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平成9年2月17日
デジタルセルラ規格GSM/EGSM用高周波信号処理部の
信号処理1チップICを製品化
−高集積化により、システムの小型化、低コスト化を実現するとともに、
オフセットPLL方式採用などにより、GSM/EGSM規格に容易に対応可能−

日立製作所は、このたびデジタルセルラ規格GSM/EGSM(注1)用RF部(注2)の送受信
信号処理を1チップで実現する高集積IC「HD155101F」を製品化し、平成9年3月
からサンプル出荷します。
本製品は、送信側の送信周波数変換にオフセットPLL(注3)方式を採用することで、
帯域外雑音の低減を実現し、雑音対策用のシステムや部品を不要にできます。また、
受信側も-110〜-15dBmと広範囲な入力信号範囲での受信を可能とするため、中間周
波増幅回路の利得(ゲイン)を-30〜50dBの広い範囲でリニア制御可能とするなど、
GSM/EGSM規格に対応した様々な回路設計を行っています。このため、GSM/EGSM用
RF部のシステム設計を容易にするとともに、システムの小型化、低コスト化が図れ
ます。
GSMはヨーロッパを中心に開発、構築されたデジタルセルラシステムで、アジアや
中近東、アフリカなど世界各地で導入されており、すでに3,000万人が加入する
大きな市場となっています。
また、携帯電話にはさらなる小型・軽量化、使用時間の長時間化が要求されてお
り、採用される電子部品も高集積化、実装面積の低減化、低コスト化が要求されて
います。さらに、GSM/EGSMは、800MHz/900MHz帯の高周波なため、RF部には送信信
号の雑音対策や、受信信号を効率良くベースバンド部(注4)へ送るためのシステム設
計が必要であり、高集積化とともにGSM/EGSM規格をより容易に実現できるICが望ま
れています。
当社はこのようなニーズに対応し、英国のGSMのシステムコンサルタント会社
「The Technology Partnership社(TTP社)」と共同で、GSM/EGSM用RF部の送受信
信号処理1チップICを開発しました。
本製品は、本年2月6日から米国で開催された「国際固体素子回路会議
(ISSCC '97)」で学会発表したGSM/EGSM用RF部の送信および受信側に関する技術を
用いた高集積ICであり、当社初のGSM/EGSM用RF部の信号処理1チップICとして、シ
ステムの小型化、低コスト化へのソリューションを提供します。
本製品は、0.6ミクロンBiCMOSプロセスを採用し、RF部の大半の機能を内蔵し
た1チップICです。送信部は直交変調回路、オフセットPLL方式の周波数変換回路、
分周回路を、受信部は1stミキサ、2ndミキサ、AGC(注5)アンプ、直交復調回路を内
蔵しています。さらに、低雑音増幅器(LNA)用の負帰還バイアス回路も内蔵してお
り、安定なLNA回路が簡単に構成できます。そのため、本製品にPLL、パワーアンプ
などわずかな部品を付けるだけで、高周波アナログ部のすべての機能を実現できま
す。
送信側は、周波数変換にVCO(注6)出力を直接用いるオフセットPLL方式を採用し、
帯域外雑音の低減を実現しました。従来のミキシングによる周波数変換では、帯域
外雑音が発生し、これを除去するためのSAWフィルタ(注7)とデュプレクサ(注8)が
必要でしたが、これらが不要となることで部品点数の削減とフィルター挿入による
パワー損失を防ぐことができます。また、帯域外雑音低減により、EGSM規格にも容
易に対応可能です。
さらに、従来方式ではミキシング後に発生するAM(注9)波形によって、パワーアン
プ段でAM to AM変換歪みなどの信号の歪みが発生しましたが、本方式ではVCO出力
を直接出力信号に用いるため、出力信号レベルが常に一定であり、歪み対策の必要
がなく、容易にGSM規格に対応できます。
受信側では、AGCアンプのゲインが、0.15〜2.3Vの利得制御電圧設定時に-30〜
50dBの広範囲でリニア制御できるなど、連続的なゲインの設定が可能です。また、
AGCアンプはダイナミックレンジを考慮し、アッテネータの減衰量と増幅器のゲイン
を同時にコントロールすることで、ゲイン50dB時のNFは10.4dBtyp、ゲイン-30dB
時のコンプレッションポイント(注10)は-17dBmtypを実現します。これにより、
-110〜-15dBmの広範囲な入力信号範囲での受信が可能となります。さらに、LNA用
の負帰還バイアス回路を内蔵するなど、システムの部品点数削減を図っています。
動作電圧は2.7〜3.6Vと低電圧であり、送信時は31mA、受信時は34mA、パワーセ
ーブ時は1マイクロA以下という低消費電力設計になってます。
パッケージは小型化実装可能なLQFP-48を採用しており、実装面積の低減を実現
します。
また、本製品はPCN規格(注11)への技術展開も考慮して設計されており、PCN用IC
を同一パッケージ、同一ピン配置で開発中です。今後は、この技術を基にAMPS、
CDMA、PDCなどの他システムへ展開を図っていきます。
(注1)GSM:Global System for Mobile Communicationsの略。
ヨーロッパの800/900MHz帯デジタルセルラ電話システム。
EGSM:Extended GSMの略。GSMの無線周波数帯域は受信935〜960MHz、送信
890〜915MHzであるが、EGSMでは受信925〜960MHz、送信880〜915MHz
と拡張した仕様となっている。
(注2)RF部:RF はRadio Frequencyの略。高周波信号を処理する部分。
(注3)PLL:Phase Locked Loopの略。周波数の位相を同期させるループ回路を構
成することにより、任意の周波数を発振させる回路技術、及びその回路。
(注4)ベースバンド部:音声信号のAD / DA変換、マンマシンインタフェース、送
受信信号のチャネル、タイミングなど、CODEC処理やシス
テム制御を行うデジタル信号処理部分。
(注5)AGC:Automatic Gain Controlの略。自動利得制御。
(注6)VCO:Voltage Controlled Oscillatorの略。入力制御電圧に従って、出力
の周波数が変動する発振器。
無線回路の品質を左右する重要な部品のひとつ。
(注7)SAWフィルタ:Surface Acoustic Wave フィルタの略。圧電体の表面を伝わ
る表面弾性波を利用したフィルタ。
共振周波数とその近傍を通過帯域とするフィルタを実現する。
(注8)デュプレクサ:分波器。受信周波数用と送信周波数用の二つのフィルタを内
蔵し、相互に分離する目的を果たす。
スイッチ付きのものもある。
(注9)AM:Amplitude Modulationの略。振幅変調。
(注10)コンプレッションポイント:回路の入力レベルを増加していき出力飽和が起
こり、出力レベルが増加しなくなる点。通常入出力の理想直線から1dBレス
ポンスが低下した点を言う。
(注11)PCN:Personal Communications Networkの略。GSMシステムの高周波版。
<応用製品例>
●デジタルセルラシステム(GSM等)
●各種移動体通信システム
<価 格>
製 品 名 サンプル価格(円)
HD155101F 1,200
<TTP社について>
The Technology Partnership社(TTP社)は、英国ケンブリッジにおいて、ソフト
/ハードを含めた商品開発や製造、検査の全体に対するコンサルタントをワールド
ワイドで行っている会社です。GSMシステム開発では、ワールドワイドでコンサルタ
ントを手がけ、数多くの実績があります。
以 上