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2001年4月27日
株式会社日立製作所
東海大学医学部

光を用いた脳機能計測技術によりALS患者の意思伝達の可能性を示す
--  波長0.8マイクロメータの近赤外光を利用  --
   このたび$日立製作所と東海大学医学部は、初めて、光を用いた脳機能計測技術を用いて、運動機能を失ったALS患者の方が意思伝達できる可能性があることを示しました。この方法は、「Yes/No」の回答をする時の大脳の血液量変化を、波長0.8マイクロメータの近赤外光*1)によって計測するものです。ALS患者の方のご協力で、測定を行った結果、Yesの場合とNoの場合とで、信号に変化が現れることを確認しました。今後、データ精度の向上や検出時間の短縮化などを行い、重度のALS患者と介護者との意思交換を可能にするインタフェース技術の実現に向けて研究を進めていきます。

   ALS*2)(筋萎縮性側索硬化症:Amyotrophic Lateral Sclerosis)は、脳から筋肉へ運動指令を伝える脊髄の運動神経が冒され、全身の筋肉が萎縮する進行性の難病です。発病の初期では指やまぶた、眼球などを動かせるため、これらの動きを利用した意思伝達装置などを使い、意思伝達に利用しています。しかし、病状の進行に伴い患者の運動機能が徐々に失われるため、ついには、運動機能を利用した意思伝達が困難となり、十分な意思表示が図れない状況におかれます。このため、運動機能を利用しなくても、重度ALS患者が意志表示を行うことができる機器の提供が求められています。

   これに応えるため、今回、東海大学医学部と日立製作所は共同で、脳機能計測技術を用いて、重度のALS患者の意志伝達に関する基礎検討を行いました。光を用いた脳機能計測技術の知識やノウハウは、これまで日立が研究開発してきた光トポグラフィ*3)で培ったものです。光トポグラフィは、近赤外光により大脳皮質の血流量を測定できるので、これを応用すれば、YesとNoの意志伝達ができるのではと考えたものです。

   ALS患者の方とご家族のご協力によって実施させて頂いた確認は次のような方法で行いました。  家族や医師からの問いかけに対し、返事がYesの場合は、患者は両手の指を握ったり開いたりする把握運動をする努力をして頂きます。ALS患者は運動機能を失っていても脳は正常な状態で機能しているため、この把握運動を行う努力により大脳皮質の運動野(運動に関連する部分)が活性化し、血液量が増加することが予測されます。この血液増加を検出し、Yesの回答と解釈するものです。一方、Noの回答の場合は把握運動をせずに安静を保ちます。この時、運動野の血液増加は生じないため、Noの回答と解釈するという方法です。
   図1はYes回答をしたときの左側運動野の脳血液量変化を表す波形です。安静期間には心臓の鼓動による細かな変化に、人工呼吸器による4Hzの変化が重なって観測されています。回答期間にはこれらの変動に加えYes回答に対応させた両手把握運動努力により生じる脳血液量変動が重なっています。図2はNo回答の例で回答期間に安静を保った時の脳血液量変化で、図1の測定波形に比較し回答期間における脳血液量変化は心臓鼓動と人工呼吸器による変動のみとなっています。

   このように、ALS患者とご家族の方のご協力で測定を行い、Yesの場合とNoの場合とで、信号に変化が現れることをはじめて確認しました。これによって、光を用いた脳機能計測でALS患者の方の意志伝達が可能であると言う見通しが得られました。
   今後は、データ精度の信頼性向上や検出時間の短縮化など実用化の努力を進め、将来的には重度のALS患者と介護者との意思交換を可能にするインタフェース技術の実現に向けて研究を進めていきます。

■用語解説
1) 近赤外光:700nmから2000nm程度の波長域の光。
2) ALS:筋萎縮性側索硬化症、運動神経をおかされ、徐々に、運動機能を失うが、脳機能や感覚は正常に保たれる病気。
3) 光トポグラフィ:頭部の外側から近赤外光を照射し、大脳皮質を透過して、再び頭皮の外側へ放出される光を検出することで、脳の活動状態をリアルタイムで計測%画像化する技術。

  

以 上


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