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SPECIAL TALK 先輩社員 IoT時代に先駆けて広域ネットワークの高速化に挑み、社会イノベーションに繋げる。Jens Doenhoff SPECIAL TALK 先輩社員 IoT時代に先駆けて広域ネットワークの高速化に挑み、社会イノベーションに繋げる。Jens Doenhoff

イェンス・デーンホフ

研究開発

イェンス・デーンホフ中央研究所 テクノロジーイノベーション統括本部 
デジタルテクノロジーイノベーションセンタ
/2014年入社
情報科学研究科(Dipl.-Inf.〈ドイツ〉) 修了

メーカーの枠を超えた日立と出会う。

アニメで日本の文化と出会い、日本語の音やリズムに魅せられました。日本のことをもっと深く理解したいと思い、大学卒業前に日本で学べるドイツ政府の奨学金プログラムに応募。希望が叶って2010年に来日し、1年間日本語学校に通った後、日立の中央研究所で3カ月間の研修を受ける機会を得ました。改めて日立のビジネスモデルや業界内でのポジションを知って興味を持ち、さらに約1年半、客員企画員として働いてから入社を決意しました。

子供の頃からパソコンいじりが大好きで、インターネット以前のBBS(電子掲示板)でパソコン同士が繋がった時にものすごくワクワクした記憶があります。ドイツの大学では情報科学を専攻し、ネットワークの分散処理システムなどを研究していましたが、基礎的な研究は実用化までに長期間を要するため、就職後はもっと実際に社会に役立つような応用研究に就きたいと考えていました。企業や自治体はそれぞれネットワークに対してスピードやセキュリティなどの課題を抱えていますが、それを解決するための技術を生み出す仕事がしたかったのです。

実はドイツにいた頃、日立についてはよく知りませんでした。中央研究所での研修生時代に、大手企業と数多くのプロジェクトを組んでいること等を知りました。メーカーの枠を超えて社会的なテーマに取り組めそうで、日立に入ればきっと面白いことができると確信するようになりました。

企画員時代は英会話中心でしたが、入社後はほぼ日本語で会話するようになりました。ただ、不慣れだったためにプロジェクトの課題の解釈を取り違えて、2〜3週間頑張って出した答えがとんちんかんなものだったということもしばしばでした。最近は細かく確認しながら事を進めるようにしてそういうミスは減りましたが。日本人は婉曲なコミュニケーションを好みますが、こと技術に関してはみんなストレートに意見を戦わせるので、そこは日立のいい風土だと感じています。

イェンス・デーンホフ

時間と距離を超える通信でIoTを加速させる。

入社後約1年間は通信事業者のプロジェクト案件を担当。大学で専攻した分散システムの考え方を活かしたビッグデータの通信高速化に取り組みました。例えば近年、ネットワーク上での動画のやり取りが飛躍的に拡大していますが、大勢の人がある時刻に一斉に同じ映像を見てもネットワークがダウンしないようにするには、ネットワーク上にどんな分散処理システムを構築すればいいか、といった研究を行っていました。

実際に高速化を検証するためのプロトタイプのシステムを作り、一定の成果が見えると次に顧客と一緒に実際の工場とデータセンタを回線で繋いで、PoC(Proof of Concept※概念実証)実験に取り組みました。予測通りのデータが得られて課題解決が見えた時には、心からうれしかったですね。もともと自分はネットワークの物理的なレイヤーではなく、概念的な研究が専門だったので、通信プロトコルの詳細設定などについて頑張って知識のハードルをクリアして問題解決できるようになったことも、個人的に成長できた部分です。

現在取り組んでいるテーマは、工場内のIoT(Internet of Things)である小型センサーとデータセンタ間の広域ネットワークの効率化(コスト減少や高速化)です。日立にはデータ転送量を制御する高速ファイル転送技術「HITACHI WAN Optimizer」がありますが、これを工場のセンサーデータ通信向けに応用するための研究です。これが実用化できれば、例えばそれまで日本で設計した大容量のデータをブラジルの工場に送るのに長時間を要し、実際に工場で作り始めるまでに1週間かかっていたものが、1日に短縮できるようになります。

イェンス・デーンホフ

エンジニアにとって技術の応用範囲が広いのはスペシャルなこと。

私が創っているのは例えば東京のように通信インフラが整備されている環境でも、地方の工場のように繋がっている回線が旧かったり細かったりする状況でも、同じように使える技術です。日本とブラジルの工場をIoTで繋げて一気にビジネススピードを上げる、あるいは工場だけにとどまらずに他の産業やインフラにも応用して街全体を繋いでイノベーションを起こしていく。それができるのは日立ならではだと思います。実用化すれば例えば空港に高機能のカメラを搭載した顔認証のシステムを導入して、双子を見分けるといったことも容易になるでしょう。

総合電機メーカーと称される日立は技術の裾野が広く、知見の蓄積も膨大で、それが他のメーカーにはない大きな魅力です。一人ひとりの技術者はそれぞれのテーマに日々取り組んでいて、一般のメーカーであればそのテーマに関する部分だけで完結しますが、日立の場合はそこにとどまらず各方面に展開できる可能性があります。一つの問題解決が、一見全然関係なさそうな領域にも応用できることがある。自分の技術の応用範囲が限りなく広いというのは、技術者にとって何より幸福なことです。

日立で「社会イノベーション」というコンセプトが生まれたときに、自分も大いに共感する部分がありました。会社はお金のためだけに活動しているわけではなく、さまざまな社会的問題を解決するための器でもあると思います。ドイツの友人にも自分は挑戦しがいのある課題に取り組んでいると言えますし、どれも簡単に解決できないからこそ価値があると思います。何より仕事そのものが面白いですし、仲間と議論を戦わせ、楽しく研究に取り組める環境があります。

日本語についてはまだまだ上達が必要だと考えています。ドイツ語なら文章を読みながら同時に問題解決方法を考えられますが、日本語だとまず翻訳して、それから考えないといけない。これからはもっと自然に日本語で考え、伝える能力を上げて、研究者としてより大きなプロジェクトをマネジメントしたり、研究所のファンド制度を活用するなどして自分のアイデアをプロジェクト化していくことにも挑戦していきたいと思います。

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