められていませんでした。ICP質量分析装置は、極微量の金属元素を迅速に測定できることか
ら、厚生省でも採用の検討がなされていましたが、昨年6月に監視項目のウランが採用され、引続き本年11
年6月一部の項目についてICP質量分析法の採用が認められる予定です。本水質分析の分野である衛生研
究所、保健所、水道局、計量証明事業所などで幅広く今後の導入が計画されております。

 ICP質量分析装置では、アルゴンプラズマ内部でアルゴンガスに起因する分子イオンや、試料を真空中
に引き込む過程で酸化物イオンが生成されます。これらのイオンは測定したい特定の元素イオンと同じ質量
であるため、従来のQMSのICP質量分析装置ではそのイオンと選別することは非常に困難でした(注6)。
  QMSのICP質量分析装置では、このような測定を妨害するイオンが生成される現象は、鉄やセレン、
ヒ素など、多くの元素を測定する時に起こります。これらの元素を測定する時、従来は、精密質量の差で、
測定したい元素イオンと妨害イオンとを区別するために、質量分解能が極めて高い装置が必要である一方、
大形で高価な磁場分散形と呼ばれる方式のICP質量分析装置が用いられてきました。

 本製品は、試料導入部で霧状の試料をイオン化した後、3DQMSの質量分析部に送り込み、その中の電
極の空間にイオンを閉じ込めることができます。この特徴を利用し、イオンを閉じ込めた状態で加速させ、
妨害イオンを衝突により分解させ、その影響を軽減し、元素イオンの高精度な測定を実現しました。
  当社では、「P−5000」を上下水、排水、河川などの水質分析の分野を中心に、初年度25台、3年後に
は100台の受注を目指しています。

(注1) ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)質量分析装置:
   霧状の試料を約8,000度の高温プラズマ中に導入して、イオン化します。生成されたイオンは質量分
   析部に取り込まれ、質量分離され元素を特定するとともにイオン量で元素含有量を測定します。1 ppt
   (10-12重量濃度)程度の極微量分析が可能です。
(注2) 3DQMS(3Dimensional Quadrupole Mass Spectrometer:三次元四重極質量分析計):
   回転双曲面のリング状電極と、それを左右に挟むように配置されたお椀状のエンドキャップ電極から
   構成されます。電極数は3枚ですが、リング状電極に交流電圧を印加すると、中心付近の断面には四
   重極電場が形成され、イオンを閉じ込める機能を有します。生成されたイオンをこれらの電極で囲ま
   れた空間に閉じ込めた後、質量分析を行ないますので、イオンの利用効率が高く、感度が向上します。
(注3) QMS( Quadrupole Mass Spectrometer:四重極質量分析計):
   4本のロッドが平行に配置され、このロッドに直流・交流電圧を印加する事により四重極電場が形成さ
   れます。ロッドに平行に入射したイオンは、質量選別され、特定質量のイオンだけが透過します。イ
   オン透過形であるため、透過条件に合致しない大部分のイオンは排除されます。
(注4) 原子吸光法:原子蒸気の中をホローカソードランプ(測定元素の単色光光源)の光を吸収させ、その吸
   収量から元素含有濃度を分析法する方法です。この方法は同時に多元素を測定できないため、分析に
   長時間がかかります。
(注5) ICP発光分析法:霧状の試料を約8,000度の高温プラズマ中に導入し、金属元素を原子化します。
   生成された原子からの発光波長成分を分光器により分光し、波長により元素を特定するとともに信号
   量から含有量を測定します。1ppb(10-9重量濃度)程度の極微量分析が可能です。
(注6) 例えば、ヒ素の分析では、試料中に塩素が混在すると、プラズマを生成するのに必要なアルゴンガス
   と塩素が結合した分子イオンが生成されます。この分子イオンがヒ素のイオンと同じ質量をもつため、
   測定が難しくなります。

■価格および出荷時期
             製品名                    価格                    出荷時期
        ICP質量分析装置          2,500万円〜         平成11年9月30日
          P−5000

                                                                                    以 上


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