| HITACHI HOME | UP | SEARCH | HITACHI

News Release ^
^
^
^

このニュースリリース記載の情報(製品価格、製品仕様、サービスの内容、発売日、お問い合わせ先、URL等)は、発表日現在の情報です。予告なしに変更され、検索日と情報が異なる可能性もありますので、あらかじめご了承ください。なお、最新のお問い合わせ先は、お問い合わせ一覧をご覧下さい。


平成11年6月8日

乳幼児の脳機能を世界で初めて観察

−光トポグラフィにより脳の可塑性の画像化に成功−

                                                                              株式会社日立製作所
                                                                        脳機能検診センタ小暮医院
     
     
 このたび、株式会社日立製作所(以下、日立)と脳機能検診センタ小暮医院(院長:小暮久也博士、国際
脳循環代謝学会元会長・前総裁)は、世界で初めて、光トポグラフィ(注1)を用いて、乳幼児の脳機能の
測定に成功しました。光トポグラフィは、微弱な近赤外線(注2)を頭皮上から照射して大脳皮質の血流の
状態を画像化する脳機能計測法であり、頭が動いても測定できるので、日常生活における脳の活動を測定で
きるという特徴があります。今回、この光トポグラフィを用いて、乳幼児の脳の可塑性を示す画像を、初め
て得ることができました。本成果は、新生児から乳幼児にかけての脳の発達過程を明らかにする新しい検査
方法や脳機能研究の道を拓くものと期待されます。
     
 乳幼児の脳は可塑性が非常に高いため、異常を早期に発見して機能訓練を始めれば、障害をある程度克服
できる可能性があります。また、現在世界的に注目されている脳科学の分野では、新生児期から乳幼児期に
かけて脳が機能的に完成されていく過程を段階的に理解するために、様々な試みが行われています。しかし、
新生児や乳幼児の脳機能を調べるためには、安全であることはもちろん、恐怖心を与えない自然な状態で測
定することが必要です。しかし、従来の機能計測技術である機能的MRIや脳磁場計測では、計測中に頭を動か
すことができないために、乳幼児には麻酔や睡眠剤などを使用せざるをえませんでした。そのため、言語や
図形認識などの高度な認知機能の発達についての脳画像を得ることは困難でした。
     
 日立と脳機能検診センタ小暮医院は、光トポグラフィを利用して乳幼児の脳機能の計測に取り組んできま
した。この光トポグラフィは、頭部固定が不要で、ある程度の動きが許容でき、自然な姿勢・状態で計測可
能な新しい脳機能計測技術です。
     
 ここでは、二つの計測例を紹介します。一つは、(株)日立メディコの協力を得て測定した8才の女児の
検査結果です。この女児は、出生時の事故によって、刺戟を感じたり身体を動かしたりする頭頂葉の中枢は
両側とも壊れており、ほぼ廃絶していると思われてきました。しかし光トポグラフィで調べてみると、この
女児の場合、前頭葉で代償されていることが判り、今では呼び掛けに応じて手足を動かし、笑顔で応えるこ
とが出来るようになるなど、積極的な保育によってその機能の発達を促進できることが明らかになりました。
     
     
 もう一つの例は、1才の女児の検査結果です。この女児は、大脳組織が一部にしか存在せず、全く目が見
えないと診断されていました。
この残された大脳における機能を確認するために、視覚刺激(眼前でのストロボ光をの点滅)に対する反応
を後頭部で計測しました。その結果、計測領域中の大脳に対応する部分で血液量の増加が計測され、この大
脳で光刺激に反応していることが確認されました。このように、大脳の一部しか残っていない状態でも、光
を感じる機能が明瞭に観察されました。
  以上の二つの例から、光トポグラフィによって、乳幼児の脳の可塑性が初めて観察されました。
     
 脳発達の計測は、将来的には教育分野へも応用される可能性があり、今後ますます重要になると考えられ
ます。日立では、認知科学の基礎的な分野から、医療・福祉への応用など、今後も幅広く取り組んでいきま
す。
     
 なお、本成果の一部は、6月13日からコペンハーゲンで開催される国際脳循環代謝学会総会 
 (Brain`99国際会議)で発表する予定です。
     
(注1)光トポグラフィ:光を用いて脳内の二次元画像を得る新しい計測技術です。光は光ファイバを用いて
   照射、検出を行います。脳機能を画像として計測するために、二次元的に光ファイバを配置し、各位
   置に対応した反射光を同時計測するようにしています。装置は操作が簡単で持ち運び可能なため、検
   査場所の制約を受けず、ベッドサイドで検査を行うことが可能です。
(注2)近赤外線:波長800nmから2000nm程度の光を表します。波長800nm付近では、個人差
      があるものの、光の色はうっすらと赤く見える場合があります。近赤外線は、可視光や赤外線に比べ
      て生体を透過しやすい性質を持っています。
     
     

     
                                              以  上


WRITTEN BY Secretary's Office
All Rights Reserved, Copyright (C) 1999, Hitachi, Ltd.