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2002年4月16日
 
疾病遺伝子探索時間の短縮化を実現する遺伝子探索システム「Hitagene」を開発 

    日立ヨーロッパ社日立ダブリン研究所(Hitachi Europe Ltd., Hitachi Dublin Laboratory)は、アイルランドのダブリン大学トリニティ・カレッジ臨床医学部(University of Dublin Trinity College, Department of Clinical Medicine)と共同で、遺伝子探索システム「Hitagene」を開発しました。「Hitagene」は遺伝子解析に要する時間を、従来のシステムと比べて100分の1以下にすることができます。

    ヒトの約3%は、生まれながらにして何らかの遺伝子異常を持っているといわれています。しかし、遺伝子異常は必ずしも疾病の原因となるわけではなく、特定の環境要因と組み合わさることにより、遺伝子の異常が蛋白質の働きに影響を与え、色盲、糖尿病、骨関節炎、ある種の癌、心臓病、パーキンソン病などを引き起こすとされています。

    疾病原因を探るためには、疾病を有するヒトのDNA(注1)中の遺伝子異常を調べることが不可欠で、その解析には連鎖不平衡法(Linkage Disequilibrium 法)(注2)という、疾病にかかっているヒトのDNAを健康な人のDNAと比較し、塩基配列の違いなどから異常遺伝子を発見する方法が有効な手法として期待されています。ヒトの体細胞には23対の染色体があり、その染色体を構成するDNAは約30億の塩基対を持っています。その中から異常を持つ遺伝子を見つけるためには、膨大な数のデータが必要であり、その処理には大変な時間がかかるという問題がありました。

    そのため、連鎖不平衡法を用いた遺伝子解析計算を「Hitagene」で行うと、例えば、従来24時間もかかっていたような解析を、10分以内で完了することができます。また、統計的なサンプリング手法である「ブートストラッピング」法により、解析結果の誤差範囲を求めることができるため、結果の精度を判断しながら解析を進めることができます。

    「Hitagene」の共同研究にあたり、日立ダブリン研究所とダブリン大学トリニティ・カレッジは、共同研究チームを構成しシステム開発を進める一方、「Hitagene」を使用してセリアック病(注3)の原因となる遺伝子を見つけ出す研究を進めています。また、そこで得られた様々な実験結果を「Hitagene」の共同研究チームにフィードバックすることで、システムの更なる改良を進め、早期の事業化を目指しています。

「Hitagene」に対する関係者のコメントは以下の通りです。

ダブリン大学トリニティ・カレッジ、ロス・マクマナス博士
「膨大な量のデータ解析に、研究の相当時間が費やされている。例えばセリアック病の原因となる遺伝子を見つけるためには、患者の膨大なDNAデータの中から試行錯誤的に目的の遺伝子を追い詰めていく必要があり、その解析や比較が大変であった。『Hitagene』は計算にかかる時間を劇的に短縮してくれるので、これまで時間がかかり過ぎてできなかったような解析が可能になると思う。『Hitagene』は疾病を遺伝子レベルから研究する上で力を発揮し、遺伝学の研究に大きく貢献することが期待できる。」

日立ダブリン研究所、マーティン・フィールド所長
「『Hitagene』は、当研究所における2年以上に亘るバイオインフォマティクス研究の成果です。バイオ研究における第一線の研究者の要求に応えるためには、現在よりも格段に高速で精度の高い解析システムが必要だと認識し、研究を進めています。また、ダブリン大学トリニティ・カレッジとの共同研究は、『Hitagene』開発において極めて重要な役割を果たしています。遺伝子との関連がまだよく分っていない複雑で深刻な疾病が数多くありますが、『Hitagene』がその原因を解明する一助となり、疾病の治療や予防に結びつくならば、大変喜ばしいことです。」

(注1)DNA(Deoxyribo Nucleic Acid)
    デオキシリボ核酸。リン酸塩、糖、塩基(グアニン、シトシン、チミン、アデニン)で構成される単位(ヌクレオチド)が繰り返し連なった鎖二本で構成されるらせん構造。グアニンとシトシン、チミンとアデニンとが結合して塩基対を構成しており、その総数は約30億対ある。遺伝子とは、DNA中のある場所の塩基配列を意味する。

(注2)連鎖不平衡法(Linkage Disequilibrium 法)
    患者集団に特有なSNP(Single Nucleotide polymorphism)やマイクロサテライトなどのマーカーを統計的に特定し、これを手がかりに、このマーカー近辺にあり親から子へと共に遺伝している(連鎖不平衡状態にある)疾病遺伝子を探し出す方法。
SNPは「一塩基多型」とも呼ばれ、DNA中の塩基配列が一カ所だけ違っている状態を指す。この塩基配列の違いが、人間の個人差を生み出す一要因とされている。またマイクロサテライトとは、DNAの塩基配列中に2から5塩基対の反復単位が、数個から数十個繰り返した反復配列があることをいう。

(注3)セリアック病(Coeliac Disease)
    グルティン(蛋白質の一種)に対するアレルギー反応によって引き起こされる病気であり、遺伝性がある。体重の減少、嘔吐、貧血、倦怠感などの症状が現れる。

以 上



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