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企業情報研究開発

2017年12月6日

発表者からのレポート

2017年11月6日から8日までの3日間、アメリカのベセスダにある国立衛生研究所 (National Institutes of Health, NIH) において、国際会議HI-POCT 2017 (IEEE-NIH Special Topic Conference on Healthcare Innovations and Point-of-Care Technologies) が開催されました。HI-POCTは、IEEE(米国電気電子学会)がNIHと協力して立上げたPoint of Care Testing(その場検査)のコンソーシアムが主催の学会です。基調講演が3件あり、67名の招待講演者はパネルセッションとブレイクアウトセッションの中で発表と議論を行う形式でした。テクニカルセッションでは、口頭発表が24件、ポスター発表が78件ありました。


写真1 発表風景


図1 発表スライド表紙
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今回、わたしたちは「Precise Dispensing Technology for Point-of-Care Diagnosis with Micro-Volume Blood」のタイトルで口頭発表を行い、血液一滴から複数の項目を検査するために必要な高精度分注技術の研究成果を報告しました(写真1、図1)。分注とは、液体を一定の容量ずつ分けることを指します。近年、高感度の検査試薬や測定技術の開発により、少量の血液であってもその中に含まれている成分の濃度を測定できるようになっています。検査項目が複数の場合には、少量の血液を精度よく分けるための分注技術が必要になりますが、血液のように粘度が多様に変化するサンプルでは、高精度の全量分注が難しいとされています。


図2 開発した分注技術
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本発表では、電気鋳造パイプを使った高精度分注技術を提案しました。従来用いられている樹脂製の分注パイプと比較して内径精度が高く、パイプ内のステンレス製プランジャーの移動によって、粘度の影響を受けずにサンプルをむだなく分注できる技術です(図2)。パイプ表面をはっ水処理することで、分注精度が上がることを実証しており、その最良値は、100ナノリットルの分注で0.7ナノリットルの変動範囲内でした(1ナノリットルは1リットルの10億分の1)(図3)。さらに、この分注技術を用いて動物の血液を分注し、試薬と反応させて、その中に含まれるグルコース(血糖)とコレステロールの濃度を測定したところ、結果の誤差は数%でした(図4)。これは、一滴の血液からでも複数の項目を精度よく検査できることを示唆する結果です。

患者さまの身体的、経済的な負担を減らす微量血液検査は、高齢化が進む先進国においてはますます求められてくるものと予想されます。今後は、本発表で提案した微量高精度分注技術を組み込んだ検査装置の開発を進めたいと考えています。


図3 表面処理後の改善
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図4 血液検査の結果
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(安藤 貴洋    記)

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