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企業情報研究開発

2017年12月15日

発表者からのレポート


写真1 発表会場

2017年11月29日から12月1日にかけて、ドイツのミュンヘンにてProMAC2017が開催されました。ProMACは、毎年開かれるプロジェクトマネジメントに関する国際学会で、プロジェクトマネージャやPMO (Project Management Office)、管理手法に関する研究者などが参加しています。本年のProMACは、プロジェクトマネジメント学会 (Society of Project Management)、GPM (German Project Management Association)、IPMA (International Project Management Association)の共催にて開催され、アジア・パシフィック地域だけではなくヨーロッパやアフリカからも参加がありました(写真1)。我々は、「Proposal of anti-pattern utilization method for loss-cost reduction.」と題して、ロスコスト削減のためのリスク管理手法について発表しました。発表では、プロジェクト失敗構造の分類によるアンチパターンの作成とその活用方法を提案しました。


図1 リスク連鎖モデルの概念
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図2 失敗パターンの必要性
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一般的に、プロジェクト管理手法の定着など、組織の成熟度が上がってプロジェクトの成功率は向上していますが、まだ不十分な状況です。業績に重大な影響を与える不採算プロジェクトの存在が報告されており、ロスコスト(本来発生すべきでない費用やムダな費用)の削減は経営における重要課題の一つといえます。

我々は、過去と同様の失敗を防ぐための仕組みとして、過去プロジェクトのロスコストの発生メカニズムのモデル化(リスク連鎖モデル)を用いたリスクマネジメント手法の確立に取り組んでいます(図1)。リスク連鎖モデルでは、プロジェクトの失敗構造が「原因」と「結果」の連鎖として表現されます。モデルを使うことで、プロジェクト状態(ノードの発生状況)から起こり得る失敗を推測可能になり、それぞれのノードに対して対策ナレッジを保持しておけばプロジェクト状態に適した対策を遂行可能となります。

失敗のシナリオは複数に分割が可能な場合があります。失敗予測に使うことを考えると、それぞれの被害を分けて提示する必要があります(図2)。そこで我々は、損失までの一つのまとまりを「PMアンチパターン」として表現することとしました。

まず、プロマネやPMOにヒアリングしPMアンチパターンの情報項目(6項目)を定義しました(図3)。最初の4項目は失敗を理解するための情報(パターンシート)であり、残りの2項目は参照すべき失敗を探索するための情報(パターン一覧表)です。パターンシートについては、リスク連鎖モデル内の失敗の固まりをアンチパターンとして切り出し、第三者に伝えるために知識化しました(図4)。パターン一覧表は適切な失敗パターンを探索するための7項目から成ります(図5)


図3 PMアンチパターンの情報構造
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図4 パターンシート
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次に、PMアンチパターンの活用方法を定義しました。活用には2つのフェーズがあります(図6)。初めのフェーズ(選択フェーズ)では、PMOが対象プロジェクトに提示するのに適しているPMアンチパターンを探索します。次のフェーズ(提示後フェーズ)では、対象プロジェクトのプロジェクトマネージャが提示されたアンチパターンを使ってリスク特定、対策策定、プロジェクト監視をします。これは提示されたアンチパターンそれぞれについて実行されます。


図5 パターン一覧表
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図6 PMアンチパターン活用の2フェーズ
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定義した情報構造について、プロジェクトの失敗構造モデル(リスク連鎖モデル)の有効性やPMアンチパターンの適用可能性を評価し、PMアンチパターンの有効性を示唆しました。

今後、PMアンチパターンを継続的に蓄積していくための作成プロセスの定義と、実プロジェクトへの適用を通じたPMアンチパターンの評価・改善を進めていきます。

(海老澤 竜    記)

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