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2002年5月7日
 
1平方インチ当たり100ギガビット級の垂直磁気記録ヘッドを開発
−磁気ヘッドの製作に電子線描画技術をはじめて採用−
    株式会社日立製作所(取締役社長:庄山悦彦)は、ハードディスク装置の大容量化、小型化に向けて、100ギガビット級の垂直磁気記録用ヘッドを開発しました。このヘッドの製作には、半導体製造プロセスでも用いられている電子線描画法をはじめて適用しました。その結果、再生トラック幅125nmを実現し、世界トップクラスの出力感度を達成しました。
    本技術は、次世代の記録技術である垂直磁気記録方式の実用化を加速し、1平方インチ当たり100ギガビット級の面記録密度を持つハードディスク装置を実現する基本技術となります。

    近年、様々なデジタル機器の普及により、日常生活の中で大容量の映像や音声をデジタル化して扱う機会が増えています。これに伴って、様々なデータを大量に保存し、読み出す機能を持つハードディスク装置に要求される記憶容量も、ますます拡大しています。現在市販されているハードディスク装置には、“面内磁気記録”と呼ばれる方式が採用されています。しかしこの方式では、磁気記録媒体の温度が不安定であることや記録用ヘッドの記録能力不足、再生感度不足等の課題があり、1平方インチ当たり100から200ギガビット程度の面記録密度が限界であると考えられています。

    このような背景から当社では、これらの課題を解決すると考えられている、“垂直磁気記録方式”の開発を進めています。垂直磁気記録方式の面記録密度を高くするためには、記録ヘッドの寸法を微細化する必要があります。しかし、記録ヘッドの微細化が進むにつれて、次のような現象が発生しました。
(1)一度書きこんだデータを、その直後に記録ヘッド自身が消してしまうという現象*1)
(2)浮遊磁界によって、記録ヘッドがデータを消してしまうという現象*2)
    そこで今回、当社は、磁気コアに高飽和磁束密度材料を採用して高い記録磁界を実現しました。また、磁気コアを磁区制御する技術を新たに開発して、140 nmという狭いコア幅でも安定した動作をする記録ヘッドを開発しました。
    さらに記録再生においては、電子線描画法を適用して製作した、再生トラック幅125 nmの高感度TMRヘッド*3)を用いて、0.7 mAの検知電流に対して出力5 mVという世界トップクラスの出力感度を達成しました。この結果、トラック密度152 kTPI(tracks per inch)において、線密度706 kBPI(bits per inch)の信号を、高い分解能で検知できることを確認しました。これは、1平方インチあたり107ギガビットに相当します。

    本技術は、次世代の記録技術である垂直磁気記録方式の実用化を加速し、1平方インチ当たり100ギガビット級の面記録密度を持つハードディスク装置を実現する基本技術となります。本技術を用いることで、ハードディスク装置を大容量化できるだけではなく、各種装置の小型化にも寄与できます。そのため、PC、サーバー、RAIDシステムのみならず、携帯端末やデジタル家電への応用が期待されています。

    なお、本技術は、4月29日からオランダ・アムステルダムで開催される国際会議「Intermag Europe 2002」にて発表される予定です。
    本研究の一部は、経済産業省プロジェクト「超先端電子技術開発促進事業」の一環として、超先端電子技術開発機構(ASET)が新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)より委託された研究として実施されました。

<脚注>
1) 記録ヘッドは、その磁化方向を変える(1または−1にする)ことで情報を記録します。情報がないときは、磁化方向は0に戻ります。ところが0に戻りきれない場合、情報が消されてしまいます。
2) ヘッドには“アンテナ効果”と呼ばれる周りの磁界を集める性質があります。ヘッドの磁化方向が不安定である場合、仮に周辺の磁界が弱い場合でも、ヘッドから強い磁界が漏洩することがあります。そうなると、データは消去されてしまいます。
3) Tunneling magnetoresistiveヘッド。強磁性層/バリア層/強磁性層の構成を取り、磁界によってバリア層を流れる、トンネル電流の流れやすさが変化します。高感度であるため、CPP-GMR (current perpendicular to the plane - giant magnetoresistive)ヘッドと並んでポストGMRヘッドの有力候補です。

以 上



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