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企業情報研究開発

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2017年1月31日

発表者からのレポート

2016年11月16日から19日にかけて、オーストラリアのゴールドコーストにてProMAC2016が開催されました。ProMACは、毎年開かれるプロジェクトマネジメントに関する国際学会で、主にアジア・パシフィック地域のプロジェクトマネージャやPMO (Project Management Office)、管理手法に関する研究者などが参加しています。筆者は、「A risk management method for reducing loss-cost」と題して、ロスコスト削減のためのリスク管理手法について発表しました。


図1 プロジェクトの失敗構造
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ロスコストとは「本来発生すべきでない費用やムダな費用」です。近年、失敗プロジェクトが企業経営に大きな影響を与えており、ロスコストの削減が重要課題となっています。ロスコストの削減のためには、プロジェクトにおけるリスクを早期に把握し適切な対策を行う必要があります。リスクの対策には、人員やコストスケジュールなどの制約の中で優先順位を付けて対策方法や対策時期を検討する必要があります。リスクの見落しやリスクの重要度の見極めなどを十分に行えずに、リスクへの対策が不十分になり結果的に損失を発生させることも少なくありません。

そこで、我々はリスク間の因果構造に着目したリスク管理手法を提案しました。プロジェクトの失敗は、損失に至るまでの構造をリスクの連鎖として表すことができます(図1)。このリスクの連鎖情報を我々は"リスク伝播モデル"と呼んでいます。プロジェクトの状態から、今後起こり得る損失までの経路を失敗シナリオとして抽出し、かつそのインパクトとともに提示することでリスクの見落しや優先順位付けの誤りを防ぐことができると考えています。我々はこのアプローチを"シナリオベースリスクマネジメント(SRM)"と呼んでいます。


図2 リスク伝播モデル
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図3 シナリオ管理手法の概念
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このシナリオベースリスクマネジメントを実現するためには4つの仕組みが必要です。1つ目は、リスクの連鎖情報であるリスク伝播モデルです(図2)。2つ目は、リスク伝播モデルのノードの発生有無を判定する仕組みです。3つ目はノードの発生状況を踏まえて、失敗シナリオを抽出する仕組みです。最後は、失敗シナリオを防ぐための対策案の提示です(図3)

失敗シナリオの抽出方法は、リスク伝播モデルで発生しているノードから到達可能な損失までの経路を抽出することで実現できます(図4、5)


図4 プロジェクト状況の把握
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図5 失敗シナリオの提示
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過去事例に基づきリスク伝播モデルを構築し、この手法を実プロジェクトに適用したところ、リスクの抽出および対策立案支援に役立つ見通しを得ることができました。

今後は、本研究成果の実用に向けて、検討を進めていく予定です。

(内田 吉宣    記)

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